1. Home
  2. 2015年7月LA滞在記
  3. 【2015LA滞在記2】『ピッチ・パーフェクト2』を180円で観るの巻

【2015LA滞在記2】『ピッチ・パーフェクト2』を180円で観るの巻

【2015LA滞在記2】『ピッチ・パーフェクト2』を180円で観るの巻
0

pitch-perfect-2_00LAに到着し、早速レンタカーを借りました。レンタカーを借りたのは『ピッチ・パーフェクト2』を観に行くためです。全米5月に公開された本作は、7月初旬の段階でLAの主要な映画館ではすでにかかっておらず、LA郊外の映画館でしか上映されていませんでした。そこに行くための車が必要だったのです。


今回向かったのはLAの観光地ハリウッド通りから北に上がったところにある「Regency Valley Plaza 6」という映画館です。

ハイウェイに乗り30分ほど走って到着した場所は、周辺のお店が軒並み閉店または休業開店状態。平日夕方5時という時間のせいもあり、人も少なくちょっと寂しい感じでした。
pitch-perfect-2_01
映画館は見た目は昔ながらですが、シネコン形式で8作品上映しています。10数人程が列を作っていました。

さっそくチケット購入です。
窓口で「アー、ペッチ・ポーフェクト・トウゥー」と、意味もなく頭に「アー」を付けてみたり、カタカナを無理矢理巻き舌にして言ってみたりして、必死に英語が話せるふりをしながらクレジットカードを渡します。
チケットを受け取りました。
$1.50と書かれています。
pitch-perfect-2_02

15.00ドルで小数点の打ち間違い?いや、それなら1.500と表示されるはず。
1.5ドル!約180円!180円で『ピッチ・パーフェクト2』?

思わず「ここにいる人たちみんなに、私から『ピッチ・パーフェクト2』をプレゼントしようじゃないか!(声:江守徹)」と日本語で叫びそうになりました。

しかし1.5ドルの入場料だと、もしかしてスクリーンはホームシアターに毛の生えた50インチくらいで、汚いソファーがあるだけの部屋じゃないか?と疑ったりもしたのですが、ちゃんと400人ほどが収容できる中規模スクリーンでした。

後で調べてみると、火曜日と日曜日は全席1.5ドルのサービスデー。観に行った7月7日が運良く火曜日サービス・デーだったわけです。

オリジナリティに言及する『ピッチ・パーフェクト2』

さて、前置きが長くなりましたが『ピッチ・パーフェクト2』です。

前作から数年後。ベッカを中心に全米優勝したベラーズは宿舎を構え、みんなから一目置かれる存在です。
オバマ大統領夫妻が出席している集いでパフォーマンスを披露します。マイリー・サイラスのヒット曲「Wreckng Ball」のPVを真似て ((PVで裸になって吊るされた玉に乗りながら歌うパフォーマンスが話題となり、あらゆるところでパロディーにされました。最近ではアン・ハサウェイが口パク番組でパロディを演じていました。))、上からレベル・ウィルソン演じるファット・エイミーが吊るされて降りてきますが、途中でアクシデント発生!逆さ宙釣り状態となり、股間部分が破けて全国生放送でアソコを晒すという大失態を演じてしまいます。
(この後、謝罪のため、さらに脱ごうとするファット・エイミーが笑わせてくれます。)

ベラーズは優勝資格が剥奪され世間から非難を浴びますが、ヨーロッパで行われる全世界大会で優勝すれば、失態が帳消しになるとのことで、これまでアメリカチームが優勝したことのない世界大会の優勝を目指す、というのが主な筋です。

これに、ベラーズの新入部員、ヘイリー・スタンフェルド演じるエミリーのエピソードが絡んできます。エミリーは母親も元ベラーズで、彼女にとってベラーズは昔からの憧れ。
そんなベラーズで自分の作ったオリジナルソングを歌うのが夢ですが、カヴァーソング中心のアカペラ部ではオリジナルソングは必要とされません。

