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ニコラス・スパークス映画総決算『きみがくれた物語』

ニコラス・スパークス映画総決算『きみがくれた物語』
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ノースカロライナの小さな海沿いの町で出会い、運命的な恋に落ちたトラヴィス(ベンジャミン・ウォーカー)とギャビー(テリーサ・パーマー)。ふたりは永遠の愛を誓い合うが、交通事故によってギャビーが昏睡状態になってしまう。目を覚まさないギャビーを前に「最愛の人のためにどこまでできるのか」と何度も自問するトラヴィス。そんな日々のなか、トラヴィスはある選択を迫られることになる―

監督:ロス・カッツ
脚本:ブライアン・サイプ
撮影:アラー・キビロ
出演:ベンジャミン・ウォーカー、テリーサ・パーマー、マギー・グレイス、アレクサンドラ・ダダリオ、トム・ウィルキンソン、トム・ウェリングほか
原題:The Choice/2016年/アメリカ

「ニコラス・スパークス原作映画」としての『きみがくれた物語』

恋愛小説の人気作家、ニコラス・スパークスの原作を映画化は、本作『きみがくれた物語』で11作目となります。

メッセージ・イン・ア・ボトル(1999)
ウォーク・トゥ・リメンバー(2002)
きみに読む物語(2004)
最後の初恋(2008)
親愛なるきみへ(2010)
ラスト・ソング(2010)
一枚のめぐり逢い(2012)
セイフ ヘイヴン(2013)
かけがえのない人(2014)
ロンゲスト・ライド(2015)

その作品たちはキューティー映画の中でも「ニコラス・スパークス原作映画」と呼んでいいくらい、1ジャンルを形成しています。

共通する特徴は、サスペンスのようなタッチで恋愛関係にある男女2人の未来・過去・今を同時並行に描くこと。「何があったんだろう?」「どうなるんだろう?」という観客の興味を引っ張っていきます。これが実に巧みです。
そして登場人物の主に男性側ですが、劇中で描かれる相手への想いの誠実さと繊細さ。ここに観客は憧れをもって感動します。
そして舞台が「海辺の家」(笑)

美しい自然を描写しつつ、長い時間を経た恋愛模様を描くのが「ニコラス・スパークス映画」とすれば、本作『きみがくれた物語』はそれを正統に引き継いでいる作品といえます。

原作邦題は「きみと歩く道」です。

きみと歩く道 (小学館文庫)

きみと歩く道 (小学館文庫)書籍

価格¥ 913

作者ニコラス スパークス

クリエーターNicholas Sparks, 雨沢 泰

発行小学館

発売日16.08.05

カテゴリー文庫

ページ数429

ISBN4094063285

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映画では、ベテランカメラマン、アラー・キビロ(『一枚のめぐり逢い』)による雄大な自然を大きく美しく、そしてその中での人物たちをロングショットや広角を多用して捉えたカメラが見どころです。実に大画面映えする美しい画になっています。
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ヒロイン、ギャビー役のテリーサ・パーマーと相手役トラヴィス役のベンジャミン・ウォーカーは、共にケンカしながら惹かれ合う仲というキャラクターを軽妙な掛け合いで好演。『ウォーム・ボディーズ』などこれまでのテリーサ・パーマーはどちらかというと受け身のキャラクターを演じることが多かったのですが、本作では自己主張し積極的に行動するヒロインを演じています。
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ベンジャミン・ウォーカーも女性の扱いに慣れていながら真剣な恋が出来ないひねくれ者という設定ですが、悪(ワル)でも過去に強烈なトラウマがあるわけでもなく、さりとて優しいだけもない…あくまでも平均的な男性像の中で主人公としてキャラクターを立たせないといけないわけですから、これはなかなか難しい役だったと思います。
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トラヴィスの元カノモニカとして登場する、注目の若手女優アレクサンドラ・ダダリオがさほど物語に関わらず、非常に中途半端でもったいない限りです。トラヴィスの妹ステフ役マギー・グレイスには悪いのですが、いっそ元カノ設定をなくしてアレクサンドラ・ダダリオが妹役でも良かったのではないかと思いました。
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物語全体にも言えるのですが、あまりに多くの要素を礼儀正しく配置しすぎて結果的に中庸なものになってしまっています。登場人物が多い割には設定や描写がどれもサラッとしていて、魅力的な役者陣を活かしきれていませんでした。内容的にニコラス・スパークス原作映画としては過去の謎やサスペンス要素が薄い分、もっと思い切って整理してメリハリを付けたほうがよかったかもしれません。

