
2022年のキューティー映画を総括してみます。
2022年キューティー映画トピックス
2021年からキューティー映画のテイストが全体にコメディに戻っているな、と感じたのが、2022年は確信に変わりました。
今年発表されたキューティー映画の良質な作品、ヒット作品はいずれもコメディ。(今年の全米興行収益で最も稼いだキューティー映画はサンドラ・ブロック主演の冒険コメディ映画『ザ・ロストシティ』)
サンドラ・ブロック、ジュリア・ロバーツ、ジェニファー・ロペスなど、90年代にキューティー映画を盛り上げていた女優さんたちがコメディで戻ってきたのも今年の特徴でした。
そしてNetflix、ディズニー+、プライムビデオなどのオリジナル作品もですが、青春映画が全体に「挿入歌でロック系のヒット曲やガールズバンドの曲を多めに使う」「ゲイのキャラクターがコミカル」「友情の描き方が軽妙でシリアスではないがとても肯定的」など90-00年代テイストのものが多かった印象です。
テーマも開放的で前向きなものが増えました。
今年はNetflixのキューティー映画に良質なものが多かったです。本当は10作以上オススメしたいところですが…
一方、本来キューティー映画を量産するはずのディズニー+はポリコレ沼にはまり迷走中。期待の『魔法にかけられて2』があれでは…今一度、自社ブランドを見直すべきでしょう。
Netflix『エノーラ・ホームズの事件簿2』
前作も良かったのですが、さらに上回る素晴らしいでき。
劇中でのシャーロック・ホームズ関連や史実の組み合わせ方も見事です。本作でエノーラが追う事件の背景は史実に基づいています。
クライマックスが苦い終わり方だなぁ、と思っていたら、そこから上手く史実の中心人物の活躍まで持っていく構成が実に巧み。
本作は原作にはない、前作同様の監督と脚本家コンビ(ハリー・ブラッドビアーとジャック・ソーン)によるオリジナルストーリーです。
今回は主にエノーラとシャーロック・ホームズとの関係に絞って話が進みます。これは長男マイクロフト役のサム・クラフリンのスケジュールが合わず出演できなかったためですが、怪我の功名というべきかエノーラとシャーロックの関係に焦点を絞ったことで、エノーラのお話がシャーロックの物語の前章的なものとなり、シャーロック・ホームズの物語にリンクする形になりました。
そしてこの映画のエンドロールのメインスタッフの紹介がこの映画の雰囲気のままでとても楽しいです。新聞の切り抜きなどみんな当時の写真やイラストとして紹介されていてとっても粋でした。
Netflix『パーフェクト・ペアリング』
ヴィクトリア・ジャスティス主演、ワイン販売の権利を取ろうとオーストラリアに行ったらひょんなことから牧場見習いに…
突然慣れない生活でドジばかりだけど前向きにがんばるヒロインをヴィクトリアが好演。歌も披露。
王道キューティー映画でとても良かったです。
Netflix『リベンジ・スワップ』
00年代キューティー映画の青春学園もの大リスペクト映画。見ながら浮かんだのが『ハード・キャンディ』(ローズ・マッゴーワン主演の方)『モテる男のコロし方』あれもこれも…でimdb見たら同じ映画が指摘されててやっぱりみんな思うよねと。お話の転がし方もキューティー映画お約束に意外性もプラスして面白かったのですが、凝った仕掛けの展開の割にクライマックスの処理は超雑(笑)その雑な感じもまたキューティー映画っぽくて許せます。気持ちよく終われば全て良しなのです。
音楽のチョイスも流すタイミングも一番華やかだった頃のキューティー映画っぽく、絵作りも派手で、キューティー映画が日常の閉塞感から解放する役割に戻ってきたことを痛感する快作です。
Netflix『シニアイヤー』
プロムクイーン確実だったヒロインが事故で昏睡状態になり20年後目覚めて再び高校生となり、今の価値観で廃止されていたプロムの復活とクイーンの座を目指す…という「25年目のキス」の現代版とも言える内容。過去のキューティー映画へのリスペクトも素晴らしい!大傑作です。
90年代そのままのヒロインを使って、今の価値観を皮肉って笑いにしつつ、普遍的で新しい価値観を提示します。それがキューティー映画のフォーマットできっちり楽しく感動的に描かれているのが素晴らしい。
シリアスにしなくてもテーマを声高に叫ばなくても、キューティー映画のフォーマットを使えば幅広い視聴者に作者のテーマや主張はちゃんと届くのです。
『君と一緒に過ごした夏』
2009年に出版された同名YA小説を改変し登場人物も整理して映像化。『好きだった君へ』脚本家の監督デビュー作です。堅物ヒロインが大学進学前の夏休みに海辺の街で体験する事を描きます。
夏の海辺の話なのに、全体の画のトーンは明るくなくアートっぽいカメラワークと近年のYA小説にありがちな周辺世界だけを描き両親が離婚してる家庭環境…と、地味で内向的な映画になりがちなのに、本作はすごくキューティー映画してて、爽やかな青春映画になってます。
