Home 2015年OUTFEST LGBT映画祭 【OUTFEST 2015】60年代リトアニアを舞台に思春期の不安定な少女を描く『The Summer Of Sangaile』を観る

【OUTFEST 2015】60年代リトアニアを舞台に思春期の不安定な少女を描く『The Summer Of Sangaile』を観る

【OUTFEST 2015】60年代リトアニアを舞台に思春期の不安定な少女を描く『The Summer Of Sangaile』を観る
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the-summer-of-sangaile-review_0060年代、ヨーロッパの小国リトアニアの田舎町で暮らす少女の感性、同性愛をアート系で描いたフランス映画『The Summer Of Sangaile』を観ました。

The Summer Of Sangaile

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60年代リトアニアの田舎町。航空ショーを見に来た17歳のサンゲイルは、そこで同じ歳のオーステと出会う。感情をあまり表に出さないサンゲイルは曲芸飛行機のパイロットになりたいと思っていた。そして毎日、自傷行為にふけって夢を見ていた。サンゲイルに魅せられたオーステはファッション・デザイナーを目指していて、自分の作った衣装をサンゲイルに着せて写真を撮り始める。仲良くなった2人はある日1つになる…

原題:Sangaïlé
監督・脚本:アランテ・カヴァイテ
撮影:ドミニク・コラン
音楽:ジョン=ブノワ・ダンケル

Julija Steponaityte:サンゲイル
Aiste Dirziute:オーステ

本作はフランスとリトアニアの共同製作です。
監督・脚本のアランテ・カヴァイテは『ECHO/エコー』に続く長編2作目です。2015年サンダンス映画祭のワールド・ドラマ部門で監督賞を受賞しています。
彼女はリトアニア出身でフランスで映画を学んでいます。

キューティー映画とサンダンス映画祭は食い合せが悪く(笑)本作は評論家が大好きそうなネタがたっぷり詰まったアート系映画でした。アート系は体調を整えて観ないと体に堪えます。

ヒロインのサンゲイル役Julija Steponaityteがとても細く薄く美しいです。被写体として完璧でした。
時々笑ったりはしゃいだりするシーンもありますが多くが無表情です。それが似合いました。
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アート系によくありがちな、手持ちカメラのユラユラ&ざらついた映像で「少女の儚くも危うい感性を瑞々しく描く」というものだったら(ケッ!)即刻退場したのですが、睡魔に何度も襲われながらも最後まで観てしまったのは、画面がとにかく恐ろしく綺麗で、アート系にしては壮大というかどっしりとしていて大画面映えしていたからです。

特にオープニングから、曲芸飛行の様子をたっぷり観せてくれるのですが、それが大迫力で魅入ってしまいました。
台詞を出来るだけ排除し、感性に訴える映像が続きます。映像は基本FIXなのですが、時々ドローンを使ったと思われる空撮が差し込まれます。これが凄くリッチで迫力がありました。

アランテ・カヴァイテは『ECHO/エコー』に続いて本作のカメラマンにドミニク・コランを起用。『スパニッシュ・アパートメント』『みんなで一緒に暮らしたら』なども担当した職人的で芸術的な手腕が大いに発揮されています。
確実にこの映画を数段上に押し上げています。

映画はヒロインの大人への通過儀礼を描きます。一夏のちょっとした経験と想い出です。
最終的に夢を叶え社会と交わるようになった彼女は、それまでの感性だけで生き長らえていたような細く儚い存在から、ごくごく普通の力強い女性となります。この辺のドライな描き方、客観的な突き放し方は好感がもてました。

無表情で無口なヒロイン、自傷行為、初めて会った男性との刹那的なSEX、ファッションデザイナーの卵の同世代の少女との写真撮影ごっこ、そして同性愛…
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少女が大人になる手前の一瞬は、いつの時代もどこの国でも変わらないといえば、そうなのでしょうが、映画評論家が両手を上げて大歓迎する設定とシチュエーションがてんこ盛りです。そしてヒロインの設定とお話が進み2人のティーンが情熱的に絡み合えば絡み合うほど、美しい映像がどんどん退屈なものになっていったのはちょっと残念でした。

同様の映画…例えばビクトル・エリセの『ミツバチのささやき』は台詞が少なく長回し映像でも興味深く最後まで見れます。本作ではヒロインの思春期の不安定さの描き方が平凡だったのと、リトアニアの田舎という、興味深い舞台設定が物語に活かされていませんでした。

感性に訴えかける映画なので、ご覧になる人ごとに感想は変わるでしょう。だからこそ日本での公開を望みます。そして出来るだけ大きなスクリーンで観てもらいたい作品です。(今回の上映会場のDGAはさすが全米監督協会施設のメインスクリーンということもあり、非常に大きく映写もクリアーでした。)

OUTFEST 2015のレポートを電子書籍にまとめました。

cueで掲載していた記事を大幅に加筆修正し、各映画上映後に行われた監督、俳優が参加したティーチインを初の完全収録。写真も多数掲載しています。さらにiBooks版には予告編動画が収録しました。

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