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生まれ変わった『ANNIE/アニー』は21世紀型ミュージカル

生まれ変わった『ANNIE/アニー』は21世紀型ミュージカル
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新たに生まれ変わった『ANNIE/アニー』は21世紀型のミュージカル映画でした。これまでのアニーを継承しつつ、全く新しい「アニー」を作り上げています。

色々なアニー

ミュージカル「アニー」はこれまで2度映像化されています。
1982年に監督はジョン・ヒューストンでミュージカル映画になっています。
アニーをアイリーン・クイン、ウォーバックス氏をアルバート・フィニー、ミス・ハニガンをキャロル・バーネットが演じています。

1999年にはディズニーのテレビ映画で。監督は『イントゥ・ザ・ウッズ』ロブ・マーシャル。
こちらのアニーはアリシア・モートン、ウォーバックス氏をヴィクター・ガーバー、ミス・ハニガンをキャシー・ベイツが演じています。

元々今回の『ANNIE/アニー』は2011年頃、ウィル・スミスとジェイzによって企画されました。ジェイzは自曲でアニーの定番曲の1つ「It’s The Hard-Knock Life(ハードノックライフ 厳しい人生)」をサンプリングした曲を発表しています。

この企画、ウィル・スミスは娘のウィロー・スミスをアニーにキャスティングしていました。その親バカ企画に付き合わさせられたのが「glee/グリー」のライアン・マフィー。彼が監督をする予定でした。
しかしこの企画開発は一旦白紙になります。プロットを女優のエマ・トンプソンが書き下ろし、それを『プラダを着た悪魔』など数々のキューティー映画の脚本を書いているアライン・ブロッシュ・マッケンナが脚本としてまとめます。

監督には『小悪魔はなぜモテる?!』『ステイ・フレンズ』のウィル・グラックが、そしてアニー役には最年少アカデミー主演女優賞候補になったクヮヴェンジャネ・ウォレスとなり、制作がはじまります。
一時はウォーバックス氏にジャスティン・ティンバレイク、敵役のミス・ハニガンにはサンドラ・ブロックの名が上がっていました。

最終的にはジェミー・フォックスが、ウォーバック氏に代わる新しいキャラ「ウィル・スタックス」として配役されます。彼の役はウォーバック氏同様お金持ちですが、「IT事業で財をなし市長に立候補する野心家」という現代的な設定が加わっています。
ミス・ハニガンにはキャメロン・ディアスがミュージカル映画初挑戦で参加となりました。

有名ミュージカルの映画化、しかもこれまで2度映画で披露しているわけですから、どうしても既存のアニーと比較しがちです。
しかしあえて、今回の『ANNIE/アニー』は「アニーであって、アニーじゃない」と言いたいのです。
「アニー」ファンには既存のアニーの有名曲やミュージカルシーンの解釈などで色々不満もあるでしょう。しかしオリジナルとして観ると、21世紀のミュージカル映画として意欲的な作品であることがわかります。そして何より楽しく見ている間幸せな気持ちになれる素晴らしいキューティー映画でした。

オープニングが素晴らしい!

映画冒頭、いきなり出てくる赤毛の女の子、アニー。みんなが思い描くアニーはタップダンスまで披露しますが、もう1人のアニー”B”がいて…となるこの映画は、ここで「アニーであって、アニーじゃない」ということを宣言します。
ちなみに赤毛のアニーを演じているのは、2013年のブロードウェイ・ミュージカル版でアニーを演じていたテイラー・リチャードソン。こういう遊びココロは楽しいですね。

この映画を観る前に散々サントラを聴きこんでいました。オープニングタイトルで流れる「Overture」はサントラでも1曲目に収録されていて、街の様々な音がサンプリングとして入っているのを知った時「あぁ、『ヘアスプレー(2007年版)』のオープニングをやるんだな」と想像しました。

『ヘアスプレー』のオープニングシーンでは、冒頭、俯瞰でとらえた街の様子から犬や猫の鳴き声、車の音など、街の様々な音が聞こえてきます。同時に音楽が流れてきて、次第に街の音と音楽がシンクロしていく…ということをやっていました。

