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【2015LA滞在記3】サンダンス映画祭で話題となった『Me and Earl and the Dying Girl』を観るの巻

【2015LA滞在記3】サンダンス映画祭で話題となった『Me and Earl and the Dying Girl』を観るの巻
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me-and-earl-and-the-dying-girl_002015年サンダンス映画祭で審査員大賞と観客賞をダブル受賞し話題となっていたYA小説原作の映画化『Me and Earl and the Dying Girl』がシネコンで上映していたので観ました。


観に行った映画館はショッピングモールに併設されている米大手シネコンAMCによるもの。IMAXもある大きい映画館でした。
平日深夜23時スタートという回で観たのですが、まず当然ながら映画館に人がまばら。さらにマニアックで上映からかなり経っている(もうすぐ終わる)『Me and Earl and the Dying Girl』ということもあり、該当スクリーンの客は自分だけ。

これは人生初「映画館独り締め」状態になるのか?これまでどんな映画でも2人になってしまったのに、まさかLAでボッチ体験出来るとは!と興奮して館内の写真を撮ったりしてました。椅子の肘置きが上がる形式だったので、何なら寝ながら観ようかと思ったくらいです。
me-and-earl-and-the-dying-girl_011人だから映画が始まる前にこんな写真を撮ってたり
しかし、上映時間になるとぞろぞろと客が入ってきて、結果的には1/3は埋まりました。チッ。

映画が始まる前の予告編が全てキューティー映画!

映画がスタートする前に予告編が流れたのですが、それが全て当サイトで紹介しているキューティー映画ばかりで感激しました。
『Paper Towns』
『きっと、星のせいじゃない。』原作者のYA小説映画化第2弾『Paper Towns』予告編公開
『Ricki and the Flash』
メリル・ストリープがロックギターリストを演じる『Ricki And The Flash』予告編
『The Intern』
アン・ハサウェイ、ロバート・デ・ニーロ共演!ナンシー・マイヤーズ新作『The Intern』予告編
『Jem and the Holograms』
『Jem And The Holograms』ポスター&予告編

もう予告編を観ただけでお腹いっぱいになってしまいました(笑)

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サンダンス映画祭で絶賛された青春映画『Me and Earl and the Dying Girl』

『Me and Earl and the Dying Girl』は、友人と古典映画のパロディ映像を作って遊んでいるさえないオタク少年が、白血病患者のクラスメイトの女の子と知り合い、彼女のために自主映画を作ろうと考えるものの彼女の症状は悪化。少年は彼女との交流を通じて人間的に成長していくというお話です。

出演は主人公グレッグに『そんなガキなら捨てちゃえば?』トーマス・マン、ヒロインの癌患者の女の子レイチェルにオリヴィア・クック、親友アールに新人RJ・サイラーという3人がメイン。美少女マディソン役でキャサリン・C・ヒューズ。さらにグレッグの両親役にニック・オファーマン、モリー・シャノンらベテラン陣が脇を固めます。

監督は「glee/グリー」で各話演出をしていたアルフォンソ・ゴメス=レホ。長編初監督です。原作は2012年に出版された同名YA小説で、原作者のジェシー・アンドリューズが本作の脚本も手がけています。

今年のサンダンス映画祭で上映され、審査員賞と観客賞のダブル受賞。配給は各社争奪戦の末、サンダンス映画祭史上最高額で去年『きっと、星のせいじゃない。』を大ヒットさせたフォックス・サーチライトが獲得した鳴り物入り映画です。

サンダンス映画祭とキューティー映画は相性が悪い

基本的に評論家からバカにされているキューティー映画は良い所を探して書くようにしているのですが、映画マニアが集まるサンダンスで高評価の映画ですから、ここで多少毒を吐いてもいいでしょう。評論家先生たちが絶賛されると思いますので(笑)

ニヒリストでシニカルで仲間と群れず趣味の合う親友とだけつるむのに、なぜか美少女にモテるご都合キャラが主人公。ヒッピーで友達のような両親。映画オタクが好きそうな、地味で細くてハイセンスでシニカルな笑い好きの病的な美少女。と、その手の映画としてはアイテムも充実。

そして映画通が泣いて喜ぶ、「主人公とその親友が作っていたクラシック映画のパロディー映像」が『僕らのミライへ逆回転』に出てきた偽スウェーデン版のようなチープな映像で劇中に加わります。
パロディーで出てくるのは『市民ケーン』『羅生門』『めまい』『時計じかけのオレンジ』『勝手にしやがれ』『ブルーベルベット』…全てが映画マニア向けに狙いすぎていると思いますが、これらの要素がサンダンスで絶賛された理由であることもわかります。