アナ・ケンドリック演じるヒロインのベッカは憧れのレコード業界に就職するため、レコーディング・スタジオでインターンとして働いています。
ある日、スヌープ・ドックのクリスマスソング収録中に即興でミックスをして注目されますが、しょせんはカヴァーばかりを歌っているアカペラ部所属ということで認められません。ベッカはアカペラを続けることに疑問を感じます。

今回のテーマは「オリジナリティ」です。それを具体化しているのがメイン曲である「Flashlight」です。
シーア、サム・スミス、前作監督のジェイソン・ムーアらによって作られたオリジナルソングは、劇中ではエミリーが作った歌という設定で、事あるごとにエミリーに歌われては周囲から否定され続けます。

そして「オリジナリティ」はベラーズのメンバーの心情にも関わります。大学を卒業した後の将来、一人一人がオリジナリティを持って社会に出ていこうとすることに関して、みんな何かしらの不安を抱えています。

そんな彼女らの心情を歌にし、みんなで焚き火を囲みながら歌うのが、前作でパフォーマンスが話題となった「カップス」です。

【ピッチ・パーフェクト公開記念】話題の「カップス」はカヴァーのカヴァー

「カップス」は元々カヴァー曲なのですが ((オリジナルは1928年に発表された、アメリカ南部出身のカントリーバンド、カーター・ファミリーが歌った「Will You Miss Me When I’m Gone?」。詳細は「カップス」解説のリンク先を参照。))、今回はカップを使ったパフォーマンスではなく、「別れたら寂しくなる、また会いたくなる」という内容の歌詞が重要な意味を持ちます。ここでもまた、歌の「オリジナリティ」が活かされた形です。

本編のあちこちに散りばめられた「オリジナリティ」というテーマはラストのパフォーマンスで結実します。

1

キューティー映画の続編に上手いものなし

キューティー映画の基本は、ヒロインのサクセス・ストーリーです。映画のラストでヒロインは何かしらの成功と観客の共感を得ます。
しかし続編はその後を描くものがほとんどですから、ヒロインが成功したところから描かなくてはなりません。
たいていはまたヒロインの立場が落ちて、そこから立ち直るお話になりますが、何もないところから這い上がるのと、得ていたものを取り戻すのでは同じ展開のようでもその意味は全く異なります。

さらに成功した作品の続編ということで予算が増え、音楽や衣装やロケが豪華になるのはいいのですが、お話も前作以上に壮大にしようとして、結果的に散漫な作りになってしまう作品も多いのです。

『ピッチ・パーフェクト』の魅力はアカペラで歌われる曲です。前作では80’s〜最新ヒット曲まで非常にバランスよく使われていて、それがサントラの長期ヒットの要因になっていました。
前作のヒットを受け潤沢になった予算は、当然アカペラで歌われる曲の使用料に充てています。
制作者のインタビューによると60曲以上のライセンスを取得してそこから40曲を使用し、サントラとしては18曲にまとめています。今回、現在人気歌手の曲が多く採用されていて豪華ですが選曲がかなりマニアックな印象です。各曲に関しては以下のページで解説しています。

完全版!『ピッチ・パーフェクト2』サントラ楽曲元ネタ一覧

今回、アカペラとドラマの関わりが薄く、見せ場として割り切った感があります。特に前作でも好評だったRiff-Offシーンはかなりの唐突感があります。パフォーマンスは見どころ満載で全く飽きません。Riff-Offシーンも曲がスピーディに入れ替わっていき実に楽しい見せ場となっています。

しかしアカペラシーン、各キャラクターのドラマシーン、そして描かれているテーマ、それぞれはいいのですが、通して見た時にそれが融合していないと感じました。
このあたりは初監督となるエリザベス・バンクスの力量もあるのでしょうが、やはり「キューティー映画の続編に上手いものなし」の呪縛なのか…と思いながら見ていて、いよいよラストのアカペラ世界大会でのベラーズのパフォーマンスのシーンとなりました。この時点で個人的な作品評価は、正直言って100点満点で50点ほどでした。

しかしラストで号泣!大傑作キューティー映画に!