『ANNIE/アニー』のオープニングでのこの予想は当たっていたのですが、映画はそれ以上のものを観せてくれました。

特筆すべきはアニーが地下鉄の駅を降りたあたりのシーンです。曲はここでサンプリングっぽい男性ボーカルが入ってきます。映画を観るまでは「これは普通にBGMとして画面に流れるんだろうな」と想像していたのですが、そのサンプリング調のボーカルが劇中では「地下鉄の駅のホームで歌っているバンドの歌として聞こえてくる音」として表現されていたところで、うわ〜これは思いつかなかった!この映画サイコーだ!!と(笑)
しかもそれを歌っているのがマーク・ホイットフィールド!彼は何枚もリーダーアルバムを出している有名ジャズ・ギターリストです。

さらにサントラにはない群衆のカウントダウンの歓声「5!4!3!2!1!」が劇中には入ってきます。それを聞く観客である我々も「さぁ、新しいアニーが始まるぞ」と気分が高揚するという仕掛けになっていて、しかもそのカウントダウンが、劇中ではジェミー・フォックス演じるウィル・スタックスが行う店頭イベント開始に熱狂する人達によるものという設定もうまい。全てが計算されていて見事なオープニングでした。

ドラマパートとミュージカルパートのつなぎ方

このオープニングの演出が象徴するように、『ANNIE/アニー』ではドラマと音の関係を巧みに操り、ドラマパートとミュージカルパートを自然に溶け合わせていきます。

アニーがスタックスの部屋に行った時に歌われる楽しい曲「I Think I’m Gonna Like It Here」。部屋の壁に映る液晶TVの環境音がそのまま曲のイントロになりミュージカルシーンがスタートします。

ミス・ハニガン役のキャメロン・ディアスと宣伝コンサルティング役のボビー・キャナベールが歌う「Easy Street」ではジャズバーらしきところが舞台。
ステージではジャズバンドが静かに音楽を奏でています。そんな中で会話をしていたキャメロン・ディアスとボビー・キャナベールの2人は突然ミュージカルとして歌い始めます。
歌が進むと、いつの間にか「Easy Street」の伴奏をステージのジャズバンドが演奏をしていることになっていて、他の客はその曲のノリに合わせて踊っていて、その中を2人は歌って踊るという風になります。ミュージカルシーンがいつの間にか、そのシーンの劇伴となりドラマとシンクロしていくという面白い展開のシーンでした。

ハイライトはミュージカルシーンではなく「歌」

ミュージカル映画では、どこからか伴奏が聞こえて突然歌いだしても、それはお約束としてドラマ上、地続きなものとして楽しめます。

しかしミュージカルではなく、ドラマの中で演奏したり歌ったりするシーンがあったときは、聞こえる音色と映像での演奏者や楽器の数が合っている方が個人的には好きです。
画面には歌う人だけなのに、どこからか演奏が聞こえてくるというより、曲と映像の調和が高まり感動します。

『ANNIE/アニー』は映像のトリックを上手く活かした「Tommorow」など感動的なミュージカルシーンがいくつも用意されていますが、ドラマでの最大のハイライトをミュージカルシーンではなく「歌」で描きました。

映画の後半に差し掛かるあたりに「Opportunity」という、シーア作曲のオリジナルソングをクヮヴェンジャネ・ウォレスが歌うシーンがあります。
このシーンだけはミュージカルとして歌うのではなく、ドラマの中でキャラクターが実際に歌うシーンとして描かれています。

スタックスがセレブパーティーでスピーチ中、ステージ上から客席にいたアニーを呼び寄せます。ステージには室内管弦楽団が待機しています。アニーは壇上に上がり、そこでスタックスに感謝の言葉を述べ、室内管弦楽団の各楽器を紹介し、静かに「Opportunity」を歌い始めます。
その歌に寄り添うように静かに演奏を始める楽団。驚くスタックス、聞き入るセレブたち…

この曲はオーケストラをバックにしたバラード調の歌です。室内管弦楽団を設定することで、映像と曲が見事にシンクロしました。
しかしこの曲には、クヮヴェンジャネ・ウォレスが歌うサビに合わせた男女のバックコーラスが入っています。
このコーラスを映像で再現しないと、せっかくの曲とのシンクロが台無しです。映像には室内管弦楽団だけで合唱を担当する人は映っていません。

さてどうしたか?

