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映画製作をしたエルシーラブコスメティック 川井愛実さん

映画製作をしたエルシーラブコスメティック 川井愛実さん
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はじめに〜、日本でキューティー映画を作るとしたら?作りたい人必見!

邦画でもキューティー映画は盛んに作られています。
大手映画会社による女性向け映画も多く作られていますが、「泣かせ」「感動」「文芸」という感じで、なかなかズバリ!キューティー映画!!と呼べるところまでいきません。しかし都内単館のみなど小規模公開のインディーズ系作品では、キューティー映画っぽい題材のものが近年増えているように感じられます。

そんな中、映画とは全く関係のない会社が作った、コメディ映画に興味を持ちました。

ラブ・グッズと称して女性向けのバイブレーターやコスメグッズを扱っている、女性社員中心の会社が、自社商品の宣伝も兼ねて「ひょんなことからラブ・グッズメーカーに就職してしまった女の子の奮戦記」という題材で映画を作ったのです。
『ラブクラフト・ガール』といいます。
公式サイト:https://www.lovecraftgirl.com/
内容的にはとてもキューティー映画的です。さらに興味をひかれたのは、この会社が原作、製作、web広報と、webで出来る限りのことを自社でやっているということでした。ニコニコ動画やYouTubeなどさまざまなネット配信ツールを利用しているところも、純粋な映画会社の宣伝とは一味違って面白いです。

日本のインディーズ系キューティー映画の今後を探る上でも、映画会社以外のところが、なぜ、どういう経緯で、どういう気持で、女性向けに映画を作ろうとしたのか?初めての映画製作の苦労話を含めて色々面白そうです。
この映画の宣伝担当者さんが重度のキューティー映画ファンで、cueを普段見ていてくれたこともあり、インタビューとあいなりました。

企画者も、もしかして重度なキューティー映画ファンなんだろうか?いや、もしかしたら男性社員があえてキューティー映画を企画したのかも?など色々想像をふくらませていましたが、残念ながら(笑)実際お会いした企画者の川井さんはごくごく普通の女性社員さんでした。

結果的にインタビューで聞いた映画製作の話が、キューティー映画のような展開になっていて面白かったです。
これを読んでいる人で「いつか自分もキューティー映画を作りたい!」と思っている人は、ぜひ参考にしてみてはいかがでしょうか?

川井 愛実

1980年生まれ、2005年よりエルシーラブコスメティック入社(創立8ヶ月後)。企画・開発を担当しているベテランスタッフ。
趣味は料理、僻地の温泉巡り。

『ラブクラフト・ガール』はどうして企画されたのか?

川井さんは普段どういうお仕事をしているのですか?

エルシーラブコスメティックで扱っている商品全般の企画/開発です。

今回『ラブクラフト・ガール』はどういう経緯で企画されたんですか?

『ラブクラフト・ガール』は元々サイトで公開していたデジタルコミックが原作なんです。それを会社設立10周年記念で映画化しようということになりました。

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外部リンク

『ラブクラフト・ガール』原作コミック。無料で読めます。

映画にする時、2つ目的があったんです。1つはラブ・グッズに陽の目を見させたいと思ったんです。すごく前向きで健康的なものなんだよという啓蒙活動的な意味がありました。もう1つは私たちのような会社が映画を作ったという事実を歴史に残したかったんです(笑)
設立当初、結構虐げられてきたんですよ。映画の中でも描いてますけど他社に行くと「あんたのところはアダルトだから云々」とか言われたり。でもこんな会社でも10年間がんばれば映画が作れたということをみなさんに知ってもらいたいなと思って。

DVD通販とかネット配信という方法もありますよね?特にエルシーラブコスメティックさんはネットメインですし。それがなぜ「映画」だったのでしょう?

1つの会社で映画を作ることって大変だっていうのは話で聞いていたんですよ。
でも大変だからこそ、やってみたいというのがあって。
私たちが日々仕事している中から生まれたリアルなエピソードが映画になるんだろうか?でももしやったら面白いんじゃないんだろうか?と思ったんですね。

川井さん自身は映画がお好きなんですか?

