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ロイヤル・セブンティーン

ロイヤル・セブンティーン
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この映画、ウィリアム・ダグラス・ホームというイギリス人の戯曲が原作です。
その原作を元に1958年アメリカ映画として『Reluctant Debutante』というタイトルで映画化されています。


監督はジュディ・ガーランドの夫であると同時にライザ・ミネリの父であるヴィンセント・ミネリ。オリジナルではイギリスで出会う男の子がドラマーの設定です。本作はそのリメイクです。

主役のアマンダ・バインズは、子役出身のアメリカでは大人気のティーン・アイドルです。キューティー映画も多数出演しています。
アマンダは目がクリクリしてて動いていたほうが断然かわいいです。映画のポスターやDVDパッケージの写真と映画本編の顔が全然違います。この映画、ポスターとかではアマンダの魅力が伝わって来ません。実にもったいないです。

アマンダのファッションは、今っぽいガーリーなものからカジュアル、フォーマルまで実に様々で見ていて楽しいです。さらにコリン・ファースまでもが、キューティー映画お約束の着せ替えシーン1や鏡の前でロッカー気取りのおどけた演技を見せてくれます。

音楽に関しても、さりげなくこだわりがあっていいです。
お母さんがやってる結婚式のパーティーバンドの演奏にセリーヌ・ディオンの「Because You Loved Me」があったり、主人公がロンドンに着いたときの音楽がクラッシュの「London Calling」だったり、パーティーのシーンで、みんなオリノリで踊る曲がJ・ブラウンだったり、父親が昔好きだったのがリック・デンジャーでなんとなくリアルだったり2

ミュージシャンという設定の男の子役が実際に歌手でもあるオリバー・ジェイムスですからステージで歌うシーンも自然です。
しかし、オリバーは歌手のせいか口パク演技がちょっと下手。だから本人が歌っているのにもかかわらず口パクがずれていて「この歌、吹き替えか?」と思ってしまいます(笑)
ちなみに、アマンダ・バインズがオリバー・ジェイムスとはじめて出会うときの主人公の台詞が「そのギター、ギブソンね。」というマニアックなのも、歌手の娘という設定が効いてていいです。

この作品の監督、デニー・ゴードンは女性で「アリー My Love」「Sex And The City」など主にテレビ畑の人でした。この作品の次にオルセン姉妹初主演映画『ニューヨーク・ミニット』を監督しています。この映画も、色物のように見えて演出はテンポよくうまい作品でした。
あと、この監督はデジタルの使い方が実に巧みです。デジタルで何をどう処理すれば効果的か非常に理解しておられる。
イギリスのシーンでは結構お屋敷や背景をデジタル合成をしているのですが、カットの割り方、レイアウトなどの工夫でほとんど判りません。見事です。

カメラも美しく気品があって素晴らしいです。カメラマンは『ゴスフォート・パーク3』『バレエ・カンパニー』と、ロバート・アルトマン監督と一緒に仕事をしているアンドリュー・ダン。この人、望遠レンズを使った撮影が実にうまい。

キューティー映画としての物語構成は、定番で安心できます。ドタバタとしっとりしたシーン、ともにバランスよく配置されています。一つ一つのエピソードのアイディアと繋がり方がうまく構成されています。

ただ各エピソードを章に見立てて、タイトル字幕で説明しながらの進行となる展開が話の流れをさえぎるので邪魔だと思いました。この映画は寓話的であってもドラマ進行はリアルな時間軸で進行しますから、普通の時間軸の編集で問題ないと思うんですが。

物語後半、話の中心が父親であるコリン・ファースの葛藤に移ってしまうのが、ちょっとキューティー映画としてはマイナス・ポイントかなと。あくまでも主軸は主人公アマンダ・バインズであってほしいですし。

でもラストがとにかく、とにかく、とにかく(大事なことなので3回繰り返しました)素晴らしい演出で、そんな些細なことも吹っ飛びます。
実質のラストシーンとなる結婚式のパーティーシーンは素晴らしいの一言です。

(以下ネタバレあります。出来れば本編を見てから読んでください。その方が感動します。)

クライマックスにあたる結婚式パーティーシーンは、本当に素晴らしいです。
このシーン、わずか数分で、物語的に重要な3つの問題を一挙に解決します。その流れがすごくスムーズで、見せ方のアイディアが素晴らしい。ほんとうまい!
キューティー映画屈指のラストシーンです。

●キャラクター設計のうまさ
コリン・ファースの登場時に説明される「言いたいことを言おうとすると、混乱して何を言っているか自分で判らなくなる」という設定がちゃんとラストに活かされてる 。

●役者達の演技の素晴らしさ
コリン・ファースがとにかくかっこいいし、お母さん役ケリー・プレストンがステージ上から父娘を見守る演技が見事。ケリーの泣きの芝居で観客は泣かされます。

●カメラワークの美しさ
そのケリー・プレストンを写すシーンなどで、望遠レンズとゆっくりとしたフォロー・パンを巧みに使ってカメラワークでシーンをどんどん盛り上げていきます。コリンとアマンダのダンスからオリバー登場のアイディアもさることながら、カメラワークも実に見事。ダンスシーンのラストで、カメラがゆっくり上がっていきながら無数の風船が横切る画も素晴らしい。とにかくこのシーン、全てのカメラワークが完璧。

●ヴァン・モリソンの名曲「Have I Told You Lately」4を使った音楽演出の巧みさ
伴奏と歌の出だし、そしてサビの部分を、シーンの盛り上がりと台詞5にちゃんとリンクさせて使うことで、感動を倍増させる演出がなされています。

何度見ても大感動します。キューティー映画屈指の名シーンです。
まさかこの映画のラストでこんなに完璧な感動シーンを見せられるとは!と初見の時はびっくりしました。
で、何度見ても、もう展開もカット割りもわかっているのに毎回感動します(笑)

このシーン、コリンが登場した直後、その姿を見て歌うのを忘れたケリー・プレストンがステージで演奏中のバンドのピアニストに何やら話しているところをわざわざ写し、イントロ演奏中の曲「Have I Told You Lately」が歌に入るという演出があります。本当はボーカルであるケリー・プレストンが歌うはずの歌をバンドの一ピアニストが歌うんです。ケリーは母親としてステージから父娘の踊る姿を見守るだけ…その意味を考えて見るとより深く感動します。

このシーンを見ずしてキューティー映画を語るなかれ!
絶対お薦めです。

最後の最後はキューティー映画っぽくちょっと笑わせる余談をつけて終わるのですが、「みんな幸せに暮らしましたとさ」という台詞とともに描かれる、庭でみんなで食事をするカットで、アマンダ・バインズがさりげなく、イギリス滞在中にこっそり味方をしてくれていた老執事を家族と一緒の席に座らせるところがあります。
こういうさりげない優しさの描写が随所にあって、見ていて気持ちよくなる傑作キューティー映画です。

  1. 色々な服を次々試着してみせるというのは、キューティー映画のお約束です。 []
  2. 音声解説によるとコリン・ファース自身がリック好きでコリンの提案によるものだそうです。だから世代的にリアルなんですね。 []
  3. この映画の室内は『ゴスフォート・パーク』と同じ部屋を使って撮影していたとか。 []
  4. 劇中ではマット・アシェソン Matt Achesonという人が歌っています。実際の結婚式でもよく使われるスタンダードな曲で、ロッド・スチュワートやウィリー・ネルソンなど様々なアーティストがカヴァーしています。 []
  5. アマンダと踊りながら「え?と、罪滅ぼしにおみやげを…」というコリンの後ろからオリバーが現れるシーンは完璧! []