Home Review 現代を舞台にしても古典要素をそのまま上手に活かした『美少女探偵ナンシー・ドリュー』

現代を舞台にしても古典要素をそのまま上手に活かした『美少女探偵ナンシー・ドリュー』

現代を舞台にしても古典要素をそのまま上手に活かした『美少女探偵ナンシー・ドリュー』
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原作は第1作が1930年に発表されて以来、現在も新作が発表されている長期シリーズです。殺人などの大きな事件ではなく、学園での盗難や紛失物の発見などをナンシーが解決する話が多く、かわいらしい探偵ものです。現在まで170巻以上あるとか。
日本ではずっと「少女探偵ナンシー・ドルー」「少女探偵ナンシー」と表記されてきました。映画もこの伝統に則った表記にすると思っていたのですが、英語読みに従いましたね。日本での伝統的な表記にあえて沿ったほうがイキだったと思います。邦題についている『美少女探偵』の”美”って必要ですかね?


原作者のキャロリン・キーンはこのシリーズを書く際の共通のペンネームです。エドワード・ストラッテメイヤーという人が「キャロリン・キーン」というペンネームを使い「ナンシー・ドルー」を発表したのですが、その直後に亡くなってしまったので、その後も別の作家チームがこのペンネームを使って発表しています。

アメリカでは公開時、『オーシャンズ13』『ファンタスティック4』『パイレーツ・オブ・カリビアン』が並ぶ中、初登場7位でにランクインしてヒットしました。
監督は『キルスティン・ダンストの大統領に気をつけろ!』でキューティー映画のフォーマットを使って、ウォーターゲート事件を面白おかしく描いたアンドリュー・フレミング。
この作品でも、なかなか凝った仕掛けで伝統的な原作の映画化に挑んでいます。

劇中の舞台は現代のロサンゼルスです。しかし主人公のナンシー・ドリューのファッションやたたずまいは、わざと古典原作のままのオールディーズのテイストにしました。そうすることで古風な格好のナンシーは現代人である周囲から浮きます。この違和感で主人公としての絶対的な存在感を演出しています。ナンシーのクラシックなファッションは、『スパイダーマン』『スーパーマン』などのスーパーヒーロのコスチュームと同じになります。

でもナンシーの衣装はただのコスプレではありません。劇中、ナンシーがなぜ、わざと古風なファッションをするのかという理由がナンシーの口から語られますが1、その設定がナンシーのキャラクター設定を補足するものになっていました。実に見事な設定です。

さらにこの古風なファッションのギャップがロサンゼルスの学校でナンシーがいじめられる原因になるなど、ちゃんと話に活かされていたり、さらにナンシーの古いファッションが、話が進むにつれ周りから注目を受けたりと、実に巧みに古いファッションの設定が活かされています。

そのナンシーのファッションはシーンごとにコロコロとかわるのですが、どれもかわいい色とトラディショナルなデザインで大注目です。

ジュリア・ロバーツの姪という説明はもういらないくらい、主演のナンシーを演じたエマ・ロバーツの凛とした演技力が光ります。『アクアマリン』でのおどおどした引っ込み思案のキャラクターとは違い、ハキハキした、ちょっと現代とずれた優等生を熱演。エマの体は年齢の割に華奢で小さいので、ロサンゼルスの同年齢の女子に比べて幼く見えることが、よりナンシーというキャラクターを特徴つけたと思います。

ナンシーに恋する、12歳のデブッチョな男の子を演じたジョシュ・フリッターのコメディアンぶりが面白いです。
DVDの特典映像で若い俳優たちの私物のi-podの中身を教えるコーナーがあったのですが、ジョシュのi-podがレッド・ツェッペリン、クイーン、エリック・クラプトンとクラシック・ロックだらけで笑いました。年齢の割に渋すぎ(笑)

ナンシーたちが映画の撮影所に来るシーンがあります。
ナンシーは古風な衣装だから時代物のエキストラと間違われて、現場に連れて行かれるてしまいます(ここでもクラシカルな衣装の設定が活かされてます)。
その撮影現場にいたスターはブルース・ウィルス2。ブルースは刑事役で、捕まえた犯人に「おまえには黙秘する権利がある…」という、刑事物でよく聞くお約束の台詞を言います。そこに割って入るナンシー。
「この映画は50年代という設定でしょ?ミランダ・ルールが適用されたのは66年からよ。」
と、ドラマの時代考証の不備を指摘します。

アメリカの刑事物でよく聞く、被告に権利の読み上げを行うことを「ミランダ・ルール(ミランダ警告)3」と言うんですね。勉強になりました。

有名原作に対して、そのままではなく、新しい設定を使いつつ、ちゃんと原作へのリスペクトも忘れない、実に巧みな佳作だと思います。

  1. 亡くなった母の残した服の型紙を使って自分で作っている、という設定です。 []
  2. カメオ出演です。 []
  3. 1966年、婦女暴行と誘拐の容疑で逮捕されたエルネスト・ミランダが、事前に黙秘権や弁護士を呼ぶ権利があることを知らされていなかったため連邦最高裁で無罪となりました。それ以後、逮捕時に権利を言い渡すことが義務になっています。 []