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ロマンス小説を多く翻訳している翻訳家 佐竹史子さん

ロマンス小説を多く翻訳している翻訳家 佐竹史子さん
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ソフィー・キンセラのこと

「レベッカのお買い物日記」シリーズの著者、ソフィー・キンセラについて教えて下さい。この人が書くヒロインのキャピキャピ感って文章のどういうところにあるんでしょう?佐竹さんの翻訳だと小さい「っ」とかを多用されてます。あとビックリマークの多様。その辺がキャピキャピ感を醸し出してるのかな?と分析したんですが。

ビックリマークは、原書にあるから使ってるだけです。私、原書にないビックリマークは付けないようにしてるんです。うるさいから。
でも、確かにそう言われると、原書の段階からビックリマークは多いですね。

あと「OK」って言葉が多いですね。レベッカ・シリーズは冒頭は必ず「OK、大丈夫」というお決まりの言い方から始まります ((「OK、大丈夫」:「レベッカのお買い物日記」シリーズは、冒頭にレベッカが、焦りながら自分を奮い立たす「OK、大丈夫。」という独り言で始まるのがお約束。))。
全然「OK」じゃないシチュエーションのときに「OK」を使うみたいな。
焦りというかギリギリ感が出てますね(笑)

彼女はユーモアのセンスが独特なんです。イギリスってユーモアのセンスが独特で伝統があるなぁ、って彼女のを読むと思います。
アメリカ人の書いたものは直球でひねりがない感じなんですけど、イギリス人だと「凄く惨めで辛いけど、なぜか滑稽」みたいなものが上手く表現されてますね。

そういう点で言うと、登場人物は「どうしよう…」って泣いちゃってるんだけど、それが読者にとってはおかしい、っていうユーモアの描写がソフィ・キンセラはほんと上手いと思いますね。

会話や場面転換のテンポの良さや、10ページに1回は笑いのオチがあるみたいなサービス精神とか、色々翻訳してますけど、この人はその辺がダントツだと思います。他の方から引き継いでの翻訳 ((他の方から引き継いでの翻訳:「レベッカのお買い物日記」1巻の翻訳は飛田野裕子さん。2巻から佐竹さんが翻訳している。))でしたが、ほんと幸運だったと思いますね。

「レベッカのお買い物日記」が映画化された『お買いもの中毒な私!』はどうでしたか?

レベッカが巨乳だったのが私のイメージと違いました(笑)
レベッカって小柄な女の子じゃないかって思ってたんです。華奢でちっちゃくって、凄く元気で走り回ってる女の子っていうイメージだったんです。それが映画ではセクシー系だったので、自分が思ってたイメージとは違うなぁ、って。
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翻訳家は日々勉強!

仕事とは別に趣味で原書を読んだり翻訳したりとかされますか?

原書はこれまで自分が訳した作家の人のものは読みますね。

それと勉強として、自分で訳してみて他の方の翻訳で出している本と比較するということをします。
「ブリジット・ジョーンズの日記」シリーズとか、原書を自分で訳してから亀井よし子先生の翻訳を読んで「あ、これはこう訳すんだ」って添削を自分でしたりしました。そういうことはずっと続けてますね。
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佐竹さんご自身が日本語で小説を書いてみたいと思うことはありますか?

書いてみたいと思いますねー。
でも、どうしても自分のこと書いちゃう気がして…それがほんと美しい形で消化されてるならいいんですけど、なんか中途半端に自分のことを書くと妙なナルシズムが漂うのはやだな、と思うので。

作家はまず自分で経験したことを書いてみるべし、みたいなところありますよね。

ええ、書いてみたいと思ってるんですけど、まだ書けないなって思ってますね…
でも翻訳家であればずっと文章をいじってられる仕事なんで、何とかがんばってやっていきながらも、いつか自分の本が書けるようになったらいいなと思います。

翻訳者を目指してる人たちにメッセージを

翻訳家であれば、やはり外国語をミッチリまず基礎からやるというのが大事だと思います。じっくり読むというのは相当難しいと私は思っています。
かなり英語が普及してると思いますけど、ただ聞いて喋れるだけっていうのではダメです。

