Home Column 【2015LA滞在記番外編3】南アフリカのキューティー映画を見るの巻

【2015LA滞在記番外編3】南アフリカのキューティー映画を見るの巻

【2015LA滞在記番外編3】南アフリカのキューティー映画を見るの巻
0

(前回までのあらすじ)Airbnbで探した部屋のオーナーは、なんと南アフリカから来た映画プロデューサーだった!そこでアントンさんのプロデュースした数々の作品から、キューティー映画であろう3本を選び見せてもらうことに。南アフリカのキューティー映画をご紹介。


【2015LA滞在記番外編1】Airbnbを使って部屋を探すの巻
【2015LA滞在記番外編2】オーナーの正体は!の巻

公開年度が古い順に見たのですが、これが偶然とはいえ、役者やスタッフが個々の作品で繋がっていくベストな順番で見ていたことが後に分かりました。アントンさんのプロデュース作品を体系的に見ることができたわけです。
(アントンさんはこちらのチョイスに対して「あまりいい出来じゃない作品もあるから、本当はこちらを薦めたい」とアクション映画やサスペンス映画を薦めてくれましたが(笑))

そんなわけで、珍しい南アフリカのキューティー映画をご紹介したいと思います。

Ek Lief Jou (2011)

2015-la-report-3_01
レポーターのアンナ(イルセ・デ・ヴィス)は上司から人気歌手ダーク(カート・ダレン)の特ダネを取るように言われます。
その頃、ダークの新曲PVの出演者オーディションが開催され、アンナはそれを取材します。オーディションには多数のファンが集まりますが、ダークはアンナが舞台袖で踊っているのを見て彼女に注目します。

ダークには婚約者リサ(クリスティーナ・ストーム)がいますが、リサはダークにはCDの売り上げを恵まれない子供達に寄付するといって、その売り上げを全部自分の懐に入れようと計画しています。
ダークの付き人のダニー(アンドレ・フラウエンシュタイン)は色々な女の子にモーションをかけますが誰も相手にせずモテません。しかしリゾートのオーナーの娘と仲良くなります。

そして、一行は草原の真ん中にあるリゾート地へ。
リゾート地ではオーディションの結果が発表される予定です。優勝者はなんとアンナです。しかしアンナはダークが子どもたちにCDを本当に寄付しているのか疑問を感じ、特ダネのためこっそり調査しています。一方ダニーはリゾート地のオーナーの娘と仲良くなります。

アンナとダニーは恋に落ちますが、リサがアンナの本当の目的を暴露。ダークはアンナから去ります。悲しみのアンナはダニーを載せてジープで走行中、ジープが転倒し瀕死の重傷を負います。
ダークはアンナの入院している病院に行きますが、そこにはアンナの婚約者が来ていました。
一方、リサの計画はダニーの活躍でダークの知るところとなり失敗に終わります。
最終的にはダニーとリゾート地の娘の結婚式の場でアンナとダークは再会し結ばれて物語は終わります。

監督のアート・デ・ジョンはオランダ出身。アメリカ映画『フィービー・ケイツの 私の彼は問題児(ドドンパ)』などを監督しているベテランです。
人気歌手ダーク役のカート・ダレンは実際の人気歌手です。ヒロイン、アンナを演じたイルセ・デ・ヴィスはベルギーのTVアナウンサーです。
この企画は南アフリカの人気歌手カート・ダレンを主演に、ベルギー人女優イルセ・デ・ヴィスをヒロインに配置することで北欧圏をマーケット視野に入れて作られました。
ビッチなリサ役を色っぽく、そしてコミカルに演じたクリスティーナ・ストームの演技力が光ります。

人気歌手とそのスキャンダルを狙うレポーターの恋、そして舞台は南アフリカらしいサバンナの真ん中のリゾート地。面白い題材のキューティー映画です。
でも構成が少々雑で詰め込み過ぎました。上記のストーリー説明を見ても分かるようにまとめきれません。元々このお話の中心となるPV出演のオーディションは途中からあってもなくてもいいものとなりますし、各キャラクターのエピソードが均等に丁寧に描かれ過ぎていました。もう少し整理して人気歌手とレポーターでお話を進めれば、より良質なキューティー映画になったと思います。

