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ゾンビ映画『ウォーム・ボディーズ』は「気持ち」で見るキューティー映画

ゾンビ映画『ウォーム・ボディーズ』は「気持ち」で見るキューティー映画
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ジャンル映画と呼ばれるものがあります。ヴァンパイア、時間旅行、学園モノ…。そんなジャンル映画の定番の一つに「ゾンビ映画」というのがあります。
ジャンル映画というのは作り手も受け手もお互いのお約束となる固定観念がありますから、それを逆手にとった変化球な作品を作ると話題性が高くなります。

そしてついにゾンビ映画ミーツキューティー映画が出ました。それがこの『ウォーム・ボディーズ』です。
この映画、ゾンビファンが観るよりキューティー映画ファンが観るべき映画です。キューティー映画ファン必見の映画です。

キューティー映画で大事なのは「その時思った気持ちに従い素直に行動すること」です。
登場人物の行動を応援したり、登場人物の喜怒哀楽を共有したりするのがキューティー映画です。そのためには物語の段階や矛盾をすっ飛ばしてでも「観客が登場人物に共感し応援したくなること」を優先します。
(でもまぁ、それがあまりにも演出や脚本など技術的に未熟だと、トホホ…な作品にもなるので、感情優先だけで進めるのも紙一重なのですが)

この映画にはそのキューティー映画マインドがあります。逆にいえばSFやゾンビ映画として見ると矛盾だらけです。しかしキューティー映画ですから、そんなの気にしません。ゾンビと人間が恋しちゃって何が悪い!2人で手を取り合って(ゾンビと手を取り合うこと自体もう矛盾してますが)その暖かい気持ちが他にも伝わっていくんだ!いい話じゃないか!それのどこが悪い!ゾンビが綺麗だろうが、普通に走ろうが、しゃべろうが文句言うな!って感じです(笑)

ゾンビ映画ファンから見ると色々言いたくなるあもしれませんが、そういう矛盾や文句を突破し、見ている人を感動させるだけのパワーがこの映画にはあります。

主人公であるゾンビの”R”(ニコラス・ホルト)はゾンビらしく脳みそを喰らいます。
けど、この映画ではそのゾンビが女の子に恋をし、しかも喰らった脳みそがその子の彼氏のもので、彼氏の記憶でその女の子のことを共有出来たら…という、「脳みそを喰らう」というゾンビ映画のお約束を巧みに利用します。

登場人物は2人だけど、そのどちらかに別人格が入ることで一種の三角関係のドラマを生み出すというのは、映画は日本未公開ですが原作本は日本でも出ているステファニー・メイヤー原作のSF「ザ・ホスト」とちょっと似ています。ただ『ウォーム・ボディーズ』の場合は三角関係を中心としません。あくまでも”R”の変化のきっかけです。

キューティー映画のお約束シーンの一つに変身お化粧シーンがあります。
今までもっさりしてたヒロインが、綺麗に化粧されて服を変えたらあら不思議、大変身!というシチュエーションです。

『ウォーム・ボディーズ』にもちゃんとあります。けどゾンビ映画のスタイルですから、当然普通のシチュエーションではありません。そのひねり具合がいいです。
お化粧するのを盛り上げるために、ヒロイン”ジュリー”(テリーサ・パーマー)の友人(アナリー・ティプトン)が某有名キューティー映画の劇中歌、あまりにも有名なあの曲をBGMとしてかけようとします。

『脳みそを喰らう』『お化粧で変身する』という例で書きましたが、このようにゾンビ映画とキューティー映画、それぞれのお約束を上手く使い、笑わせて感動させるのがこの『ウォーム・ボディーズ』です。

Rは普段、ジャンボジェットの中に住み家を作っていて、そこに色々なものを収集しているという設定があります。その中にあるコレクションされたレコードと、それをプレイヤーで再生させることで発生する音楽演出が小粋で良かったです。Rはしゃべりませんから音楽の歌詞がRの心を代弁しているんですね。
見事な選曲は、これまでの映画でも抜群のセンスを見せていたジョナサン・レヴィン監督によるものと推測しますが、その中でも特にガンズ・アンド・ローゼスのバラードの名曲「ペイシェンス」を使ったシーンは、ここぞとばかりの演出で上手くはまっていました。

余談ですが、「Patience」が収録されているアルバム「G N’ R Lies」での「Patience」の次の収録曲「Use To Love Her」は「俺は彼女を殺して土に埋めた~そしたら土の中から彼女の文句が聞こえてきてうるさい~」という内容の歌詞の、明るい曲調の歌です(笑)

そして特筆すべきはヒロインの描き方です。
ゾンビ視点で進む話だと、どうしてもヒロインは受け身でお飾りな存在になりがちです。
前半はゾンビが女の子に恋をして自分のアジトに囲って世話をする話です。そのまま女の子をゾンビから見たヒロイン像にして、ゾンビがヒロインのために行動し変化していく展開でも成立します。
しかしこの映画では、人間に恋するゾンビに対して、それを受け入れ共に行動し、変化を自ら作り出していく主体性あるヒロインの行動に描写を移行していきます。そしてその2人の行動がきっかけとなり、見ている人が応援したくなる展開になっていくのです。先に書いたように、様々な苦難を突破する展開は「理屈」ではありません。「気持ち」です。ここが現代的でありキューティー映画だと言う理由です。

そしてその展開を見ながら観客は、タイトルが『ウォーム・ボディ』ではなく『ウォーム・ボディー”ズ”』と複数形になっている意図に気付くのです。