Home Review マリー・アントワネット

マリー・アントワネット

マリー・アントワネット
0

[cptr]
中世の絢爛豪華なベルサイユ宮殿をバックに、80’sニューウェーブが鳴り響き、当時の王朝を現代のセレブになぞらえて描くキューティー映画です。

オープニングに出てくるマリー・アントワネットのイメージがこの映画の全てです。
この画にGang Of Fourの「Naturals Not In It」がかかる…。もうこれだけで十分です。

2007年アカデミー賞衣装デザイン賞にノミネートされただけあって、衣装はほんと素晴らしいです。
きれいだし気品が漂って、でもちょっぴり現代風なアレンジもされていて…
小道具もインテリアも全てが美しく格調高く色彩豊かでカタログを見ている感じになります。
撮影監督はCM・MTV系の人ですが全編写真のよう。衣装とその背景のインテリア、照明の光源設計はとてもきれいでした。実際にヴェルサイユ宮殿で3ヶ月ロケをした成果が出ています。

マリーが友人たちと仮面舞踏会に行くシーンでのSiouxsie & The Bansheesの「Hong Kong Garden」という曲の使い方が面白かったです。
仮面舞踏会のシーンで使われているんですが、イントロを室内管弦楽にアレンジして室内のBGMとして流しておいて、踊りのカットで原曲のパンクになって歌が入る、というのはとてもよかったです。
この映画を見る前に期待していた音楽演出はまさにこれ!という感じです。

しかしこれ以外で80’sをうまく映像と合わせて使ったイメージがあまりありません。ただ鳴っているだけ…アイディアは面白かったのに、ちょっと勿体無い感じです。
むしろ音楽が一番印象的だったのは夫婦で食事するシーンで流れるヴィヴァルディの「Concerto In G」だったという…

普通の映画なら、民衆の悲惨な生活を描写して対比させて宮殿の生活の浮世っぷりを出すところを、あえて民衆側を一切描かず、宮殿の中のマリーのセレブな生活に焦点をあてるという面白い試みをしています。しかし残念ながらダラダラと垂れ流しているだけで凡庸な出来になってしまいました。

監督のソフィア・コッポラはどの作品でも、雰囲気作り、オシャレなセンスを漂わせるのがうまいと思います。
企画アイディア、プロデュース能力が高い人ですね。ソフィア・コッポラの映画の雰囲気が好きな人が多いのもうなずけます。

この作品でも、中世の物語に現代性のあるものを混ぜて、中世と現代をつなぎ合わせるというアイディアは秀悦。
そのせいで、歴史物映画であるにもかかわらず、とても現代的な雰囲気を醸し出している映画になっています。後述しますが、現代のセレブ感をこの時代に置き換えたりするのも素晴らしい見せ方だったなぁ、と。

ただ、全体にメリハリもなく淡々と描写が続く「雰囲気映画1」なので、マリー・アントワネットの激動の人生を描くドラマを求める人には不満だと思います。

主役のキルステン・ダンストはやはり凄い女優です。
14歳のマリーから演じるとは…2
で、違和感がさほどないというのが凄い。
物語のはじめの方で嫁ぐためにフランスに渡る直前と嫁いだ直後あたりの演技が特に素晴らしいです。少女がたった一人で異国で生きていく緊張感、寂しさが見事に出ていて、グングンとマリーに感情移入してしまいました。

14歳のマリーが大事にしていたパグ犬モップス、フランスのカンヌ映画祭でパルムドッグ(パルムドールに引っ掛けたシャレ)賞を取ってます。
祖国の人物を英語で映画化されたフランス人の嫌味も含まれてますね(笑)カンヌではこの映画、不評でした。

ちなみに、映画にまつわる史実についてもちょっと書いておくと、マリーが宮廷で押し付けられる窮屈な生活のルールは、ルイ14世(マリーの夫16世の祖父)によって決められたものです。

また、当時のフランス貴族は入浴の習慣がなかったため、動物の脂を使った非常に濃い匂いの香水をつけていました。しかしオーストリア出身のマリーは入浴の習慣があり、そのため香水は花やハーブなど現代に近い軽い香りのものを使っていました。これが貴族の間で大流行し今に繋がります。

ハンカチを今の形にしたのもマリーです。

自分のおっぱいの形に似せて作らせたグラスが今のワイングラスになったとも言われています。

やはりいつの時代もセレブは流行を作り出すんですね。

そういえば、独身時代に散々パーティーに明け暮れ遊びたおしていたくせに、子供が出来た途端、農園だの無農薬野菜だのオーガニックだのと「癒し」に走るのはハリウッド・セレブを連想させます。

ラスト、史実的にどの段階でこの映画を終わらせるのかなと興味津々に見ていたのですが、ここは「雰囲気映画」が効を奏しました。
宮殿を去るマリーたち、馬車から見たヴェルサイユ宮殿、そして唐突に荒らされたマリーの寝室をポンと写して終わる、というのはこの映画の雰囲気としてはきれいな終わらせ方だったと思います。

もしリアルにやったら、あの後捕まって塔で豪華な幽閉生活をしてそこで子供への教育に熱心になって、でも息子は靴屋に里子に出されて、本人は最後、ギロチンですから。

  1. まぁ…ぶっちゃけ、この手の種類の映画は、演出力のない監督さんに多いと個人的に思っていますが… []
  2. 撮影当時、キルステンは25歳。 []