『ウォーム・ボディーズ』ジョナサン・レヴィン監督インタビュー

近年アメリカでは大人気ドラマ「ウォーキング・デッド」、ブラッド・ピッド主演映画として過去最高の興行収益をあげた『ワールド・ウォーZ』など、ゾンビものがブームです。
ゾンビは色々なメタファーとして使うことができるので、様々なテーマを描く事ができます。サバイバルもの、パニックもの、終末思想、青春映画、老人問題…。ただし多くがホラー的要素が強くB級な作品も多いので、コアなファンを生む一方、その表現や見てくれから拒絶する人も多くいるマニアックなジャンルです。
一方でゾンビ映画は非常に懐が深いジャンルでもあります。「人間を食う」「噛まれた人もゾンビになる」「頭を潰さないと死なない」などお約束ごとがいくつもあるので、それを使ったり逆手にとったりして様々な遊びやパロディが行われ、多様性、可能性を広げています。
そして「キューティー映画」もまた、懐が深く、お約束があって遊びやパロディーによって裾野を広げられるジャンルです。実はゾンビ映画とキューティー映画は色々な面で似ていたりします。
そんな中、「ゾンビ映画+キューティー映画」とジャンル映画を合体させた『ウォーム・ボディーズ』という作品が出てきました。
これまでもB級ゾンビ映画で青春映画っぽいのはありましたが、メジャー映画として堂々と作られバレンタインデー付近に公開されデートムービーとして全米で1位を記録。
ゾンビ映画を普段そんなに熱心に見ない女性層が、キューティー映画の派生として、このゾンビ映画を支持したのです。
cuemovieは公開前から「ゾンビ+キューティー映画」である『ウォーム・ボディーズ』注目していました。
ありがたいことに試写に呼んでもらっていち早く観たのですが、予想以上に素晴らしいキューティー映画の構造を持ったゾンビ映画でした。いや、キューティー映画でもここまでちゃんと本質を理解して作られているものは最近無いかもしれません。そういう意味ではすごく正統な「キューティー映画」でした。
これを撮ったジョナサン・レヴィンという監督の過去の作品を追いかけてみると、どの映画もジャンル映画に「青春」テイストを組み込んでいます。
『マンディ・レイン 血まみれ金髪女子高生』はゴア映画の体裁を取りながら、一番描写に力が入っているのは、友達たちと一泊することで色々な期待を秘め高揚してるティーンエイジャーたちの生態です。
日本未公開の『The Wackness』は90年代のNYが舞台で売人の高校生という題材なので、当時の若者の生態をリアルに描いた映画かと思いきや、描かれているのは高校生の純愛と成長という、非常に甘酸っぱいものでした。劇中に使われるヒップホップ中心の選曲も素晴らしく、ぜひVODでいいので国内でも見られるようにしてほしい作品です。
その『The Wackness』を観たプロデューサー陣が監督として抜擢した『50/50 フィフティ・フィフティ』は、話の展開は突然癌を宣告される若い男性の難病ものなのですが、セス・ローゲン演じる友人が奥手のジョゼフ・ゴードン=レヴィットをパーティに借りだしたりする様は、まるでナードの主人公を描く青春学園映画のよう。裏テーマとして友情というテーマが見え隠れします。
ジョナサン・レヴィン監督作品では『青春』『ジャンル映画』というキーワードは重要なようです。そしてどの映画も、ゴア映画の『マンディ・レイン』でさえも、常に優しい視線を持っています。色々と聞きたいことがあるcue一押しのジョナサン・レヴィン監督にさっそくインタビューしてみました。

ジョナサン・レヴィン
1976年生まれ。ニューヨーク出身。ブラウン大学を卒業後ポール・シュレイダーのアシスタントを務める。 2006年『マンディ・レイン 血まみれ金髪女子高生』で長編監督デビュー。2008年、監督・脚本を手がけたNYに住むドラックディーラーの高校生の一夏の経験を描いた『The Wackness』でサンダンス映画祭観客賞を受賞。2011年には脚本のウィル・ライザー自身の癌体験に基づいたジョゼフ・ゴードン=レヴィット主演『50/50 フィフティ・フィフティ』を監督。2013年2月、監督・脚本を手がけた本作『ウォーム・ボディーズ』が公開。全米興行収入1位を記録。 青春映画を扱う若手として今後も期待されている監督である。
監督の過去の作品を全て見させてもらいました。どの作品も「ジャンル映画」に異なるテイストを組み込んでいますね。『マンディー・レイン』ではゴス映画で青春映画を、『50/50 フィフティ・フィフティ』では難病映画で青春友情映画を、そして『ウォーム・ボディーズ』ではゾンビ映画でキューティー映画を。そういうスタイルになるのはなぜですか?