大好きなんですよ。学生時代、自主映画とか作ってたんです。
元々は邦画のアイドル映画が大好きだったんですけど、徐々に色んな映画を見るようになりましたね。ジョン・ウォーターズの作品とか。
私がこの会社に入った時、自身で将来の目標を考えたんです。いつまでに何をすればゴールなんだろう?と。
商業映画を作ろうと。それがひとまずはゴールだと考えてました。
この会社と映画を作るということは、何の接点もないと思ってたんですが、いつかやりたいと思って、飲み会の時とか事あるごとにアピールしてたんです。
けど、やっぱりというか当然というか、いつもはね退けられてたんですね。
でも10周年の企画でこの内容だったら、というので、やっと映画が作れることになったんです。

川井さん、キューティー映画を無理矢理教え込まれる(笑)

なるほど。川井さんが映画を作りたかったというのが大きな動機だったんですね。ところでキューティー映画はお好きですか?

『エターナル・サンシャイン』とか『ヴァージン・スーサイズ』『リトル・ミス・サンシャイン』みたいな単館系映画が好きなんですけど、キューティー映画なら「ブリジット・ジョーンズの日記」が特に好きです。
大して可愛くない子ががんばるお話が好きなんです。スッカラカンで何もなくなった子が、いかにがんばっていくかというところが。
この辺は『ラブクラフト・ガール』にも通じる話だと思っているんですけど。

海外のキューティー映画ではセクシャルな内容をコメディにするのは定番なんですが、ご存知でしたか?例えば『ステイ・フレンズ』『エステラ・ウォーレンの知られたくない私のヒ・ミ・ツ ヴァージン・ラプソディー』(この後、同席していた重度のキューティー映画ファンの映画宣伝担当者さんと一緒に多くのキューティー映画の作品名をツラツラとあげていく)
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いえ、全然知りませんでした!そうなんですか!まだまだ勉強不足で…さっそく見てみます(笑)

では、企画者の川井さんは海外のキューティー映画の定番と知らずに、自然と『ラブクラフト・ガール』はセクシャルなコメディテイスト作品になったということなんですね。

ええ、偶然ですが、そういうことですね。

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色々知らないことだらけからスタートした映画企画

ではそんな川井さんの、キューティー映画のヒロインみたいな、映画製作奮戦記を聞いていきたいと思います(笑)
映画を作ることになって、最初にまず何をしました?
映画を実際に作る制作会社さん向けの企画書作りでした。キャッチコピーの案やプロットは元々作っていたのですが、実際の映画の企画書なんて見たこともなかったので、映画製作のことを知っている知り合いの会社の人に聞いたりしながら作っていきました。
普通だと、映画の資金を出してくれるスポンサー向けに企画書を書くのですが、エルシーラブコスメティックさん自体がスポンサーだからそのへんは違ったのですね。
では社内でどうやって映画製作の予算を確保したんですか?
社長に拝み倒して出してもらうとかではなく、普通に広告費からですね。
年間に使える広告費の総額が決まっているので、その中からこの映画の製作費用を作りつつ調整して…という感じです。

じゃあ、普通の映画製作だと最初の難関となる資金集めに関しては、会社での通常予算をうまく活用されたんですね。

そうなります。ただ映画を作って見てもらうのに、実際お金がどこにどれくらい掛かるかというのがわからないですから、実際始まってからがほんと大変でした。
私たちは「これだけのお金(予算)で映画を作ってください」と言っているのに、色々他の費用がかかってくるんですね。
配給というのは何?P&A費 ((P&A費:Print&Advertisingの略。上映に使用するプリント(マスターフィルムからのコピー)の作成料金と、広告出稿に必要な資金のこと。
現在、2通りの方法があり、
1)配給会社が事前にP&Aを立て替えておき、映画興行が終了し精算する段階で、配給収入からP&A費をトップオフする。
2)映画を製作したところがP&Aを全額負担し、事前に配給会社に支払う。配給会社はその費用内で営業と宣伝を行う。))って何?どうしてそんなにお金がかかるんだろう?って感じで、一々意味が全くわからないので、そこを何時間も納得行くまで説明してもらって。
あと、提示された金額が適正かどうか、他のところにも聞いて表にして比較してみたりして。
大手の会社に制作の依頼をしようと思って相談に行ったら即座に断られたときもありました。「この予算だと、うちみたいな会社でやる規模のものじゃないですよ」とハッキリ言われたりして。

で、そうやっていくうちに、どれくらいの予算規模でどれくらいの作品になって、というのかがやっと分かるようになってきて。

プリ・プロダクション、そして撮影へ!