後半、唐突にヒロインが運転していたジープが横転し大事故となり、ヒロインは瀕死の重傷を負います。あまりの急な展開と初めての南アフリカキューティー映画ということもあり「え?ヒロイン死んだ?南アフリカのキューティー映画って、もしかして容赦無い?」と思いました。だってその後助けに来た人が、動かないヒロインの頸動脈を触って生死を確かめるのですが、ヒロインはピクリともしないんですから(笑)普通は「息がある!」と台詞で説明するか、ヒロインに生きていることが分かる芝居をさせるかするのですが。

Stilte (2012)

2015-la-report-3_02
アントワネット(アンジェリーク・プリトリアス)は人気歌手。マネージャーとはいい仲で順風蔓延でしたが、自宅に押し入った強盗のせいで両親を亡くし、自身も声を失ってしまいます。医者は彼女の怪我はすでに治っていて話せるはずと言いますが、アントワネットは話さず筆談で通します。そして田舎で農業を営む叔父の家に来ますがずっと不機嫌でわがままばかり。
やがてアントワネットは近くの教会の若い牧師ピーター(アンドレ・フラウエンシュタイン)と出会い、彼のボランティア活動を手伝ううちに徐々に心を開いて行きます。そして彼女はピーターにだけは普通に話します。アントワネットは実は話せたのです。2人は徐々に互いを意識し始めます。
そして両親を殺害し彼女を傷つけた犯人が捕まったと聞き、アントワネットはピーターと勇気を出して確認に向かいます…

両親と将来を失い自暴自棄になったヒロインが、田舎で癒され新しい人生の目標を見出すというお話です。信仰心や贖罪などちょっと宗教色が強いのですが、構成もシンプルでとても良く出来たキューティー映画でした。

『Ek Lief Jou』で女性を追っかけ回していた役を演じていたアンドレ・フラウエンシュタインが、この映画では真面目で禁欲的な牧師役を演じています。同じ役者とは気付きませんでした。素晴らしい化けっぷりです。

ヒロインのアンジェリーク・プリトリアスは本来ゴージャスなヨーロッパ・タイプの美人女優ですが、全編の半分近くを地味な衣装でムチ打ちで使う矯正具を首につけ、片足を杖をつきながら歩く芝居で頑張っていました。しかし時々片足の悪い設定がどっかに行き、杖をつくより早く歩いてしまっていましたが(笑)
現在33歳(映画出演時30歳)となる彼女は現在は活躍の場をアメリカに移しています。映画の冒頭では、人気歌手という設定の彼女の歌のPVが丸々1曲分ノーカットで流れます。

途中、『塔の上のラプンツェル』の有名なシーンのモデルとなったタイのコンローイのように、灯籠を空に飛ばすシーンがあるのですが、雄大な自然をバックに人物をシルエットにした逆光の撮影といい、とても美しかったです。(この映画のポスター等メインビジュアルに使われています)
2015-la-report-3_03
監督・脚本のダレル・ルート(ダレル・ジェームズ・ルート)は、1992年に公開されたアパルトヘイト問題を扱ったミュージカルの映画化『サラフィナ!』で注目されました。この作品はヒロインの少女にレレティ・クマロ、教師役にウーピー・ゴールドバーグが出演しています。また2004年には監督・脚本を担当した、エイズ問題を扱った『Yesterday』でアカデミー賞最優秀外国語映画賞にノミネートされているベテランです。

Little One (2013)

2015-la-report-3_04
旧黒人居住区の空き地で遊んでいた子供達が、血を流して倒れていた小さな女の子を見つけます。子供に呼ばれた主婦のポーリーン(リンディウェ・ヌドロブ)はすぐに女の子を病院に運びます。
病院で一命をとりとめた6歳の女の子は、3人の男性にレイプされていたことがわかります。名前はわからないので”リトルワン”と呼ばれます。
一命をとりとめたリトルワンは虐待で火傷痕が激しい顔を他人に見せたがりません。
ポーリーンには小さな息子と、仕事もロクにしない亭主関白な夫がいます。一家の家計はポーリーンが道端で野菜などを売って支えています。その夫の目を盗み、ポーリーンは何度も病院を訪ね、リトルワンのために服や靴を与えたり、マスクを作ってやったりします。怯えていた女の子もポーリーンになつきます。
警察の調査でリトルワンを暴行したのは父親とその友人たちであることがわかります。母親がいてリトルワンを探していることもわかりました。このままではリトルワンは母親の元に帰されることになります。ポーリーンはリトルワンを娘として育てる決心をし病院から自宅に連れ帰ってしまいます。家にいるリトルワンを見て驚く夫。この夫婦は昔、娘を亡くしていたのです。夫もリトルワンになき娘を重ねて可愛がり、リトルワンはポーリーンの一家の娘として育っていくのですが…

