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アダルトグッズ開発を実話に基づいて描いた『ヒステリア』

アダルトグッズ開発を実話に基づいて描いた『ヒステリア』
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女性用バイブレーター誕生の裏に隠されたドラマ、そしてその時代を生きる女性の社会進出を軽やかに描いたキューティー映画です。

キャストは実力派揃い

主演の医者役には『お買い物中毒な私!』のヒュー・ダンシー、『セクレタリー』『モナリザ・スマイル』など実力派、マギー・ギレンホール。
その他に『パイレーツ・オブ・カリビアン」シリーズの名優ジョナサン・プライスや『今日、キミに会えたら』フェリシティ・ジョーンズ、主人公の親友役にはルパート・エヴェレットらが出演しています。

またキューティー的に注目なのは、ダリンプル医師の家で働くメイド役のイギリス人女優、シェリダン・スミス。日本では耳にしたことのない方がほとんどであろう彼女ですが、実は『キューティ・ブロンド』のミュージカル版「Legally Blonde The Musical」のロンドン公演で主人公、エル・ウッズ役を演じた実力派でもあります。本作ではキュートな(元)売春婦のメイド役を楽しそうに演じていました。

監督はターニャ・ウェクスラ―、長編の監督はこれが3作目です。ちなみに彼女は自身がレズビアンであることを公表しています。
彼女の伯父は『ヴァージニアウルフなんて怖くない』や『カッコーの巣の上で』『アメリカン・グラフィティ』など映画史に残る傑作を手掛け、アカデミー受賞経験もある大御所撮影監督のハスケル・ウェクスラ―、義理の姉妹は女優のダリル・ハンナです。

実話に基づくバイブレーターの発明話

本作は実際に起きた出来事を元に作られています。
ヒュー・ダンシー演じるモーティマー・グランヴィル医師は実在した人物で、いまでも電動式女性用バイブレーターの発明に貢献した人物として歴史に名を残しています。
その他の登場人物は架空のキャラクターだそうですが、当時の多くの女性がヒステリーの“治療”として陰部へのマッサージを受けていた、という設定は史実の通りです。
ちなみに、もともとヒステリーはギリシア語で「子宮」を意味し、女性の子宮から引き起こされる疾患と信じられていました(とんでもない偏見です)。ヒステリーの進行が深刻な女性には子宮を摘出することが最終手段とされ、多くのいわれなき女性がこの迷信の犠牲になりました。

セクシャルな内容だけではない、女性の時代を予感させる映画

そんな女性たちの屈辱の歴史を足がかりに、物語はもう一人の主人公、マギー・ギレンホール演じるシャーロットへ視点が移って行きます。ヴィクトリア朝といえば産業革命が本格化し、様々な技術が生み出される一方、労働者たちは賃金、労働条件ともに最悪の環境で働かされ貧富の差がどんどん拡がっていった時代。

そんな中シャーロットは「より良い社会のためには福祉の充実が必要」という信念に基づき、労働者の子供たちの託児所を運営します。この運営資金を巡る問題で彼女は逮捕され、映画のクライマックスは法廷へと移っていくわけですが、ここで彼女はいわれなき女性への偏見と対峙することになります。

つまるところ、本作は一見「女性用アダルトグッズの誕生を巡るセクシャルな映画」と思いきや、実は根底に流れるテーマは「女性の尊厳と社会的自立」を扱ったドラマなのです。

ちなみに、ラストのエンドクレジットではグランヴィル医師の時代から現代にいたるまでのバイブレーターの記録が収められており、そちらも普段はなかなか見られないものたちばかりなので必見です。日本製のものも多数登場し、我が国の技術力を改めて再確認することもできます(笑)