確かに実際動いていかないとわからない費用って多いですよね。準備段階(プリ・プロダクション)の脚本作りとかどうでしたか?

脚本の鹿目けいこさん ((脚本家。デビュー作「本日の猫事情」のほか、「同級生」「たいむすりっぷメガネ」などの脚本を担当。小説の著作では「乙女プロレス」「ホワイトウエディング」など。))に決まってから何回か話し合いをして、脚本が出来てから何度か書き直してもらったりしました。
初稿の段階だと、弊社が扱ってる商品への私たちの思い入れとかがなかなか上手く伝わらないですから、その辺を上がってきた脚本でチェックさせてもらいました。

やはりそういった脚本のチェック項目は宣伝的な意味も自社商品についてだったのですか?

鹿目さんが最初に作ってくれた脚本は、当社が化粧品メーカーということで、イメージ的に気を遣ってもらったみたいで、全体に綺麗な感じのサクセスストーリーだったんですね。
でも、もっとヒロインがどん底に落ちたり仕事の描写も泥臭くしてもらってもいいということで、そういうエピソードを作ってもらったりしました。
商品や弊社のイメージも大事ですが、それ以前にまずこの映画はヒロインの成長物語だというところが軸にあったので。

打ち合わせの時に、イメージ的に目標にしたい映画の話題とか出ましたか?

監督や脚本家さんとの打ち合わせの時、『プラダを着た悪魔』の話題はメチャクチャ出ました。あの映画は凄くオシャレな映画でしたが、そこは真似できなくても「ヒロインが失敗したり落ち込んだりして、そこから自分自身の力で這い上がって何かをなす」というテイストはとても目指したい部分だったので。

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出演者の選考にも関わったのですか?

男優さんの選定に関しては、いくらか「イメージ的にこう」「見た目はこう」とわがままを言わせてもらいました。
というのが、漫画の『ラブクラフト・ガール』の中でヒロインの相手の男性キャラが読者の間で凄く人気キャラだったんです。なので、そのイメージに近づけたいというのがありました。

制作中に大変だったことってありましたか?

撮影のときが大変でした。会社のシーンとかを当社を使って撮影したんですけど、毎朝5時半とかに始まって24時までとか。
で、やっぱりずっとそれだと日に日に現場が疲弊していくのが分かるんですね…それはこちらとしてもどうしようもないですから、心のなかで応援するしかなくって…

でも平林監督がすごく周囲への気遣いがある方なので、撮影自体は凄く楽しかったです。

イベント上映のつもりが、ひょんなことから劇場公開に!

制作の次は映画を見てもらうための公開ですね。映画業界内じゃなければ、普通は配給とか興行とかまで考えが及びませんよね?その辺はどういう経緯で公開に至るのですか?

最初にも話したように元々「当社のような会社が映画を作ったということを歴史に残す」という目的でやっていたので、映画館を3日間くらい貸し切って上映できればいいかな〜くらいに考えてたんですよ。

で、今の配給をやってもらっているキュリオスコープさんと繋がりが出来て、そのことを相談してみたら、予算もそんなにかからずに出来るんじゃないかと言われて、「じゃあイベント上映でいいので」とすぐお願いしたんです。
そしたら「作品を見たら意外と面白いので本興行にしましょう。」と先方からおっしゃってもらって、そこでアレヨアレヨという感じで公開が決まったんです。

渋谷のヒューマントラストさんで上映することになったのも、若い女性が多くて普段キューティー映画もたくさんかかっているので「あそこなんかいいですよねー」と話したら、「じゃあ聞いてきます。」「OKもらいました。」て感じで(笑)

じゃあ、本当は映画を一般公開する気はなかったということなんですか?

そうなんですよ!だから私たちからしてみたら、驚くばかりで(笑)
でもこうなったのも、作品が認められたということですから、それが本当にうれしくて。
その頃、弊社も社内で試写会やったら、一気に火が付いたみたいに盛り上がり始めて、私たちもノリノリになって、「じゃあうちもPRがんばります!」と盛り上がっていった感じですね。