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ラブソングができるまで

ラブソングができるまで
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キューティー映画の代表俳優、ヒュー・グラントとドリュー・バリモアの初共演作品です。
監督・脚本は『トゥー・ウィークス・ノーティス』の監督・脚本、『デンジャラス・ビューティ』の脚本など、テーマが面白く構成が巧みなキューティー映画を作るマーク・ローレンス。
しかもネタは80年代音楽と曲作りにまつわるドラマ… 個人的に好きな要素満載です。日本公開を心待ちしていました。

ただちょっと不安だったのがマーク・ローレンスの演出。この人の監督作品は、脚本家出身らしくアイディアはいいのに演出は単調で今ひとつという印象だったのですが、それがどうしたのでしょう?この作品での演出は実にお見事。テンポよくメリハリもあってハートフル。見事でした。

さらに不安だった邦題も実に見事なタイトルがつきました。
最近のキューティー映画は邦題が散々なのですが、この映画の邦題「ラブソングができるまで」は原題「Music And Lyrics」よりずっと素晴らしいと思います。

映画は80年代に大ヒットを飛ばしたという設定の架空バンド「Pop」のPVでスタートです。
このPV、デュラン・デュラン、ワム、ホール&オーツあたりが元ネタですね。さらにカーズ、チープ・トリックなんかも連想させます。とにかく80年代のPVを知ってる人なら、このPVを見て懐かしく楽しくてしょうがないはず。

さらに台詞に出てくる80年代ポップスターの名前にニヤニヤ。
ステファニーとか、デビー・ギブソンとか、フランキー・ゴーズ・トゥ・ハリウッドだとか、ドリューのお姉さんがヒューに始めて会うシーンではバックで小さくリマールの「ネヴァー・エンディング・ストーリー」がかかってるし。

見るまでは邦題が示すように、ヒューとドリューがひとつの曲を作っていく過程で、お互いの仲が深まったり対立したり和解したりしていくストーリーなのかな?と思っていたのですが、曲は比較的スムーズに中盤あたりで出来上がってしまいます。

むしろ、そこからの展開がこの映画の主題なんですね。構成が巧みです。
ヒューの方は過去を自虐的に受け入れ、未来に期待していません。
一方ドリューは過去にこだわり、今を受け入れられません。
そんな2人が曲を作っていく過程で自分の過去をさらけ出し、弱さを見せ、お互いに相手を受け入れていきます。

結果、出来た曲は2人にとってかけがえのないものになった、と。
テーマ曲でもある「Way Back Into Love」がここで完成します。

この曲、実にいいんですよ。本編のドラマに応えるようにメロディーと詞に力があります。
この曲の完成度の高さがこの作品に大きく寄与しています。
しかし、この曲の持つ本来の力を映像的に見せ付けられるのはクライマックスまで待たなければいけません。

曲が完成したことで、2人はそれぞれ未来に期待し今を受け入れます。
ドリューはヒューの過去に自信を与え、ヒューはドリューに過去への決別の手伝いをします。
ちなみに、ドリューがヒューに自信を与える遊園地の余興のシーン、マネージャーさんがドリューに感謝する描写がさりげないけど、とても優しくて素晴らしいです。

しかしその曲がアイドルのもとで売れ線用に今風のアレンジが施され(アレンジの下品さが素晴らしくいい(笑))、曲の持つ大事なものが失われてしまったとドリューは感じます。ヒューはビジネスと割り切りそれを受け入れようとします。
さぁ、どうなるのか?というお話です。

音楽を担当したアダム・シュレシンジャーはトム・ハンクスがマネージャー役を、そしてバンドメンバーの彼女役をリヴ・タイラーが演じた『すべてをあなたに』の音楽も担当しています。「ファウンテインズ・オブ・ウェイン」というパワーポップバンドのメンバーです。このバンドの曲がまた甘酸っぱくて適度に歌メロガがポップでいいんですよね?。懐かしさと優しさと甘さを兼ね備えた曲作りのうまさに定評があります。

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で、映画のクライマックス、ヒューとドリューの作った「Way Back Into Love」が効果的に使われます。
このラストは泣きました。悲しくて泣くのではなく、うれしくて泣きました。

いや、実に素晴らしい。文句なしで傑作だと思います。見た後にこんなに心が温まる映画は久々でした。
これ、出来るだけ大画面で見ることをお薦めします。その理由はあとでネタばれと共に書きます。

