Home Review ジュリー&ジュリア

ジュリー&ジュリア

ジュリー&ジュリア
0

[cptr]
監督のノーラ・エフロンは、ニコール・キッドマン主演『奥さまは魔女』で大変ガッカリな演出をしてしまいもう終わった人だと思っていたのですが1、この映画で復活したと思います。

この監督さんは『街角 桃色(ピンク)の店』をリメイクした『ユー・ガット・メール』では店員と店長の駆け引きの関係に、地元の小売業者と大型店舗の確執の関係を加えたり、『奥さまは魔女』のリメイクでは、人気シリーズ「奥さまは魔女」を魔女を使ってリメイクする、ドラマ中ドラマの設定を加えたり、与えられた1アイディアに対して一筋縄で映画化しないタイプのようです。

この映画も勝手な想像ですが、当初は世間で話題になったブログ本の映画化を打診されたのではないでしょうか?
それが、やはり1アイディアに対して異なるアプローチも加えて構成にしたことで、最終的にはこういう映画になったのではないかと予想します。

ジュリア・チャイルドは実在する料理研究家です。
フランス料理をアメリカの家庭に紹介しました。1963年のテレビ番組「フレンチ・シェフ」に登場し、番組最後の決め台詞「ジュリア・チャイルドでした。ボナペティ!」が有名でした。 この番組を通してアメリカではフランスの家庭料理が浸透し、「アメリカの料理を変えた」と言われるに至ります。
そのジュリアが数多く出版した本の中でも特に有名なのが『フランス料理の達人』というレシピ本で、この本は当時のアメリカの家庭には必ず1冊はあったと言われているほどの主婦のバイブルでした。
ジュリアは2004年にこの世を去っています。

Mastering the Art of French Cooking, Volume I: 50th Anniversary Edition: A Cookbook 洋書

価格¥4,848

順位206,534位

Child, Julia, Bertholle, Louisette, Beck, Simone

発行Knopf

発売日01.10.16

Amazonを開く

Supported by amazon Product Advertising API

Mastering the Art of French Cooking, Vol.2 洋書

価格¥4,167

順位1,813,568位

Child, Julia, Beck, Simone

発行Penguin Books

発売日10.03.04

Amazonを開く

Supported by amazon Product Advertising API

Mastering the Art of French Cooking (2 Volume Box Set): A Cookbook 洋書

価格¥12,052

順位52,472位

Child, Julia, Bertholle, Louisette, Beck, Simone

発行Knopf

発売日09.12.01

Amazonを開く

Supported by amazon Product Advertising API

そして、2002年。
結婚、健康、仕事など日々のストレスを解消するため、その本に載っている524種類、全ての料理を1年間で作ることを目標にした女性がいました。ジュリー・パウエルという名の彼女は、その結果を毎日ブログにアップしはじめます。
実際に書かれていたブログがこちらです。
Julie/Julia Project
(ちなみに現在の彼女のブログはこちらです。)
そのブログはやがて話題となり、本になりました。
それがこの映画の原作となります。

ただ、ブログが本になって売れた時、ジュリーは世間からかなり叩かれたんですね。
「ジュリア・チャイルドの本を料理しただけなのに」「ブログだから応援してたのにそれで自分だけ金儲けした」と。
それもあってか、彼女はこの映画に関して一切プロモーションに関わっていませんし、コメントも出していません。

本来、ブログの目的は売名でも何でもなく、日々に何となく悶々としてたジュリーの独り言だったんですね。ジュリーは元々作家志望ですから、その辺の人より「読ませる文章」が書けて、それで読者がついていったんです。

映画では、ジュリーとジュリアの関係はとても冷静に描かれています。この映画が完全にフィクションであれば、ラストでいかようにも感動的な演出が出来るのですが、現実的にはそうもあらず、ということで結構シビアな感じで描かれます。
でも、ちゃんとジュリーとジュリアが、時代を超えて、互いに似たような悩みを抱え、夫の愛に支えられ、勇気づけられ…というシンクロ感が生まれていています。

この映画、昔ながらの特撮技術がふんだんに使われています。
1949年当時のフランスの再現のため?いやいや、ジュリア・チャイルドを再現するためです。

ジュリア・チャイルドという人は身長185cmと大柄でした。演じるメリル・ストリープは168cm。夫役のスタンリー・トゥッチの身長が174cm。
映画の中ではメリルはスタンリーより背が高くなかればなりませんし、常に大きな女性で映ってないといけません。そして妹ドロシーと並ぶと存在感のある大柄姉妹でなければなりません。
ちなみに、ジュリアの妹ドロシー役を演じたジェーン・リンチ2は183cm。元々大柄な人です。
そこでジュリア・チャイルド役のメリル・ストリープを大きく見せるため、目の錯覚を利用した昔ながらの特撮の技法がふんだんに使われています。

人物配置のずれや縮尺のおかしいセットなど、遠近法の錯覚を利用してメリルを大きく見せていました。
人物配置を利用た錯覚をより効果的に見せる場合、これに合わせてセットも遠近法が歪んだ形で作ります。セット使って遠近感を出したりするのを「強制遠近法」といいますが、その応用です。
ジュリアが初めて通う料理教室などのシーンで使われています。メリルだけをちょっと奥に配置し、他の人たちを手前に配置し撮影すると、メリルだけが大きく見えます。

この手法は、最近では『ロード・オブ・ザ・リング』の小人、ホビット族の撮影で使われています。伊丹十三監督『お葬式』では、まさにこの技法でCMを作っている実際の撮影現場から物語がはじまるので、どういう風に作っているかがわかります。

強制遠近法について余談になりますが、身近?なところでは、ディズニーランドの建物にもこの手法はふんだんに取り入れられています。シンデレラ城とか。京都の龍安寺にある有名な石庭の壁も遠近法をゆがめて空間を表現しています。

ジュリーがオマール海老と格闘するシーンなどでは、オマール海老がケーブル操作のミニチュアで動いていましたし、鍋の蓋の飛ばし方など、意外と手作り感のある特撮映画なんだなぁ、と。

上映時間は123分。ちょっと長いです。大きな山場がドラマチックにある種類の映画ではなく、淡々とジュリーとジュリアを交互に見せていく内容なので、2時間では凡庸に見えてしまいます。
メリル・ストリープ&スタンリー・トゥッチ、エイミー・アダムス&クリス・メッシーナの演技がみな素晴らしかったので面白く見れましたが、もう20分くらい切ってテンポよくした方がよかったかな、とも思いました。

『プラダを着た悪魔』を見た後だと、どうも夫のスタンリー・トゥッチが部下に見えてしかたないんですよね(笑)

  1. 実際、この映画は『奥さまは魔女』以来、4年ぶりとなります。 []
  2. 「Glee」のスー先生が有名ですね。「Lの世界」での弁護士役など活発な役が多い芸達者な人です。ご本人はゲイをカミングアウトしており同性婚をしています。 []