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恋人はゴースト

恋人はゴースト
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『キューティ・ブロンド』のリース・ウィザースプーン 、『フォーチュン・クッキー』『ミーン・ガールズ』のマーク・ウォーターズ監督作品というキューティー映画としては完璧な布陣、さらに2005年9月に全米公開で圧倒的な女性層支持の元、興行収益1位を5週間キープしたヒット作品です。

原作はフランスの小説です。映画とは内容が違います。ファンタジーなラブストーリーながら、安楽死についてソフトに言及していたり、母と息子の関係を示したりとちょっとしたひねりが利いています。

マーク・ウォーターズ監督の作品はいつも音楽の使い方が巧みです。この映画、最初の映画会社「ドリームワークス」のロゴが出た時から実はオープニングが始まっています。ドリームワークスのタイトル映像はアコースティック・ギターによる優しい音色と雲が特徴なのですが、そのイメージをうまく使って、The Cureの「Just Like Heaven」を女性歌手Katie Meluaがアコースティックギターでカヴァーした曲と雲から下に降りてくるというカメラワークで、ロゴから本編にシームレスに繋いでスタートします。

ドリームワークスのタイトル映像です。

前半のコメディーシーンでは多種多様な提供楽曲をバンバン使って、テンポの速い展開に音楽で楽しさと明るさを加え、しっとりと見せたいシーンでは美しく静かな旋律のBGMを使って盛り上げるというのは、この映画に限らずハリウッド映画王道のやり方ですが、この映画ではそれがうまく作用していて、物語を凄く優雅かつ格調高いものにしています。

途中、マーク・ラファロがリースを追い払おうと様々なお祓いを試すシーンがあるのですが、ここでインチキ・ゴーストバスターズが出てきます。もうこれだけで楽しいのですが、ちゃんとBGMにRay Parker Jr.の大ヒット曲「Ghostbusters」のフレーズを出してくる遊びも楽しいです。

そのお祓いシーン、中国式お祓いをしている女性は『フォーチュン・クッキー』の中華料理屋のお母さん役の人、さらにリースの同僚医師には、『フォーチュン・クッキー』の中華料理屋の娘役の人、さらにマークを誘惑する同じマンションに住むムチムチ・プリンのお姉さんは『恋にあこがれて in N.Y. 』のモデル役の人など、過去のマーク監督作品に出演していた人がたくさん出ています。
ちなみに、リースのお姉さん役、ディナ・ウォーターズは監督の奥さんで『フォーチュン・クッキー』の時はTV司会者役で出ていました。

リース演じる幽霊の設定がしっかり定まってなくて、「なんで幽霊のリースの影が床に写ってるんだ」とか「リースは机や壁をすり抜けたりするのに、リースが車に乗るシーンではリースの重さで車が揺れてたぞ」とか「幽霊は通り抜け可能なのに、なぜ対面から人が来たら一々避けるんだ?」とか突っ込みどころ満載なんですが(笑)、そんな些細な事はど?でもよろしいのです。

出てくる登場人物全員の設定や、台詞、小道具など、一々仕掛けがちゃんと細かくドラマに機能するあたり、実にニクイ脚本で非常に完成度が高いと思います。

この映画は「魂を失った男」と「肉体を失った女」が、共に欠けているものを探し出す話になっています。
幽霊になってしまったリース中心の話のように見えて、実はリースに関わることで妻を亡くして自暴自棄になっていたマークが自分を取り戻していく話になっているんですね。

マークの演技がとても繊細で素晴らしいです。どこか憂いがあるけど、ちゃんとコメディーのシーンも面白く演じています。さらにリースの幽霊は周りには見えない設定ですから、パントマイムのような芝居もしつつ…
数々の作品で優れた演技を見せているマークの実力が堪能出来ます。

リースも、幽霊になりたての時のコメディー演技から、後半の自分の行く末を見守るしかない不安そうな目をした切なくはかない演技まで、さすがという感じです。

また、『ナポレオン・ダイナマイト』で一躍注目を浴びたジョン・ヘダーが癖のある心霊マニアを演じています。
無表情でだるそうな話し方はナポレオン・ダイナマイトそのままですが、コメディーシーンが日本の笑いで言うところの「シュール系」に近く実に微妙な感じ。正直、さほどキャラが立ってないと思います。(アメリカ人はこれでキャラが立ってて大爆笑なんだろうけど)

この映画、デジタル処理を結構使ってます。というか、今のハリウッド映画では当たり前ですね。でもこの映画、リースの幽霊ショットなど判りやすいCGの使い方より、さりげないところでデジタルを丁寧に活用しています。

ジョージ・ルーカスがTVシリーズの『ヤング・インディー・ジョーンズ』で使って普及させたデジタルを使ったレイアウト直し(人物の立ち位置を変えてしまう)、人物の芝居変更(目のまばたきのタイミングを変えたり、唇の動きを変えて別の台詞と合わせたり)などがこの映画でも大活躍しています。DVDの監督コメンタリーでも、その辺を詳しく話しています。

部屋の窓から見える風景、屋上から見える風景(夜景)など、舞台の中心になるアパートから見える風景がデジタル合成なのは判りましたが、ラストシーンの屋上まで風景が合成なのは、監督らの音声解説を聞かないと判りませんでした。ここは自然光で撮った別ショットを巧みにアップで混ぜていて、CG合成どころかセット撮影にも見えません。実に見事です。

楽しくてロマンティックで暖かい気持ちにさせてくれる、キューティー映画としては満点の作品だと思います。