この手の映画では普通のミーハーなティーンの感覚は悪なのです。人と違ってちょっとマニアックなセンスが正義でカッチョイイのです。

映画は2部構成のような展開になっています。
まずは親から癌になった女の子レイチェルと友達になるように言われたグレッグが、親友のアールと共にレイチェルと心を通わせていく様が描かれます。ここでグレッグとアールが撮ってきた名作映画のパロディ映像が使われます。それを面白がるレイチェル。普通のティーンの女の子には分からない、ちょっと変わったセンスを共有してくれる女の子をグレッグは見つけたわけです。

そして、グレッグとアールがレイチェルに内緒にしていたことを、アールのちくりでレイチェルに知られてしまい、その結果レイチェルはグレッグを拒絶、グレッグとアールはケンカ、3人はバラバラになってしまいます。さらにレイチェルの病状が悪化し家に篭りがちになり、グレッグは己の無力さを自覚し感情的になり、人間的に成長していきます。

この監督、演出手腕は相当あります。各シーンの演出はアイディアも豊富で個性的。感動シーンの演出もそこに至るまでの見せ方は上手いと思いました。映像的には見どころ満載です。

でも構成が全体に凡庸に思えました。各シーンが計算され尽くしている分、非常に閉じている印象があります。
多少矛盾があっても、理屈がおかしくても、感情に直に訴えかけるような力強いシーンがあれば構成にメリハリもついたと思います。
しかしこの映画はそういうのを「失敗」と捉えて、そこを真面目に理屈で抑えこんでいました。
原作を読んでいないので演出の失敗か脚本の失敗か、そこが何とも言えませんが、感動シーンの仕掛けも色々と狙いすぎていて、逆に白けてしまいました。

元々メインキャラクターの設定がみんなメインストリームから外れた皮肉屋さんたちです。無表情・無感情のような芝居が占める率が大きいので、映画全体が無味乾燥としたタッチになります。
それを彩る形で、親や先生などが個性的なキャラクターとして描かれています。しかし個性的なキャラクターをただキテレツに描いているだけで、そのキャラクターの一般性や掘り下げが出来ていません。だから個性的なキャラクターがどれも薄っぺらく見えました。映画のスタイルにこだわりすぎた結果、大事な人間ドラマが希薄でした。

出演者では、グレッグのことが好きな美少女、マディソンを演じたキャサリン・C・ヒューズに目が行きました。今回は美少女でごく普通のティーンの感覚だからこそ排除されてしまう役でしたが、一度彼女がヒロインもしくはヒロインと対等のビッチな悪役のキューティー映画が観たいです。
彼女は写真より動いて魅力が出るタイプ。ヘイリー・スタインフェルドと近い感じです。
me-and-earl-and-the-dying-girl_02オリヴィア・クック、キャサリン・C・ヒューズ、トマス・マンの撮影風景
me-and-earl-and-the-dying-girl_03

この映画の予告編が公開された際、それを記事にしています。実は予告編を観た時、あまりピンと来ませんでした。「そんなに騒がれる作品かな?」と。

サンダンス映画祭で審査員大賞&観客賞を受賞した話題の青春映画『Me and Earl and the Dying Girl』予告編

この記事の中で「オタク少年が手作り感のあるパロディ映画を作る、そんな男の子が女の子のために自主映画を作ろうとする」という、いかにも映画マニアに受けそうな内容が『きっと、星のせいじゃない。』同様ティーン層に支持されるかは疑問です。とやんわり否定的なことを書いています。
今回本編を観て、この直感が正しかったと思いました。やはりサンダンス映画祭で高評価な映画はキューティー映画者には食い合せが悪いです。さらにこの記事の予想は現実の数字として現れています。

6月12日の公開以来、現時点で興業収益は630万ドル(制作費は800万ドル)。残念ながら映画は大コケとなってしまいました。この時期、ティーンも一般層も夏休み向けの大型作品を観るので、インディペンデント系映画はなかなか大変なのですが、それでもサンダンス映画祭での高評価が全く動員に繋がらなかったところが、”映画マニア”と一般の”映画ファン”の隔たりの大きさを感じます。

「いい映画だけど、そんなに言うほどではない」というのがこの映画を観た率直な感想です。サンダンス映画祭の高評価を知らないで観たら「地味な内容なのに、色々考えて撮ってて面白い」と思ったかもしれません。けどそれでも「映画マニア受けを狙いすぎ」の印象は持ったと思います(笑)