Home Review とにかく上質!とにかく楽しい!『シーズ・ファニー・ザット・ウェイ』

とにかく上質!とにかく楽しい!『シーズ・ファニー・ザット・ウェイ』

とにかく上質!とにかく楽しい!『シーズ・ファニー・ザット・ウェイ』
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shes-funny-that-way_00新進のハリウッドスターが、記者からインタビューを受けている。高級コールガールを商売にしていたことを恥ずかしげもなく振り返り、そこから彼女のキャリアのきっかけを作った舞台演出家を巡る爆笑の物語が語られていく…。本格的な劇場用長編としては『ブロンドと棺の謎』(01)以来、およそ13年ぶりとなるピーター・ボグダノヴィッチによる新作は、往年のスクリューボール・コメディにオマージュを捧げた文句なく楽しい傑作である。当人たちの意図せぬところで繋がっていく人間関係が笑いを誘う脚本が秀逸であり、転がるように進行する物語を淀みなく流れに乗せ、90分にまとめるボグダノヴィッチの熟練の技が冴えて素晴らしい。これぞ洗練の極みであり、ボグダノヴィッチ75歳にして新たな黄金期の到来を期待させてしまうほどである。オーウェン・ウィルソンやイモージェン・プーツ、脇を固めるジェニファー・アニストンやリス・エヴァンスなどのキャスティングも完璧。映画への愛が溢れ出る必見の1作である。(東京国際映画祭より)


監督・脚本:ピーター・ボグダノヴィッチ
出演:オーウェン・ウィルソン、キャスリン・ハーン、イモージェン・プーツ、ジェニファー・アニストン、ウィル・フォーテ、リス・エヴァンス
原題:She’s Funny That Way、公開年:2014年、製作国:アメリカ

巨匠ピーター・ボグダノヴィッチ監督(御年75歳!)の13年ぶりの最新作が東京にやってきました。

本作の魅力は、多数の登場人物がいるなかで複雑に絡んでいくストーリーを約90分にまとめあげた監督の熟練した手腕、及びその脚本をイキイキと演じた俳優陣の技量にあります。

ブロードウェイでの新作舞台のキャスティング現場を舞台にしたドタバタ・ラブコメディで、主演は『幸せの始まりは』『ミッドナイト・イン・パリ』などキューティー映画ではおなじみのオーウェン・ウィルソン。ヒロインの元コールガールの映画スター役を『ジェーン・エア』『ニード・フォー・スピード』などに出演している新星イモージェン・ブーツ。
脇には神経過敏なセラピスト役としてジェニファー・アニストン(彼女の役は最高です)など、芸達者なメンバーが出演しています。

一夜を共にしたコールガールと舞台演出家が、コールガールを主役にした新作オーディションでバッタリ再会、慌てふためく二人に加えて、女好きな主演俳優に主演女優の演出家の妻、脚本家、脚本家の恋人であるセラピスト、コールガールのことを忘れられない判事に脚本家の父である老探偵…などなど、多くの人物が入り乱れてオーディションは大混乱!!

ボグダノヴィッチ監督は以前バーブラ・ストライサンド主演で『おかしなおかしな大追跡』という、これまた何人もの人間が入り乱れるスクリューボール・コメディを撮っているので、本作はその流れを汲んだ作品だと言えると思います。

綿密に構成された脚本も素晴らしく、まるで舞台劇のようなセリフの応酬が繰り広げられ、熟練の役者たちが早口でまくしたてる姿は圧巻の一言です。セリフ回しひとつをとっても笑いを誘われます。

それぞれ秘密を抱え、思惑のある登場人物たちがラストには全員劇場に大集合し、畳み掛けるような口論と乱闘(笑)で、正直「これ、あとちょっとで終わんのかな?(笑)」と思いましたが、そんな心配はご無用。見事に大団円を迎えます。

このあたりの、円熟した演出、それに応える俳優陣たちの素晴らしい演技。職人技って、こういうことを言うんだなと感嘆してしまいました。

そして、この作品から漂ってくるのは、ボグダノヴィッチ監督自身の映画愛がほとばしる、監督から映画への愛情。それがこの作品をさらに魅力的なものにしています。

ピーター・ボグダノヴィッチ監督は1939年生まれ。1950年代を代表する演技指導者ステア・アドラーのもとで演技を学び俳優として活躍したあと、1968年に監督デビューを果たしました。

監督が駆け出しの新人だった50年代はハリウッド映画の黄金時代。多くの有名監督が銀幕の「スタア」と呼ばれる俳優を起用し、MGMを筆頭に夢いっぱいのミュージカル映画を多く製作してきた時代です。
現在でも名作として有名な『雨に唄えば』『オズの魔法使い』などが生み出されたのもこの時代。ボグダノヴィッチ監督は「映画」が「銀幕」、「俳優」が「スタア」と呼ばれていた頃の映画をとても愛しているんだなというのがヒシヒシと伝わってきます。

劇中の台詞で登場する俳優の名は、クラーク・ゲイブル、ケイリー・グラント、フレッド・アステア&ジンジャー・ロジャース、スペンサー・トレイシー&キャサリン・ヘプバーンなどの黄金時代のレジェンドたち。
「人生を変えてくれる人は、クラーク・ゲイブルのようなダンディなおじさまか、ケイリー・グラントのようなキラキラした男性だと思ってた。」
といった、映画ファンならニヤリとする台詞の数々が出てきます。

過ぎ去った古き良き時代に想いを馳せながらも、映画への愛にあふれた作品です。
でも、そんな小難しいことなんてこれっぽっちも考えずに、見た人誰しもがハッピーな気持ちになれる、近年まれに見る上質なキューティー映画だと思います。
https://youtu.be/_zWWOa9L0w0