本作は2013年米アカデミー賞外国語映画の南アフリカの代表作としてノミネート作品になりました。幼女レイプという南アフリカの重い現実を真正面から扱い、それに事後関わる人々を静かに見つめながら一条の希望を描いた力作です。

アパルトヘイトの名残りの旧黒人居住区に住む貧困層の主人公、6歳の女の子が実父にレイプされ捨てられているというショッキングな事件など、南アフリカの今の暗部を描きながらも映画全体が陰惨にならなかったのは、監督・脚本のダレル・ルート(ダレル・ジェームズ・ルート)が描く登場人物たちの優しさのせいでしょう。

亭主関白でずっと妻を怒鳴り散らすだけの悪役面した夫は、後半になるまで主人公の行動を阻む者として描かれています。しかしポーリーンがリトルワンを家に連れてきた時、この夫は妻を叱りません。そして実は子供を亡くした妻を、深い部分で理解している優しい心の持ち主であることがわかります。ここに至るまでの演出、そこまで計算した演技設計は見事でした。

同じく、リトルワンの事件を追う刑事、リトルワンの担当でポーリーンの味方になる看護婦など、周囲のキャラクターもみんな、組織のルールをはみ出す形でリトルワンとポーリーンのために何かしてあげようとする優しい人たちです。

主人公ポーリーン役リンディウェ・ヌドロブの、言葉少なく控えめながらも、子に愛情を無限に注ぐ母性豊かな演技も素晴らしいの一言でした。

そしてこの映画の最重要キャラクター”リトルワン”。悲惨な状態で登場するのに、とっても愛らしい存在として描かれます。
入院直後は包帯だらけで片目が出ているだけ。その後は顔を見せたがらないリトルワンの気持ちを察したポーリーンの思いつきでスーパーの紙袋をかぶり、さらにポーリーンが作った可愛らしいマスクをかぶるのですが、この被り物が、か弱く小さく、そしてかわいらしい存在を一層引き立てました。顔を見せないことで、とっても悲惨な被害者としての存在や実在感を薄める効果を果たしていたと思います。
2015-la-report-3_05
2015-la-report-3_06
この顔を見せない演出は、現場的にも実益性があります。顔を見せないことで複数の子役を使うことが出来ます。実際、リトルワンには女の子だけでなく男の子の代役もいたそうです。

幼女のレイプ事件は南アフリカの現実です。それを未然に防げず事件が起こってしまった後に、人々はそれとどう向き合うべきか、それぞれが出来ることは何なのかを問う本作。ぜひ日本でも見れるといいなと思いました。

南アフリカのキューティー映画の今

3作品を見た後、南アフリカのキューティー映画事情を調べたのですが、近年ハリウッドスタイルのキューティー映画が多く見られます。例えば…
白人男性と黒人女性の、人種を越えた恋愛を描く『Fanie Fourie’s Lobola (2013)』

9月11日公開の最新作、作家で本屋を営むヒロインと人気モデルの恋を描く『Tell Me Sweet Something (2015)』

その他にも多くのキューティー映画が作られています。
近年、南アフリカはアメリカのキューティー映画の舞台にも使われています。
『ブルークラッシュ2』

ブルークラッシュ2 [Blu-ray] DVD

価格¥1,370

順位211,865位

出演サーシャ・ジャクソン, シャーニ・ヴィンソン, ギデオン・エメリー, ほか

監督マイク・エリオット

発行ジェネオン・ユニバーサル

発売日11.08.03

Amazonを開く

Supported by amazon Product Advertising API


ドリュー・バリモア&アダム・サンドラーの『子連れじゃダメかしら?』

子連れじゃダメかしら? ブルーレイ&DVDセット (初回限定生産/2枚組) [Blu-ray] DVD

価格¥980

順位122,009位

出演アダム・サンドラー, ドリュー・バリモア, ベラ・ソーン, ほか

監督フランク・コラチ

発行ワーナーホームビデオ

発売日15.03.11

Amazonを開く

Supported by amazon Product Advertising API

【2015LA滞在記番外編1】Airbnbを使って部屋を探すの巻
【2015LA滞在記番外編2】オーナーの正体は!の巻