小さな繰り返しギャグも利いています。 ドリューがヒューの家に来ると、いつも居間にあるピアノの上にカバンだの上着だのを無造作に置こうとするんです。それを一々ヒューがサッと取ってピアノに置かないようにするというギャグがさりげなくてとてもいい。この辺のセンスは60年代ロマンティック・コメディーの雰囲気があります。

ラストのヘイリー・ベネット演じるコーラのマジソン・スクェア・ガーデンでの大規模なライブシーンが演出、カメラワークともに大変素晴らしいです。大規模なライブ会場の空気感、ライブ中のアリーナ席の感じを再現できている映画はこの映画以外、あまり見たことがありません。

ここ、映画のクライマックスとしてもとても重要なので、エキストラを入れて本当のライブのように撮ってます。ネットでエキストラの人が隠し録りしたライブ収録の音を聞いたのですが、実際のライブのように思いっきり盛り上がってました。
隠し録りしてたやつ、カップルで来てたみたいで、途中でキスしてやんの(音で分かるくらいだから、ほんと盛り上がりすぎだろ)(笑)

先に「大画面で見ることをお薦めします」と書いたのも、大音量、大画面でコーラのライブを体感したほうが、ラストの感動もより大きくなるからです。映画を観ている人がライブを体感できるような映像設計がされています。

まずはアリーナ席での、ライブが始まる前の客席のあわただしさと、客電が落ちて1曲目が始まる興奮の瞬間を実に見事に描いています。
大きなホール会場などのアリーナ席に行ったことのある人なら、コンサートが始まる前の何とも言えない盛り上がる雰囲気わかりますよね?あれを映画で再現しています。

これはカメラワークによるところが大きくて、あえて望遠ショットを使って客席でライブを見ているドリューたち主要キャストのバストショットを撮っているんですが、これが見事に大きなコンサートの会場の空間と空気感を描写しているんです。
他の人たちが席を探したり、座って開始を待っていたりという、多くの人たちのどことなくソワソワした姿を画面に入れ込むことで、コンサート会場のアリーナ席独特の高揚感、そしてその中の観客の一人として、クライマックスを待つ感じ、参加する感じを表現しています。

逆にライブの最中にドラマとして見せるところでは通常のカメラレンズで撮って、じっくり表情を捉えています。この辺の演出設計がうまいです。 カット割りやカメラアングル、レンズの選び方は映画というよりライブ映像の収録手法で、これがまた劇中のライブのリアリティーを生んでいます。

で、大感動して涙が止まらなかったラストのアレックス&コーラのデュエットによる「Way Back Into Love」ですが、ここ、意図したかどうか不明ですが、細かい描写の積み重ね方、タイミングが完璧で、それが相互作用して実に泣かせるんですよ…

曲が静かにピアノで始まり、ドラムがインして曲が走り出すところで、この曲を今風に糞アレンジ(笑)に加担した黒人マネージャーがドラムを叩いて乗ってるしぐさを一瞬挿入します。ここ大感動しました。

映画では本来、この黒人マネージャーが関わったアレンジ版「Way Back Into Love」でライブをやる予定だった設定です。それが本番直前のアレックスの決心で本来のアレンジに急遽なったわけで、黒人は怒ってもいいはずなのに原曲アレンジのドラムインで乗っている…。
つまり、この人も実は原曲を認めていたという描写なんですね。

さらにボーカル2人が熱唱しているバックで、2人のギターリストがお互い顔を向き合わせて「うん」とうれしそうにうなずきながら演奏している描写があります。 演奏者であるこの2人もこの曲の良さを認めているわけです。脳内設定ですが「やっぱりこの曲にはこのアレンジだよね」と確認し合っているように思えました。ちなみに、このシーンの演奏者はみんな本当のミュージシャンです。

そして完成と手拍子と共に、カメラは客席にいるマネージャーとその娘、姉夫婦と子供たち、曲の良さにガツーンとやられる最初ヒューと組む予定で降りた作詞家、観客たちの笑顔、笑顔、笑顔…
この曲がどんどんみんなに受け入れられ、心に響いていく描写が続きます。

1つの曲がみんなに受け入れられていく描写で、ここまで素晴らしく演出された映画を僕は見たことありません。それくらい完璧でした。映画を見る前と見た後では聞いていたサントラの印象が全然変わりました。

これは映像も大事ですが、やはり曲自体の出来がとっても重要なわけで、どちらかが欠けてもこうは感動しません。
映像と音楽の相互作用が実にうまくいった例だと思います。