
現地時間6月24日、米ディズニー・チャンネルにて、100本目となる記念作品『ベビーシッター・アドベンチャー』のリメイク版が放送されました。
『ベビーシッター・アドベンチャー』のオリジナルは、1987年の劇場映画です。2作品を比較してみました。
オリジナル版『ベビーシッター・アドベンチャー』は、後に『ホーム・アローン』『ハリー・ポッターと賢者の石』を撮るクリス・コロンバスの初監督作品です。ヒロインを、後に『バック・トゥ・ザ・フューチャー2、3』で主人公の恋人役を演じることになるエリザベス・シューが演じています。
お話は至ってシンプルで、恋人からデートの約束を反故にされたヒロイン、クリス(エリザベス・シュー)は渋々ベビーシッターのバイトをすることになりますが、長距離バスで家出を試みる友人からパニックの電話が来て、友人を助けるために子どもたちと共に車で夜の街に。
途中車がパンクして、親切なレッカー車のおじさんに助けられるものの、おじさんが家で奥さんの浮気現場に遭遇して発砲騒ぎの大げんかに!慌てて逃げ込んだ奥さんの浮気相手の車には車泥棒が先に乗っていて、そこから盗難車の違法販売をしている工場のアジトに連れて行かれ、そこから逃げ出すものの、追われるハメになり…というお話です。
子どもたちは、クリスに憧れている年少組の男の子とその友人のエロガキ、そしてマーベル・コミック「マイティ・ソー」の大ファンの妹の3人。
クリスを中心とした子どもたち4人が夜の街を逃げまわりつつ、クリスの恋愛模様も描いていきます。
エロガキは、プレイボーイ誌の最新号に、クリスそっくりのモデルのヌードグラビアが載っていることを男の子に話して茶化します。この「ヒロインにそっくりのモデルがプレイボーイ誌にヌードグラビアが掲載されている」という小ネタが劇中の要所要所で使われ、ストーリーの展開の重要な要素となってきます。
さらに妹が大好きな「マイティ・ソー」のネタも、後半にちゃんと感動的なシーンが用意されています。
こんな風に、色々な小ネタが配置され、それらが上手く活かされ、きれいに回収される見事な構成の映画です。ラストのエンドロール後のオチも含めて、どの登場人物にも目が行き届いています。
基本的にファミリー向けの内容ですが、子どもたちが知らない夜の怖い街の様子を描いているので、暴力シーンなどもありファミリー向けにしてはちょっと過激です。しかしヌードグラビアネタも含めてそれらがコメディのいいスパイスになっていて、ファミリー向け映画というよりキューティー映画として見るべき映画だと思います。
音楽にも注目です。冒頭ザ・クリスタルズの「キッスでダウン(Then He Kissed Me)」がかかり、クリスがドレスを着て踊りまくるシーンはキューティー映画的に素晴らしいの一言。
さらにヒロインたちが逃げ込んだ先が、黒人たちが集まっているブルース・バーの舞台で、そこではブルース・ギターで有名なアルバート・コリンズが演奏中というシーンがあります。
せっかくのライブ中だったので、子どもたちの乱入にみんな怖い顔。そそくさと退場しようとするクリスたちに、アルバートは「ブルースを歌え」と凄みます。恐る恐るクリスは今の状況を語りだし、それに合わせてアルバート・コリンズらが演奏を始め、オリジナルのブルース曲「Babysitting Blues」になっていきます。
このようにオールディーズ、ブルース、ロック、R&Bなど、60・70年代の音楽が劇中歌として使われており、この選曲は、当時劇中歌がニューウェーブ中心で若者に人気だったジョン・ヒューズの青春映画に対するクリス・コロンバスの回答とも考えられます。
さて、この名作が約30年ぶりにディズニー・チャンネル100本記念作品としてリメイクされました。
次のページではリメイク版をご紹介します。
リメイク版のヒロインはサブリナ・カーペンター(「ガール・ミーツ・ワールド」)とソフィア・カーソン(「ディセンダント」)のダブルキャストとなりました。2人が子守りをする子どもたちがそれぞれ2人と3人で計7人。オリジナル版では計4人でしたから、ほぼ倍の大所帯となります。
監督は『ジュディの夏休み大作戦』のジョン・シュルツ、脚本は『美少女探偵ナンシー・ドリュー』のティファニー・ポールセン。共に子供を扱った良質な映画を作ったスタッフです。
ディズニー・チャンネルということで、オリジナル版にあったヌードグラビアのネタや暴力シーンなどの表現がカットされるのは容易に想像がつきます。果たしてそんなことでこの作品のコンセプトである「子どもたちが知らない夜の怖い街を冒険する」ストーリーが成立するのでしょうか??
