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『タンジェリン』ショーン・ベイカー監督インタビュー

『タンジェリン』ショーン・ベイカー監督インタビュー
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トランスジェンダーたちの友情を描いたキューティー映画『タンジェリン』が、2017年1月28日より渋谷シアター・イメージフォーラム他にて全国順次公開されます。監督のショーン・ベイカーにインタビューしました。


2015年の夏、歴史あるレズビアン・ゲイ映画祭「OUTFEST」の取材でロサンゼルスにいた時のことです。

「ニューヨークで上映されたばかりの全編iPhoneで撮った映画が、あなたの言う『キューティー映画』ですよ。ぜひ観るべき。」と色々な人に言われていました。その作品のタイトルは『タンジェリン』といい、iPhoneで撮影された映画であること、主人公はトランスジェンダーであること以外わかりませんでしたが、会う人みんなが口を揃えて薦めてくれるので気になっていた作品です。

cuemovie.com
2015.11.02
cue初の電子書籍となる、2015年夏にロサンゼルスで開催された、30年以上の歴史を持つLGBT映画祭"OUTFEST"で上映された映画やティーチインの様子を収めた「LGBT映画祭 in LA OUTFEST 2015レポート」を発売中です。"OUTFEST"とはアメリカ、ロサンゼルスで毎年7月に行われている、非営利支援団体OUTFES...

OUTFESTではいつも最終日にシークレット上映があります。
「もしかして、今年のシークレット上映作品が話題の『タンジェリン』じゃないか?」と思いスタッフに聞いてみたものの「なんだろうねえ〜最終日までお楽しみに。」とはぐらかされて教えてくれません。
結局、シークレット上映はジェームズ・フランコ主演の『I am Michael』でした。
cuemovie.com
2015.07.21
OUTFEST最終日に行われるシークレット上映で、キリスト教にのめり込んだ結果ノンケになった、実在する元ゲイ活動家のマイケル・グラッツェをジェームズ・フランコが、ザッカリー・クイント、エマ・ロバーツがそれぞれマイケルの恋人役を演じた『I Am Michael』を観ました。I Am Michaelマイケル(ジェームズ・フランコ)...

日本に戻ってきて、秋に開催された東京国際映画祭で上映された『タンジェリン』を観た時、なるほど確かにキューティー映画だと薦めてくれた人たちの言わんとしている意味がわかりましたし、『タンジェリン』はまっとうなキューティー映画でした。そして監督のショーン・ベイカーの描いている世界観や演出方法に強く興味を持ち、彼の過去の作品『チワワは見ていた』も観賞。そのスタイルは『タンジェリン』の前から確立したオリジナリティあふれるものでした。

そして今回、ショーン・ベイカー監督にインタビューすることになり、彼の演出スタイルについて色々聞いてみることにしました。

ショーン・ベイカー

1971年生まれ、アメリカ、ニュージャージー州サミット出身の監督、脚本家、プロデューサー。
ニューヨーク大学映画学科卒業後、間もなくしてアメリカ郊外で暮らす若者たちの心理を描いた監督デビュー作「Four Letter Words(原題)」(2000)で脚本と編集も担当。2004年には、中華料理屋の配達人として働く違法移民の中国人男性の1日を描いた「Take Out(原題)」を共同監督し、脚本と編集も共同で担当。監督第3作目「Prince of Broadway(原題)」(2008)では、息子の存在を初めて知ることになるニューヨークのストリートでブランドのコピー商品を販売する男を描いた。4作目は女優ドリー・ヘミングウェイのデビュー作となった『チワワは見ていた ポルノ女優と未亡人の秘密』(2012)を撮り、続く『タンジェリン』KENZOプロデュースによる短編映画「Snowbird」では』iPhoneで撮影した作品を発表。6歳の少女を中心に彼女を取り巻く大人たちを描いた次回作「The Florida Project(原題)」(2017年公開予定)は35mmフィルムで撮影し、ウィレム・デフォー、ケイレブ・ランドリー・ジョーンズらが出演している。

 

2015の夏に、OUTFESTの取材でロサンゼルスに行っていたのですが、その時に『タンジェリン』がすごく話題になっていました。

OUTFESTは僕らのリリースのスケジュールと開催期間がうまく合わなかったので出品できなかったんだ。でもすごくサポートしてくれていて、実は試写でスポンサーに入ってくれていたんですよ。

前作の『チワワは見ていた』と『タンジェリン』に関連性はありますか?

2作の共通点は1つしかなくて、アメリカの性産業を捉えている…んだけど、両方共、普遍的な友情を描いているので、よく考えたらもっと共通点があるかも(笑)
自分の全ての作品に共通しているテーマが「喪失」であったり「孤独」だったりするんです。同時に『タンジェリン』も僕の大好きなコメディとドラマの組み合わせで作られているんだ。僕はそういうスタイルの映画がすごく好きで、リアルライフにとても近いと感じるんです。もっとそういうタッチの作品が作られるべきだと思うんだけどね。

監督自身が東海岸出身なのに西海岸を舞台にしていますよね。それもあるのか、2作品とも観ていて思うのが、ロサンゼルスに滞在していて、普通の観光に飽きて、ちょっと街を適当にブラついてみたりスーパーで買物してみたりする時の感覚にすごく近いと思うのですが。

それは僕自身が街に新しくやって来たという状況があったからだと思うんですよ。もともと僕自身、『チワワは観ていた』の時にちょうどロサンゼルスに来たばかりで、街に恋したんですよ。それでそのまま住もうと。今はロサンゼルスを拠点にしています。

この2作品を撮っていたのは自分なりにこの街を模索する方法だったと思います。
ハリウッド映画で描かかれるロサンゼルスは、ロマンティックにキラキラ輝いた業界やその生活が描かれることが多くて、その近くに住んでいる人々、その陰で生きている人々の生活が描かれていることがなかなかありません。
僕は自分自身がそういうところに住んでいる時に、見たり感じたものを掘り下げたいと思うんですよね。掘り下げることによって自分自身が街を知ることにもなるので。

『タンジェリン』ではなぜ普通の娼婦ではなく、トランスジェンダーの娼婦を主役にしたのでしょう?

あのエリアで実際多い娼婦がトランスジェンダーだった、というのが答えになりますね。
僕自身がウェスト・ハリウッドに住んでいるんだけど、ハリウッドとウェスト・ハリウッドの間がちょうどハイランド、サンタモニカの交差点があって、そこは悪名高い治安の悪い地区なんだけど、それをみんな知ってるのに、よく考えたらそこを舞台にした映画がないな、と思ったんだ。それでその世界を描いていこうと考えました。

今はもう閉店しちゃったけど、映画にも登場する「ドーナツタイム」という30年近く続いていたドーナツ屋さんがあの地区の憩いの場だった。そこによくいたのがトランスジェンダーやゲイ、そして女装者の人たちだったんだ。

ただ、僕も共同脚本家のクリス・ベルゴッチも白人男性で、この地区では完全にアウトサイダーだった。だからこの地区のコミュニティに入っていくために、すでにここで活動していた主役2人との密なコラボレーションが必要でした。

ちなみに、ドーナツに関しては、撮影に入る前は「ドーナツは太るから食べるのはやめよう。」とみんなで約束していたんですよ。僕も普段は食べないし。けど撮影が始まって2週間後にはドーナツばかり食べてて…(笑)