私自身聞いてしゃべるっていうのはどちらかと言うと苦手です。
私の場合はNHKの英会話を毎日聞くようにしてますね。今の言葉をちゃんと使ったものを用意してくれてるので。
聞くのは苦手ですけど、少しでも英語に触れていかないと、と思ってます。

あと、日本語を磨くためには好きな本があったら、それをとことん読んで、これがいいかどうかはわからないんですけど、書き写して文章のリズムとかどういう文章を使っているのだとか、もっと言うと感動の届け方とかを勉強しないといけないと思います。

そして大事なのはとにかく「読み切る」こと。それは全部訳すという根気を養う意味でもあります。
そもそも根気がなくて勉強嫌いな人は翻訳家になれませんから(笑)
今、翻訳家で活躍してる人たちで勉強が嫌いという人はいません。
趣味が勉強というくらいじゃないと。私自身も毎日勉強の連続です。たぶん翻訳家である以上、ずっと勉強の日々だと思うので。

キューティー映画のこと。ソフィー・キンセラの新作について

ところで、これだけキューティー映画の原作などの翻訳をやっている佐竹さんですから、お好きなキューティー映画はあると思うのですが?

それが、実は『愛の嵐』とか『ナインハーフ』とか、ちょっとやらしいものとかの方が好きなんです…(笑)
ちょっと退廃的なものが好きなんです。健康で明るいのより不健康でジトッとしたものが…そういうのも訳してみたいな、ってありますね。
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今、翻訳にとりかかっておられるソフィー・キンセラの新作はどうですか?

面白いですよ。いまどきの若いヒロインのところ大叔母さんの霊が若い女性になって出てくる、ちょっとファンタジーも入ってる感じで。

ソフィー・キンセラって劇中で老人をうまく使いますよね。

そうそうそう!老人のちょっとピンとハズレなところを凄く上手く描きますよね。老人をコメディの道具として使いながらもちゃんと上手く見せ場を作ったりしますよね。

今回の新作にも、老いを描いているところもあるし、キューティー映画的な面白さもありますし、訳しててとっても楽しいですね。
ぜひ期待しててください。

終わりに

インタビューしてみて、佐竹さんご自身のキャラクターの面白さが、ソフィー・キンセラの翻訳とマッチしてるんだと確信しました。
ご本人は「自分は暗い人間なんですよ…」と言われてましたが、その言い方自体が可笑しくて、あぁ、無理に笑わせようとせず、自然体で人を笑わせられる人なんだな、と。チャキチャキしたテンポの会話や、時々入る巻き舌っぽいしゃべりなど、とても言葉が魅力的な人でした。

佐竹さんのその魅力を、稚拙なインタビューではなかなか伝えられないのがもどかしいです…(インタビューの文体は、佐竹さんによるソフィー・キンセラの文体を意識してみました。)

そんな楽しい佐竹さんとソフィー・キンセラのコンビによる新作です。
若いヒロインと女の子(中身は大伯母さん)の女友情コメディもの!これは興味深い題材です!発売は2014年1月20日。今からとても楽しみです。

スターな彼女の捜しもの


彼氏にフラれ、仕事のパートナーには逃げられ、イマイチすぎる日々を送っているララは、105歳で大往生した大叔母サディーの葬儀に出席することになった。親族以外の弔問客や花さえもないうら寂しい葬儀場で、ララは不思議な少女に声をかけられる。「あたしの首飾りをさがして」と熱心にうったえる彼女の驚くべき正体を知ったララは、好奇心から引き受けることにしたけれど…

そして「レベッカのお買い物日記」シリーズも新作が待機中ですし、さらに話題の「プラダを着た悪魔」続編「Revenge Wears Prada」も待機中とのこと。今後も佐竹さんの翻訳によるキューティー映画系小説はしばらく続きそうです。
ぜひみなさんも楽しいロマンス小説を読んでみてください。

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翻訳するということ

翻訳の仕事のやり方ってどういう手順なのですか?

まず翻訳の依頼があって、本なりコピー原稿が送られてきて、それが来たら、まず読みます。
あとは2ヶ月、3ヶ月、ただひたすら訳します。
あ、でもものすごい急ぎって時もあって、本を通読する時間がない時は訳を書き送りしていきます。
その時は「次、どうなるんだろう?」って、読者と同じ気持ちを持ちながらワクワク感たっぷりに訳すので、それはそれで、これまたオツなもので。

これは大変だったというエピソードってありますか?

