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第30回東京国際映画祭:スヴェタ

第30回東京国際映画祭:スヴェタ
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カザフスタンのろうあ者たちが勤務する裁縫工場で働くスヴェタは、不況で経営が厳しいことから突然リストラの対象とされてしまう。家のローンに苦しむ彼女はリストラとローンから逃れるべく恐ろしい行動に出る…

Sveta

スタッフ

監督/脚本:ジャンナ・イサバエヴァ
撮影監督:ミハイル・ブリンストッフ

キャスト

ラウラ・コロリョヴァ、ロマン・リスツォフ、ナターリャ・コレスニコヴァ、アリム・メンディバェフ、マラット・アビシェフ、アリョーナ・ウグリモヴァ、ドミトリー・リャザーノフ、ヴァルワーラ・マスャギナ

悪女が主人公

登場人物のほとんどがろうあ者というドラマです。綺麗事ではない生々しく、厳しい生き方が描かれます。

主人公のスヴェタはろうあ者の夫と共働き。小さな子供が2人います。スヴェタは両親がいるにも関わらず施設に入れられ、そこから苦労して大学を出て、現在の裁縫工場でのリーダーという地位を得ています。アパートのローンを払いながら何とか生活していますが、ローンの返済が滞っているため銀行から差し押さえの通告が来ています。

折しも不況の影響で工場は規模の縮小のため人員削減を余儀なくされます。
大卒で共働き、そしてアパートを所有。スヴェタは周囲の人たちの中では恵まれています。それは彼女の努力の結晶であり全てです。しかしそれが逆に仇となり、リストラの対象となってしまいます。
工場長いわく、彼女がリストラとなる理由は「リストラされても共働きなので生活できなくなることはないだろう。それであればシングルマザーで苦労している同僚の方を残したい」という、社員全員に対する温情からでした。

スヴェタは解雇が納得いきません。彼女の怒りは、スヴェタの代わりにリーダーとなったシングルマザーの同僚に向けられます。帰宅途中の彼女を待ち伏せして石で頭を殴打して逃げます。

シングルマザーの同僚はこの事件のせいで寝たきりとなってしまいます。スヴェタはまんまと代わりに工場勤務に復帰しますが、彼女の身勝手な行動はこれで終わりません。まだまだ苦しいローン返済のため、スヴェタを嫌っている夫の祖母を毒殺し保険金をせしめようと夫に提案します。常識人で優しい夫はスヴェタのこの提案に呆れ返ります。

という感じで、映画はスヴェタの自己中心的な悪女としての行動が描かれていきます。それはカザフスタンの厳しいろうあ者の生活の実態であり、一方で生き抜くために非情となるヒロインのドラマでした。

アパートという「自分の場所」を保持することに対して強迫観念的なスヴェタの考えや行動は、劇中で語られる彼女が過ごした施設での過酷な境遇によるもののようです。そして、そんな彼女の態度や考え方は、後半に登場する、スヴェタが殴打した同僚の小さな娘の扱いを巡る展開に大きく関わってきます。

謎の音、稚拙な技術

映画が描こうとしていることは、とてもよくわかりますし、その着眼点も面白いです。しかし残念ながら、技術が伴っていませんでした。
まず編集。とにかく無駄が多い。ドキュメントタッチで長回しをするのはわかりますし、台詞がないからこそ、無表情で何を考えているかわからないスヴェタを長くカメラで捉え、観客に考えさせるという意図もわかります。わかるのですが、それを表現するには無意味な長回しが多く集中力をそがれます。「ドキュメントタッチ」だからこそ、その意図を明確にする編集テクニックが必要です。この映画ではその編集が上手くない印象でした。

そして「音」
この映画ではろうあ者が中心ですから台詞がありません。また劇伴もほとんどありません。環境音(効果音)が重要となります。
時々スヴェタ1人のショットの時、「ブフー、ブフー…」と鼻息のような大きな音が全体を占める時があります。しかしスヴェタの動作、例えば鼻の穴が膨らんだりしぼんだりする、肩が上下するなどがないので、スヴェタの鼻息には聞こえません。カメラマン自身の鼻息?とも取れる、この「ブフー、ブフー…」が非常に気になりました。

スヴェタ1人がキッチンにいるカットがあります。長回しで何かアクションがあるわけでもありません。その時初めてこの「ブフー、ブフー…」が聞こえました。てっきりカメラの反対側に男性(スヴェタの夫)がいて、彼の寝息が聞こえているんだと思っていました。結局そのカットはスヴェタ1人を無意味に映し続けているだけのカットだったのですが。

録音技術が稚拙かというと、そうとも思えません。少なくとも他のカットでは整音ができていますし、スヴェタのアップの時に常に「ブフー、ブフー…」が聞こえているわけでもありません。あの音の意図が本当に謎でした。