ジェニー(サブリナ・カーペンター)とローラ(ソフィア・カーソン)は共に写真家を夢見ています。几帳面で真面目なジェニー、ガサツでワイルドなローラという対象的な2人は著名な写真家の元で働くインターンシップの面接で出会います。ちょっとしたアクシデントで2人は互いの携帯を間違って持つことに。
そしてローラは面接のため乗ってきたジープの駐禁の罰金を払わないといけなくなり、そのお金のためにジェニーの携帯宛にかかってきたベビーシッターの追加バイトを受けることに。
一方、何も知らないジェニーはいつもの通りベビーシッターのバイトに。
こうして、それぞれがベビーシッターになるわけですが、対象の子どもたちがみんな個性的です。ローラが子守をするアンダーソン一家は、親に内緒でロック・コンサートに行こうとしている長男、料理研究が生きがいの次男、ローラーゲームの選手に憧れている三女。
ジェニーが子守するクーパー一家は、アンダーソン家の長男が好きで彼好みのゴスでロックな格好をしている長女と、ファッション大好きな次女。
携帯が入れ違っていること、さらにローラが勝手にベビーシッターをしていたことに気付いたジェニーは子供を連れてアンダーソン家へ。しかしアンダーソン家の長男が家を抜けだしてコンサートに向かったことから、6人は夜の街に長男を探しに行くことになります。
と、オリジナルとは違う展開で進むわけですが、要所要所でリメイクらしい展開があります。
アンダーソン家の長男も含む7人が追手から逃亡中に飛び出てしまったのはクラブの舞台。その際、足がコードにひっかかりDJの機材を止めてしまいます。ノリノリの会場が一転し、みんなは舞台を注目。DJから「盛り上げるためにラップしろ!」と言われたジェニーは、恐る恐る今の状況をラップし始めます。次第に会場も盛り上がりノリノリのジェニーが気に入らないローラは、マイクを奪ってジェニーをラップで挑発。ジェニーもラップで反撃、2人はいつしかラップバトルを展開していきます。
オリジナル版ではブルースを歌うシーンが、今回はラップ、さらにベビーシッターは2人ということでラップバトルに様変わりました。この改変のアイディアは面白かったです。
夜の冒険が終わり、親たちに気付かれないよう先回りして家に戻り、戻ってきた親たちに何事もなかったかのように、ソファーに座って報告するローラのシーン、オリジナル版とカメラアングルが全く同じでした。
さらにその後、今度は子守が終わったジェニーと彼氏が外でいちゃついているのを、子どもたちが2階の窓からひやかすシーン、こちらもオリジナル版と同じです(ただ、子どもたちが囃し立てる台詞は違いますが)。
オリジナル版の「マイティー・ソー」ネタ、ディズニーがマーベルを買収したことで「ソー」の権利はディズニーが持っていますし、『マイティー・ソー』3作目の映画も控えているので、何かしらリスペクネタとして出してくるかな?と思ったのですが、残念ながらありませんでした。
オリジナル版がヒロインを中心としたドタバタ逃亡劇で描かれるのに対し、本作では逃亡劇の中に、子どもたちそれぞれの活躍する場を設定しています。
アンダーソン家の料理好きな次男は潜入した親たちがいるパーティのデザートを考案し、ローラーゲームに憧れる三女は憧れの本物の選手たちと出会います。アンダーソン家の長男が好きなクーパー家のゴス長女は彼好みになることをやめ、彼女自身の魅力で彼を振り向かせます。そしてファッション大好きな次女はジェニーとローラのメイクを担当…と、子どもたちの多様な夢と可能性に言及しています。
5人もの個性的な子供たちと、その個々のエピソードを描写し、逃亡劇の中で登場人物たち全員の活躍と成長を描きつつ、さらにメインの2人のヒロインの恋愛、未来、成長、そして2人の友情をも描ききった構成と演出は見事というほかありません。よくこれだけの要素を100分程度できれいにまとめたものだと思います。
最初見始めた時はオリジナル版と比較していたのですが、いつの間にかそんなことは忘れてリメイク版独自の群集劇としての展開を楽しんでいました。そういう意味ではリスペクトしつつも、単にリメイクにとどまらない新しい魅力を持った『ベビーシッター・アドベンチャー』になっていたと思います。
最後に。ソフィア・カーソンが劇中で乗っていたジープのデコ、ライトの付けまつ毛がすごく可愛かったです。