ニコラス・スパークス・プロダクション最後の作品

これまでニコラス・スパークスは映画に対して原作者の立場で関わってきましたが、2012年に自らの映画企画・製作会社ニコラス・スパークス・プロダクションを立ち上げます。
その第1作目は『セイフ ヘイブン』でした。その後『かけがえのない人』『ロンゲスト・ライド』は他社による映画化で、今まで同様原作者として関わっています。そして本作はニコラス・スパークス・プロダクションの2作目の映画となります。

そしてニコラス・スパークス・プロダクションの最後の作品となってしまいました。

ニコラス・スパークス・プロダクションは本作を製作後2016年に閉鎖しました。やはり作家と製作者の両立は難しかったのでしょうか。彼は今後、再び原作者として自著の映像化に関わる予定です。そして現在、製作総指揮として参加し準備中の企画が『きみに読む物語』のTVシリーズ。
近年のキューティー映画の流れから考えると、今後彼の原作の映像化は映画からTVシリーズなどにメディアが移ると予想します。

そういう意味でも『きみがくれた物語』はニコラス・スパークス原作映画の節目の作品といえます。

ニコラス・スパークス原作映画の集大成?

さて、この『きみがくれた物語』を観ていくと、ふとこの映画にはある仕掛けが散りばめられているのでは?と思うところが出てきます。

病院にいる長年連れ添った老夫婦のことが語られるシーンがあります(その老夫婦が退院する描写もあります)。あくまで会話の中に出てくるもので本編の内容には直接関係ありません。しかしこれって『きみに読む物語』の2人のことじゃないですか?

そう考えると、この『きみにくれた物語』は過去のニコラス・スパークス原作映画へのオマージュにあふれているのではないかと。
その視点で観ると、シチュエーションやキャラクター、小物や建物など、この映画を作っているさまざまな要素がそれっぽく見えてきます。

例えば台所で2人が親密になるのは『最後の初恋』?(ギャビーは『最後の初恋』のダイアン・レイン演じるヒロイン同様サラダを混ぜてますし)

トラヴィスとギャビーが突然大雨に降られてしまうシーン。このシチュエーションは『かけがえのない人』『きみに読む物語』にありました。

トラヴィスの庭にあるイスは『ラスト・ソング』でウミガメの卵を守ってたイス?

そして2人がたどり着く教会のシーンは『ウォーク・トゥ・リメンバー』?これはちょっと無理やりですか?他の映画であったような…

主人公たちが使う海辺にあるダイナーは『セイフ ヘイブン』に出てきたお店っぽいですし、『ロンゲスト・ライド』『一枚のめぐり逢い』『メッセージ・イン・ア・ボトル』などに該当するものも劇中のどこかにありそうです。

ニコラス・スパークス原作映画は、同じような舞台やシチュエーションがよく描かれています。そう考えると「いつものニコラス・スパークス原作映画じゃないか」とも考えられるのですが、それにしては唐突にスプーンを見せる描写があったり、ギャビーの住む家に飾ってある写真を妙に映してみたり、1本の映画にしては何気に多い場面転換(舞台設定)も、そのためなんじゃないか…と、なんだかこの映画のあらゆるところに、こっそりと宝探しのような仕掛けがあるように思えてきます。

ぜひ、ニコラス・スパークス原作映画に詳しい人は、この視点で映画の中にある過去の作品との共通点を探してみてください(そして当ページのコメントで教えて下さい!)
そういう推察をするのも面白いと思いますし、そのためにニコラス・スパークス原作映画を見直すことで、過去の作品群を再評価するきっかけにもなると思います。

最後に。
ネタバレになるので詳細は書きませんが、本作はニコラス・スパークス原作映画11作品中、最も幸せなエンディングを迎える作品になっています。それがどういう意味かは映画を最後まで観れば気づくと思います。

そういう意味でも『きみがくれた物語』はニコラス・スパークス映画の集大成とも言えるものになっています。