「室内管弦楽のメンバーが演奏しながら口ずさむ」というのでコーラスを映像で再現していました。

実にさりげないんだけど、曲を構成する音色を映像で逃げずにちゃんと表現してたのに感動しました。こういうのって大事です。室内管弦楽団のメンバーが口ずさむという演出アイディアも素晴らしく、涙もんでした。

そして曲が感動的に盛り上がっていく時、自らの感動の感情を押し殺すかのようなシリアスな表情で、じっとアニーを見つめるジェミー・フォックスの芝居が実に素晴らしく、このシーンの感動に拍車をかけます。

ちなみにここで指揮者を演じているのは、この映画の音楽監修をしているマシュー・ラッシュ・サリバンです。
https://www.youtube.com/watch?v=AK_VtGZRBDQ

キャメロン・ディアスの熱唱!そのトリックに注目?

注目のミス・ハニガンを演じるキャメロン・ディアスのソロシーン、1982年版アニーでキャロル・バーネットが酔いどれながら歌った「Little Girls」をアップテンポでカヴァーしています。

このシーン、酔っ払ったミス・ハニガンが、子どもが机になっていて、振り返るとやっぱりただの机だったり、電気スタンドが子どもに化けてたり…と部屋のあちこちで子どもの幻想を見ながら歌うという設定で、ワンカット風に撮られています(実際はカットが割られています)。

「子供の姿が!しかし振り返るといない」という、1カットのフレーム移動で映る対象が代わるという演出は、今どきならデジタル処理で出来るので、そういうシーンなんだと思ってみていたのですが…
子供が電気スタンドに化けているあたりに、注目してください。

棚の上に子供に化けた電気スタンドがいるのをカメラが捉え、一旦フレームから外した時、画面上部に棚から降りる子供の影が映っているのを見つけてしまいました(笑)なんと、デジタル処理ではなくライブで人と物の差し替えをやってたんですね。これは演出設計やリハーサルが大変だったと思います。メイキングが見てみたいです。
(「電気スタンドに化けた子供」は2:02あたりです)

カメオ出演多数

この映画、先にあげたアニーAの他にもいくつかカメオ出演があります。
ウィルの新製品携帯電話のモニターをやっていて、携帯が燃えてパニクっていた女性はパトリシア・クラークソン。彼女はウィル・グラック監督の作品に全作出演です。

犬のサンディが保護されていた動物愛護センターの職員役は、曲を提供している歌手のシーアです。顔を見せしないことで有名なシーアが普通に顔出しで出演しています。

そのシーアが”主題歌”を歌っている、映画中盤に出てくる『トワイライト』+「人魚姫」+「かぐや姫」っぽいトゥイーンに大人気の架空映画『MoonQuake Lake』、この劇中映画シーンを『LEGO ムービー』と手がけたフィル・ロード&クリス・ミラーの監督コンビが演出していて、アシュトン・カッチャー&ミラ・クニス、リアーナといった面々が出演しています。お遊びにしては豪華すぎるキャスト&スタッフの劇中映画です。

そしてスタックスの選挙の対抗馬である現市長と一緒にTVに映っているのはマイケル・J・フォックス。彼はパーキンソン病になり一度引退したのですが、その後声優などで活動を再開。2013年に「マイケル・J・フォックス・ショウ」というTVドラマで主演復帰しました。そのTVドラマのプロデューサーは本作のウィル・グラック監督でした。その縁でカメオ出演となったのでしょう。

アニーであって、アニーじゃないけど、やっぱりアニー

有名ミュージカルを大胆にアレンジした『アニー/ANNIE』は、歌によって頭から終わりまで観客に感動と幸せな気持ちを存分に与えてくれます。「アニーであって、アニーじゃない」新生『ANNIE/アニー』は、アニーの本質をちゃんと受け継いだ作品と言えるのかもしれません。

そうそう最後に。
まさかこの『ANNIE/アニー』の重要なキーワードが「C+Cミュージック・ファクトリー」だとは思いもよりませんでした(笑)
ミス・ハニガンはC+Cミュージック・ファクトリーの元ボーカルだったという設定。なかなか微妙なところをついてきます。
実際、ファースト・アルバムのジャケットやPVに出ている女性ボーカルとは別の影武者が歌っていることが発覚して、当時騒がれました。

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