Home Review 自分を変えるために自分で行動する素晴らしい寓話『ペネロピ』

自分を変えるために自分で行動する素晴らしい寓話『ペネロピ』

自分を変えるために自分で行動する素晴らしい寓話『ペネロピ』
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リース・ウィザースプーンの企画・製作会社「type A films」による作品です。完成してから公開するまで1年近くかかりました。

「呪いによって豚鼻で生まれた女の子」というファンタジーな内容なんですが、立派に1人の女性の自立映画であり、恋愛映画であり、人は外見ではないというテーマの普遍的な内容を持った素晴らしい寓話です。ぜひ多くの人に見てもらいたい映画です。


誰かを頼って自分を変えようとしても、それは「自分勝手な自己実現」です。
誰かに褒めてほしいから何かを成し遂げても、それは「自意識過剰な自己評価」です。
ペネロピは誰かに頼ったりしません。誰かのために何かしたりしていません。全て自分を変えるために自ら行動します。その結果、ペネロピの周りの人々も自然と自分を見つめ直し、変わっていくことになります。最終的に物語に悪人はいなくなります。

ペネロピが屋敷から出てはじめて外の世界を見るシーンは、音楽、映像処理の演出が素晴らしくマッチングしていて感動的です。
門を開くと広がる新しい世界…というのはこの手のシーンの定番ですから、こちらもある程度どんな画面が出てくるかは予想済みです。それでもなおこのシーンが予想を裏切って感動的なのは、ペネロピの心象風景に合わせて、はじめて見る街の情景をリアルに映すのではなく、デジタル処理で迫り来るオブジェとして、さながら飛び出す絵本のように表現しているからなんです。だからペネロピの気持ちと同様、観客も「うわぁ~!」という感じで街の情景にびっくりしながら観る体験が出来るんです。3D映画じゃないのに迫ってくる感じがとても素晴らしいです。

ペネロピがホテルの部屋をとって、そこから街を眺めるシーンでも別の見せ方ですが、同じ演出論でやってます。

そのペネロピを演じるクリスティーナ・リッチの大きな目の演技が素晴らしくいいです。
大きな目がクルクルと色々なことを訴えかけるので豚鼻のペネロピが全然不自然に見えないし、むしろ豚鼻のペネロピが愛くるしく見えてきます。
中盤、ペネロピはマフラーで鼻を隠したままですが、マフラーで首の動きが制限されている分、妙に目の演技や行動がかわいいんです。

途中、リース・ウィザースプーン演じるバイク便のおネエちゃんにベスパに乗せてもらって街を走りまわるシーンがあります。普通ならペネロピから見た街の風景を描写しますがここでは一切しません。後ろに乗せてもらってキョロキョロ周りを見回すペネロピのアップを映し続けます。撮影の技術的な制約もあったのでしょうが、ペネロピを映し続けることでこの映画らしさが出てました。結果的にこのショットは正解だったと思います。

ちなみに、プロデューサーでもあるリース・ウィザースプーン、ペネロピの友人役なんですが、いまひとつ劇中で存在を活かしきれず、扱いも中途半端でもったいないキャラクターでした。

ペネロピの相手役、マックスを演じるジェームズ・マカヴォイのイケメンダメ男ぶり、ペネロピへの気持ちが入っていく理由などもちゃんと劇中で描かれてて、単にペネロペの恋愛相手ではなく、一人の人間としての存在感があってよかったです。

この映画、上品なユーモアで全編を包みつつ、適度にちょっとした感動シーンで繋いでくるのがもう…
そのタイミングが卑怯なくらい小粋でうまいんですよ(笑)後半の構成はちょっと説明的なんですが、観客の気持ちが入り込む演出が多いので気になりません。

相手役のマックスがペネロピと初めて出会うシーン、ピアノを弾くマックスの手のアップにスッとペネロピの手が入ってきて…という演出はうまいなぁ、とうなりましたし、お父さんのペネロピへの愛情もユーモラスだけどグッときますし1、ラストのペネロピとマックスの再会&キスシーンをあえて素顔のペネロピにしない2ところなど実に素晴らしい演出です。

さらに感動したのがラストのラスト、幸せなペネロピとマックスを遠くから写真に収めようとしてやめる、豚鼻のペネロピをスクープしようとしていた新聞記者レモンで映画を締めるところです。このラストを見たとき、この映画の裏主役がレモンで、レモンの見た目がこの映画のテーマにシンクロしてるんじゃないかと考えました。


レモンって、見た目はアイパッチで小人です。そのレモンがペネロピを追っていくうちに自分自身の行為に疑問を覚え、反省し、最後はペネロピを見守るいい人になっていきます。と同時にレモンが後半、とてもかっこよく誠実でいい人に見えてきます。豚鼻のペネロピと同じです。見た目ではなくその行動、気持ちの誠実さがその人自身を表して輝かせるのです。

  1. ハロウィンで子供たちが豚のお面で尋ねてきて、それを見てお父さんが優しく喜ぶシーン、ここは泣けます。 []
  2. 豚鼻の呪いが解けたペネロピは普通の顔なのですが、ハロウィンで豚鼻マスクをつけています。そのペネロピにマックスはキスをするのですから、ペネロピの顔でないところにちゃんと惚れているという表現になってて感動するんですわ。小道具の使い方がうまいです。 []