Home Review 中国の女流作家の一生を描く『黄金時代』

中国の女流作家の一生を描く『黄金時代』

中国の女流作家の一生を描く『黄金時代』
1

the-golden-era_00中国東北部の黒竜江省に生まれたシャオ・ホン(蕭紅)は幼くして母を失い、祖父の教育を受けて育つ。暴力的な父親から逃れようと何度か家出を試みては失敗。やがて文才を認められるようになり、作家シャオ・ジュン(蕭軍)と出会って惹かれていくとともに、上海の文壇で魯迅をはじめとする作家たちとも交流する。やがて日中戦争の戦火を逃れる日々のなか、シャオ・ジュンとの破局を迎え、1940年に香港へ移るが、最期のときは迫っていた…。巨匠アン・ホイが監督し、人気女優タン・ウェイ(『ラスト、コーション』『レイトオータム』)が激動の20世紀前半を生きた夭折の女性作家シャオ・ホン(1911~42)に扮した評伝ドラマの大作。中国では2012年にもフォ・ジェンチイ(霍建起)監督(『山の郵便配達』)の『蕭紅』が公開されるなど、生誕100年を経過して注目が集まっている。2014年ヴェネチア国際映画祭クロージング作品。(東京国際映画祭より)


女流監督アン・ホイ(許 鞍華)による、中国近代4大才女の1人と言われている女流作家、蕭紅(シャオ・ホン)の伝記映画です。3時間という長尺で彼女の波瀾万丈な人生を追います。

蕭紅(シャオ・ホン)は日中戦争前後、中国の左翼系文学の多くが戦争や社会階級について描いているのに対し、彼女の作品は市井の人々の日常を中心とした女性らしい独自な視点を持ったものでした。

さて、この映画はそんな彼女の31年という短い人生を描くわけですが、
映画のスタイルとしては、劇中の人物が観客に向かって当時を解説したり、ドキュメントのようにインタビューを受けているシーンを挟みながら進行します。ちょっとウォーレン・ベイティが監督・脚本・主演を兼ねた、実在した左翼系アメリカ人ジャーナリストの半生を描いた『レッズ』を思い出しました。

レッズ [Blu-ray] DVD

価格¥980

順位6,206位

出演ウォーレン・ベイティ, ダイアン・キートン, ジャック・ニコルソン, ほか

監督ウォーレン・ベイティ

発行パラマウント ホーム エンタテインメント ジャパン

発売日13.02.08

Amazonを開く

Supported by amazon Product Advertising API

レッズ 劇場公開25周年 スペシャル・コレクターズ・エディション [DVD] DVD

価格¥841

順位99,233位

出演ウォーレン・べイティ、ダイアン・キートン, エドワード・ハーマン, イエールジ・コジンスキー, ほか

監督ウォーレン・べイティ

発行Paramount

発売日08.06.20

Amazonを開く

Supported by amazon Product Advertising API

しかし『レッズ』とは異なり、とにかく非常に不親切な映画です。彼女の経歴に関して予備知識なしで見ると何がなんだか分かりません。
劇中に彼女が作家として成功していく過程も、代表作を仕上げていくメイキングも描写されません。劇中で彼女はいつの間にか作家で、いつの間にか評価されています。そして周辺の人達もいつの間にか現れ、いつの間にか消えています。
さらに時おりシーンの時系列が意図的にシャッフルされる時があります。それがさらに混乱を招きます。

映画は蕭紅(シャオ・ホン)と長年連れ添った蕭軍(シャオ・ジュン)の関係を中心に描かれます。1人の女性としての強烈な生き様を追い続けるわけですが、先に書いたように作家としての彼女ではなく、徹底的に1人の女性としてその行動を赤裸々に描いています。

しかも彼女主観では描かず客観的な描写に徹しているのですが、その描写の1つ1つが、彼女が感じていたであろう感覚を映像化しているように思えました。だからこそ、多少不親切な映画の作りでも、彼女の功績はさほど描かれず、日々の中で色々な人が彼女の前に現れては消えていき、蕭軍(シャオ・ジュン)や恩人の魯迅など、彼女にとって大事な人達の描写だけはしっかり描かれているのではないかと。
シーンの唐突なシャッフル編集も、彼女の感覚的なフラッシュバックと考えると納得がいきます。

しかし意欲的な作品構成は、長時間、観客の興味や緊張感を維持するには厳しいものでした。客を選ぶ作品だと思います。

そして作家としてもの書きをしているシーンもありますがさほど重要ではなく、どちらかというと食事シーンが印象に残りました。彼女は事あるごとに食べるという行為をがむしゃらに行います。お上品ではなく貪欲に食べ、すすり、飲み干します。子供の頃から最後まで「食べる」という行為が重視されています。

もう1つ印象に残ったのが後ろ姿です。正面から撮った時の彼女は非常に強い意志を持った女性として描かれています。しかし後ろ姿を描写した時は、とても危うい小さな存在に写ります。演じたタン・ウェイの身長は170cmだそうですが、映画ではさほど大きく見えません。

そのタン・ウェイ(湯唯)ですが、実質的なデビュー作の役のせいで中国で長い間バッシングにあってきました。そんな彼女は2013年『北京ロマンinシアトル(イベント上映1回だけで未だソフト化もVOD化もされていません…)』という中国で大ヒットしたキューティー映画でヒロインを演じています。最近、韓国人監督と結婚し、活躍の場もハリウッドに移そうとしています。

そんな彼女が、当時の中国左翼系文学の流れに乗らず「政治はよくわからないから」と言って我が道を進み、結果的に中国の代表的な女流作家となった蕭紅(シャオ・ホン)を熱演しました。なかなか色んな事を邪推してしまいます。

今回の上映環境に関してですが、音の調整に疑問が。サラウンドの音響演出がなされているのですが、どうもそれが自然に聞こえてきませんでした(劇場ほぼ中央に座っての感想)。
また字幕の日本語には主語が省略されており、台詞が誰のことを話しているのか、ちょっとわかりにくいと思います。同時に表示される英語字幕には主語が記されているので、誰のことか英語字幕で分かることも多々ありました。