ヒロインが地元の女の子達と仲良くなる過程の描き方が素晴らしく、地元の女の子達と仲良くなってドライブソング担当をさせられるヒロインが選んだ曲は、サンティゴールドの「I’m a Lady」。選んだときのヒロインの受け入れるかのドキドキ感。車内の一瞬の妙な空気…しかしやがて車内みんなが盛り上がっていく様は感動的です。
Netflix『パープル・ハート』
ソフィア・カーソン(『ディセンダント』シリーズ『フィール・ザ・ビート』)、ニコラス・ガリツィン共演。音楽での成功を夢見る糖尿病の移民女性が高額な治療費をまかなうため、過去の問題から借金を抱えている出兵間近の海兵隊員と、周囲に内緒で軍の支給金目当てで結婚し、夫婦を演じますが、あることをきっかけにお互いが必要となっていく…というニコラス・スパークス的な展開のお話です。
ソフィア・カーソンは着実に女優として歌手としてステップアップしています。彼女が歌うライブシーンはとても良くできていますし、セクシーで開放的で現実に立ち向かうヒロインを見事に演じていました。
内容的にもロマンティックな話しながら直面する問題は非常にリアル。それを映画だからと安直な解決方法に逃げず、向き合っている展開が非常に好感が持てました。
『愛しのアクアマリン』『ラモーナのおきて』と良質なキューティー映画を撮ってきたエリザベス・アレン・ローゼンバウム監督がドラマティックな内容をしっかり作り上げています。
本作は今年全世界でのNetflix視聴数で6位、Netflixで公開されたキューティー映画の中で最も視聴された作品です。(『シニアイヤー』も9位に入っています。)
ディズニー+『ノット・オッケー!』
ゾーイ・ドゥイッチ主演。SNSでデジタル加工して嘘のパリ旅行を演出して人気を取ろうとしていたらパリでテロが起こり、奇跡の生還者として世間の注目を浴びるものの、そのせいで嘘を重ねるハメに…。
久々に面白い脚本(筋書き)の映画を見たという感じです。キューティー映画のお約束的な友情を育んでいく見せ場があって、それが全て逆説的に作用する皮肉。
何よりヒロインが失敗から反省してもさほど成長せず、最後にある意味やっと一歩踏み出すという…
観客が共感しないヒロイン像のはずなのに、ヒロインの成長を見届けた観客はホッとするという、キューティー映画としてはテクニカル的に難しい展開を実にうまく見せます。
『スターは駐車場係に恋をする』
フランス映画『La Doublure』(原題の英語タイトルはリメイク版と同じ))のリメイク版。
マスコミ対策で、しがない駐車場係のエウヘニオ・デルベス(『コーダ』『オーバーボード』)と人気女優サマラ・ウィーヴィング(『ベビーシッター』)が偽りのカップルを演じるお話。
リメイク版ではアメリカでの多民族国家(ラテン、アジア系)をテーマに加えて、さらに周囲のキャラたち全員にも見せ場をつくり(最近の良質なキューティー映画のポイントはこれ)とても気持ちよくリメイクしていました。
人気コメディアンのエウヘニオ・デルベスは気のいい情けない男性をまたも好演。サマラ・ウィーヴィング、美人だけど気さくで友達になりたいと思える役がほんと似合います。
中盤のコントシーンやおばあさんのエロネタはいらないけど、終わり良ければすべて良しのとても気持ちのいい爽やかなキューティー映画でした
『オートクチュール』
登場人物がみんな魅力的。シリアスな作風なわりに、展開がとてもドラマティックだから、ちょうどいい感じになって実に前向きなキューティー映画に。
テーマも「職人の継承」「移民差別」「一歩踏み出す勇気」と多重構造になっていて良かったです。
引退間際のお針子リーダー(ナタリー・バイ)がスリの移民の女の子(リナ・クードリ)に才能を感じ、彼女を育てようとするお話。女の子の親友との関係の描き方が良かった。ラストのファッションショーのシーン、モデルたちが舞台に向かうところ、素晴らしかった。
撮り方はシリアスだし、ヒロインの女の子は怒りまくり、お針子リーダーもイライラ…とギスギスした雰囲気を、次期リーダー役のパスカル・アルビロ、女の子の親友役のスーメ・ボクーム、それぞれのキャラの優しさで映画がとても柔らかくなっていました。
『ミセス・ハリス、パリへ行く』
素晴らしい予定調和!気持ちいい、見てる人を幸せにする予定調和!
これぞキューティー映画!都合がいいところも全て、観客が気持ちよく映画館を後にできるための、最上の仕掛けだと思います。
1958年に書かれた原作はすでにTVドラマやTV映画などで何度も映像化され、舞台ミュージカルにもなってます。
原作はシリーズ化されてて、続編でミス・ハリスはニューヨークに、3作目は議会に、4作目でモスクワに行きます。
原作と今回の映画のラストが異なるようです。本作のクライマックスはオリジナルの展開ですが、映画の見せ場的には良かったと思います。