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第29回東京国際映画祭:三人姉妹(2016)

第29回東京国際映画祭:三人姉妹(2016)
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Ini Kisah Tiga Dara

グンディス(32歳)、エラ(28歳)、ベベ(19歳)の姉妹は家族で経営する海辺のブティックホテルを切り盛りする毎日。同居する祖母の望みは孫娘たちに理想的な婿を見つけること。ことは上手く運ばないのだが、祖母は諦めずにいい男を探し続ける…(映画祭公式サイトより)
監督/脚本/プロデューサー:ニア・ディナタ
脚本:ルッキー・クスワンディ
撮影監督:ユディ・ダタウ
振付:アデラ・ファウズィ
音楽:アギ・ナロッタマ、ベンビ・グスティ

キャスト

シャンティ・パレデス(シャンティ)
タラ・バスロ
タティアナ・アクマン
リオ・デワント
ルベン・エリシャマ
リチャード・カイル


1956年版『三姉妹』

本作は1957年に公開された、”インドネシア映画の父”と呼ばれるウスマル・イスマイル監督のミュージカル映画『三人姉妹』のリメイクです。
オリジナルの原題は『Tiga Dara』、今回のリメイク版原題は『Ini Kisah Tiga Dara』。「Ini Kisah」は直訳すると「このストーリー」となります。
オリジナル『Tiga Dara』4K修復版の予告編です。

こちらが4Kでデジタル修復する工程を説明した映像です。

これらの映像を見てわかるように、オリジナルはかなりアメリカのミュージカルに近く、歌や踊りの演出はポップでモダンです。

新しく蘇った『三姉妹』のミュージカルシーン

新しく生まれ変わった『三姉妹』のミュージカルシーンは、近年アメリカやインドがMTVを通過したダンスシーンを演出しているのに対して、とてもクラシカルな演出でした。

オープニングの、三姉妹が乗ったタクシーが渋滞で動かないことを嘆くところから始まるミュージカルシーンは、車内の三姉妹の動きだけでは上半身しか見せられないし動かせないので、一方で三姉妹の到着を待つおばあちゃんのダンスと歌を組み込むことで画面の単調さ、窮屈さを回避していました。車の中のダンスは途中でガチムチの男性運転手も一緒に踊りだしていて楽しかったです。
三姉妹はタクシーを捨てて、家まで歩くことにするわけですが、ここのミュージカルシーンは、イメージ的には『ヘアスプレー』のオープニングと『魔法にかけられて』の公園のダンスシーンを思わせるもので、三姉妹が歌い踊り移動していくのをカメラで追い、周りの人々もみんな踊っているという、この映画最大規模のダンスシーンとなっています。

お話の方は単純明快で、熱血漢の長女グンディスはホテルの厨房を取り仕切っていて仕事熱心で彼氏がおらず、接客係のクールビューティーな次女エラには彼女をずっと慕っているカメラマンの男性がいて、天真爛漫な三女ベベは自由奔放な彼氏がいます。世話好きの祖母はなんとか長女に彼氏を見つけようとするのですが、長女は厨房の仕事でそれどころではありません。そんな時、長女は偶然バイクを乗るいけ好かない男と遭遇し…というお話です。

長女のグンディスと謎の男の恋愛を中心に物語は進んでいきます。一方で次女、三女の恋の進展も描かれその都度ミュージカルシーンが続きます。後半になると映画の主軸が長女の恋愛が中心となり、これは構成的に全く正しいのですが、そのせいで歌が同じようなバラードばかりとなってちょっと単調になってしまいました。
ラストのミュージカルシーンではドローンを使った空撮カットも加わり、非常に雄大なイメージで映画を締めくくりました。
全体に華やかで楽しく、ミュージカル、エンタテインメントに徹して、そしてキューティー映画にぴったりの大団円で終わったのはとても良かったです。

女流監督のニア・ディナタはヒロインの設定を32歳にして、仕事と恋愛で悩む大人の女性の葛藤を組み込んだり、天真爛漫で自由奔放な19歳という設定の三女に最後妊娠させ、彼氏も喜んで祝福するという、SEXに自由な若者らしい仕掛けを組み込んだり、エンタテイメント性の高い映画の中にも、現代の女性ならではの視点を組み込むことに成功していました。