「このジャンルを変えてやろう!」というのはないんだけど、ジャンル映画をそのままアプローチするというのも面白くないから、何か違うジャンルの映画のテイストを加えてみようと思いますね。
例えばゾンビ映画なら、素晴らしいゾンビ映画はこれまで数多くあるからこそ、何か別のジャンルと組み合わせた時、他に比べると個性的で面白いものが出来るんじゃないかな?とか。
『ウォーム・ボディーズ』ではキューティー映画を加えることで、ゾンビ映画という定番ジャンルに何か新しいものが生まれるんじゃないかと考えました。 これからも、みんなが親近感を持っている定番なジャンル映画に、何か別のことを足すことでユニークなものを作りたいと思っていますね。
監督の作品はどの映画もすごく青春の匂いがしますね。監督ご自身、どういう青春時代を過ごしたのですか?
(ちょっと恥ずかしそうに)かなりオタッキーだったんですよ。女の子に出会う機会もなく、マンガやホラー映画にはまってました。けど成長していいくうちに女の子との出会いがあったり、色々と新しい経験をしたりして、徐々に大人になっていきました。
そういう自分自身も経験した、「大人への階段」というか、「成長」というのものにとても興味があるんです。だから僕の作品を見て、そう感じられるのはわかりますね。
例えば『50/50 フィフティ・フィフティ』。あれはある意味「大人になる過程」の映画だと思っています。そしてこの『ウォーム・ボディーズ』にも間違いなく、そういう要素はあると思います。
ゾンビ映画というジャンルにはコアなゾンビファンが多くいます。そういうファンの反応は気になりましたか?
確かにゾンビファンの反応は気になりました。
多くのゾンビファンは、この作品に対して懐疑的なんだろうなと。なんせゾンビが恋愛対象の映画だし、コアなファンからしたら「ありえないだろう!」と言われかねない内容ですからね(笑)
けど、自分もたくさんゾンビ映画を見ているし、大好きなジャンルだから、その愛情は多分映画に反映されるだろうと思いながら作りました。 そして映画を観てくれたコアなゾンビ映画ファンたちに「この監督はゾンビ映画の事をよく知ってて、ちゃんとリスペクトしてるんだな」と感じてもらえるとうれしいですね。
ゾンビ映画やヴァンパイヤ映画みたいな定番ジャンルの映画って、まだまだいくらでも進化できると思っているんです。そして進化するためには今回の作品のような遊びも必要で、ちゃんとそのジャンルをリスペクトしていると感じられるものになっていれば、コアなファンもその遊びを進化として認めてくれるんじゃないかと思っています。
この映画のラストは、SFやゾンビ映画などによくあるパターン…「ワクチンで全滅させた」とか「やっつける方法を見出した」とか、理屈で物語を終結する方法を取らず、愛の力という感情的なもので物語をまとめていきます。 理屈を優先せず、感情や感性を優先したのはどういう意図だったのでしょうか?
原作を読んだ時一番心に響いたのが、メタファーとして使われているロミオとジュリエットのような愛の力による物語の展開だったんです。 人が相手を認める気持ちや、人間が人間たらしめるものは何なのか?という問いかけが実によく表現されていて素晴らしいと思いました。 それこそがこの原作の映像化をやりたいと思う、僕の一番の動機だったんです。