パラノーマルもの ((パラノーマルもの:ロマンス小説の中で人間以外との恋を描いたもの。ファンタジーやSFの要素を持つ。「トワイライト」の大ヒットで脚光を浴び、近年の海外YA小説の中核となった。))を訳したことがあって、その時は難しかったですね。
その作者が独自に持ってる世界観があったり造語があったりするので。
そういう言葉にぶつかると「この言葉をどう訳すりゃいいの?」って戸惑いました。
その人のサイトを見たりして調べたのですが、なかなか全体図が見えてこなくてあれは大変でしたねー。

佐竹さんが多くやっておられるキューティー小説系には、今風の言葉とか流行歌手の名前を使っての喩え、若者造語のギャグ言葉とかバンバン入ってくると思うのですが、難しくないですか?

その歌手が有名であればすぐピンと来るんですけど、ちょっとそうでもない場合は訳を変えますね。調べた上で「あぁ、これはこういうことで笑いを取ろうとしてるんだ」と一応把握した上で、アレンジします。

ギャグの場合は笑いのセンスがないと、そういうアレンジは難しいですよね。

ははは。笑いのセンス、私あるのかなぁ?(笑)

(同席していたヴィレッジブックス編集者さん「ありますよ!私、いつも佐竹さんからあがってくるゲラ(原稿)を読んで「プッ」てなりますもん(笑)」)

へ~(他人事)
コメディは好きなんですけど、(声を落として)自分自身は暗い人間なんですよ…
(周り爆笑)
「すごい楽しかったです!」って言われても「何で!?私、こんなに暗いんだけどなぁ…」と…
(周り爆笑)

(笑)佐竹さん、素で面白いですよ(笑)
さて、質問に戻ります。原書を読まない我々からすると、佐竹さんが書かれた訳が全てです。翻訳家としての心構えとか気をつけてることとかはありますか?

文体を決めるのは原文です。原文から聞こえてくるものしか出せないと私は思ってます。
常に作者の声を聞けるように常にニュートラルにするっていうのが、まずは第一ですね。
先入観を入れないし、自分の好きなものとかも入れないようにします。

あと、あんまりノリにノッた翻訳って、いいようで意外とダメだったりします。
ガッーっとやって翌朝冷静に読み返すと「あれ?ってか、酔っぱらってたっかな?」って思うような(笑)
あんまりハイになっちゃうとダメですね。

日本語のこと。原書との距離感

翻訳って日本語も重要ですよね。日本語の文章に関して、勉強のため何かやっておられることってありますか?

好きな小説を書き写したりしますね。手書きで書き写します。手で書くと(文章が)自分の中に入ってきますね。
物凄く難解な日本語の本があったとして、まずはその英訳された本を読んで、次に日本語で書かれたものを読んで、それを書き写したりしてます。

大江健三郎とか三島由紀夫の小説とか物凄く凝った文体じゃないですか。そういうのはちゃんと英訳されて出版されてるので、まずは英訳された本を読んで「わっけわかんない英語だな~」と思いつつ、日本語版を書き写しながら「あ、これはこうなんだ、」と英訳と日本語の表現を確認していきます。

原書の作家への親近感ってありますか?

それは凄くありますね。でも実際に会ったことはないです。
その本の中で語ってることしか私は知らない、という風に思いたいんです。
もちろん作者のサイトとかブログとか読みますけど、さらに個人的に交流しようと思ったことはないですね。

翻訳すると、作者への思い入れはどうしても深くなりますから、さらに作者と個人的に仲良くなると、批判的な面がなくなっちゃうんじゃないかな?って。

原書を読んで「下手だなー」っていうのも、正直言ってあると思います。そういう時ってどうするんですか?上手い文章に変えたりするんですか?

そうですね。悪いところはちょっと隠して、とてもいいところにお化粧をして目立たせて、ってことをします。
同じ言葉が何度も入ってたら、その辺を整理してあげるとかですね。

けどそういうことも、基本的には原書への愛がないと。
翻訳の仕事が来るってことはその原書との運命の出会いですから。
だから「ちょっと下手だなぁ」って思ったことはあっても「バカじゃないの?」と見下したことは一度もないですね。