映画の舞台はラストのアカペラ世界大会に移ります。

以下、大事なネタバレは避ける形で書きますが、ラスト自体を初見で楽しみたい方は、ここで読むことを一旦終了されることをオススメします。

ベッカのカヴァーばかりのアカペラに対する疑問、エミリーの自作オリジナル曲への固執は、カヴァーを歌うことが当たり前のアカペラ大会でベラーズがオリジナル曲を披露するという、掟破りの行動に繋がります。そのパフォーマンスは審査員や観客を驚かせます。

そしてここで近年稀に見る、あらゆる不満点を一気に吹っ飛ばす見事な素晴らしい映画的な展開をこの『ピッチ・パーフェクト2』は披露してくれるのです。

手拍子から静かに始まったベラーズのパフォーマンスはこれまでの集大成のように次々と新旧様々な曲をカヴァーして進んでいきます。そして一旦照明が暗くなり、静かに始まったエミリーの作ったオリジナル曲「フラッシュライト」の展開がバーンと弾けた瞬間、舞台照明が一斉に眩しく点灯し、現れた1カット。この1カットが恐ろしいほどの力を持っていたのです。

参りました。思わず「オォー!」と声が出ました。一気に号泣です。
1カット、たった1カットでそれまでの50点だった作品評価が一気に500、いや50億万点(こどもか)に跳ね上がりました。

もうこの1カットがあるだけで自分は『ピッチ・パーフェクト2』を全肯定します。

これまで続編キューティー映画で似たようなシチュエーションがあったのですが ((『キューティ・ブロンド2』のクライマックスシーンなど))、この1カットと、それに続くシチュエーションは過去の作品を軽く凌駕しています。傑作シーンです。

そのシーンの裏に込められた意味、キャラクターたちのポーズの意味 ((登場する人たちのポーズに注目してください。ベラーズの伝統を感じさせ、感動が増します。さらにメンバーの中には「グッド・モーニング・アメリカ」の名物キャスター、ロビン・ロバーツもいます。))、直接描かれてはいませんが、その1カットの背景に含まれるドラマを勝手に想い描きながら見ると、もう感動で涙が止まりません。
いや、この展開は思いつかなかった!参りました。

ここで歌われるアカペラ曲は事前にサントラで聞いているのでその展開はわかっていて、アカペラ後半で「フラッシュライト」が歌われるのを知っています。
サントラだけでは「フラッシュライト」が劇中でどういう意味を持つ歌なのかは分かりませんでしたが、映画を観るまで、曲の印象から「ここは客席が大合唱になるのね。なるほど、ラストでその演出をすれば感動するだろうなぁ」と想像していました。

実際、アカペラシーンの直前、応援団であるベッカの彼氏ジェシーと友人のベンジーが客席で周りにペンライトを配る描写があります。それを見ながら「ほ〜ら、だいたい予想通りっ(ふんが)」と思って鼻の穴をふくらませて観ていたのですが、結果は全く異なったシチュエーションでした。

この大感動シーンのシチュエーション、よく考えれば矛盾だらけなんです。でもそんな事を吹き飛ばすだけの力があります。些細な事はどうでもよろしい!と言わんばかりに歌とパフォーマンスとカメラワークとカット割が観客の心を惹きつけます。

それはとてもエモーショナルで映画的な展開です。老若男女関係なく感動できます。キューティー映画はこうでなくてはならない、と強く感じました。

『ピッチ・パーフェクト2』は映画としては今ひとつという評価かもしれません。
しかし前作もそうであったように、アカペラシーンで楽しませておいて、ラストのパフォーマンスで「なるほどね!」という予想外のシチュエーションを組み込んで感動させる意外性が、このシリーズの最大の魅力であり、それが観た人に支持される理由だと思います。

正確さや整合性よりエモーショナル優先。

その意味では今回の『ピッチ・パーフェクト2』は確実にパワーアップしています。キューティー映画の傑作です。パート3の制作も決定しているので、またどんな感動シーンを観せてくれるか楽しみです。

最後に。スタッフロールが出ても立たないように。豪華ゲストたちが登場するシーンが最後におまけで出てきます。