Home Review 今どきのゲイと女の子の関係をコミカルに描いた『G.B.F』

今どきのゲイと女の子の関係をコミカルに描いた『G.B.F』

今どきのゲイと女の子の関係をコミカルに描いた『G.B.F』
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このキャストとスタッフだからこそ生まれたキューティー映画

「G.B.F.」とは「Gay Best Friend」の略。この映画で造られた造語です。

監督のダレン・スタインはロサンゼルスで毎年行われるLGBTのための映画祭OUTFESTで本作の脚本家のジョージ・ノースィと、彼の執筆した脚本に出会いました。後にこの作品が完成した時に、OUTFESTのハイライトである野外上映会でプレミア上映が行われています。

主演はマイケル・J・ウィレット、主にテレビドラマでキャリアを積み、同時にシンガーでもある彼ですが、映画では本作が初主演です。

その他のキャストには「プリティ・リトル・ライアーズ」のサーシャ・ピーターズ、「デスパレートな妻たち」のヒロインの娘役で有名なアンドレア・ボーウェン、「Awkward 不器用ジェナの青春はみだし日記」のモリー・タールロブ、彼女の本国では人気は大変なもので、彼女のキャスティングに関しては監督も二つ返事でOKしたそうです。

さらに「ハリー・ポッター」シリーズで不思議ちゃん・ルーナを演じたイヴァナ・リンチと「アメリカン・パイ」ファミリーのナターシャ・リオンも出演し、それぞれ個性の強いキャラクターを演じています。
また、監督の代表作『ハード・キャンディ』に出演していたレベッカ・ゲイハートも主人公の母親役でカメオ出演しています。

監督のダレン・スタイン、脚本のジョージ・ノースィ、主演のマイケル・J・ウィレットはゲイを公言しています。

本作の骨組みを作ったジョージ・ノースィは現在MTVの新作ドラマ「Faking It」の脚本を担当しており、これがまたLGBTを扱ったコメディドラマとして秀逸。
学校で目立とうとレズビアンを装った女子2人が高校一の人気者になってしまい、引くに引けなくなってしまう…というお話で、カミングアウト済みの学校一の人気者男子生徒役でマイケル・J・ウィレットがまたもや出演。『G.B.F.』とは違ったタイプのゲイを演じています。

キューティー映画における、ヒロインとゲイの友達の役割

キューティー映画のなかではよく、ヒロインの横にアドヴァイザーとしてゲイの友達がいます。
代表的なのは、なんといっても『セックス・アンド・ザ・シティ』。主人公のキャリーとゲイの親友スタンフォードはドラマの中でニューヨークのヒップなナイトクラブに一緒に出かけ、時に互いに助け合い、共に相手の幸せを誰より祝福していました。そんな2人の関係に世界中の女性が憧れました。
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そのほかにも、『ブリジット・ジョーンズの日記』『ミーン・ガールズ』『プラダを着た悪魔』『小悪魔はなぜモテる?!』など、キューティー映画のなかの「ヒロイン×ゲイ友」の組み合わせはキリがありません。こういった作品を経て、世の中の女性たちの中で「流行に敏感でイケてる女性には必ずゲイの親友がいる」という、一種の固定観念が生まれました。
この前提を踏まえ、その関係に新たな疑問を投げかけるのが『G.B.F.』です。

『G.B.F』が描く女性友達とゲイの関係

最初、3人の学園クイーンたちはタナーのことを“自分たちを飾るアクセサリー”としか考えていません。彼女たちはあの手この手でタナーを囲い込もうと必死になります。

物語の核となる3人の学園クイーンは、典型的チアリーダーで実はリケジョのフォーセット、モルモン教徒グループのおバカなリーダー・シュリー、演劇部部長の黒人コミュニティの女王・キャプリスとバラエティに富んでいます。フォーセットはタナーを自分の部屋に招待し、シュリ―はモルモン式ディナーを振る舞い、キャプリスは彼氏候補を紹介します。

これは本作脚本のジョージ自身が大学時代にカミングアウトした際に体験したことだそうで、「G.B.F.をゲットするため、彼女たちは僕の気を引こうとしていると感じた」とインタビューでも述べています。

そしてそんな彼らの思惑を利用して自らのスクールカーストでのランクアップを狙う、主人公の親友ブレントもまた、これまでの作品では登場してこなかった新しいタイプのキャラクターです。
女子の利己的な目的を逆に利用して自身がのし上がろうとするところに、これまでのキューティー映画で描かれてきたゲイと違って、自身のアイデンティティを利用するしたたかさと、自分の存在価値を冷静に分析する客観性を感じます。

そういった意味で、本作は「ゲイが主役のキューティー映画で、ゲイ自身も含めてゲイを利用する人々を面白おかしく皮肉った作品」と言えるのかもしれません。

『G.B.F』の狙いと、周辺の動き

ダレン・スタイン監督自身は本作を「ゲイの子供たちだけに向けて作ったつもりではない」とコメントしています。
「ゲイだけではなく、黒人、モルモン教徒、太った人など、様々な種類の少数派が登場する。彼らには観てもらいたいが、何よりメッセージ性の強い作品と思ってほしくない。面白い話を突き詰めていったらこうなったんだから」と述べています。

ダレン・スタイン監督は以前も『ハード・キャンディ』で学校内での女の子同士の関係の怖さをコミカルかつシニカルに描いています。
ティーン向けのキューティー映画の監督として、いつも目の付け所はとても鋭いです。そしてそれをコミカルなタッチで提示する姿勢は素晴らしいと思います。

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順位266,539位

出演ローズ・ マッゴーワン, レベッカ・ ゲイハート

監督ダレン・ スタイン

発行ソニーピクチャーズエンタテインメント

発売日06.12.20

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ちなみに本作はセックスシーンもバイオレンスな表現も、いかなるFワードも出てこないにも関わらず、アメリカでR指定の映画と指定されました。「同性者同士によるキスシーンが多い」というのがR指定の理由だそうですが、この決定は物議を醸し大きな話題となりました。

「キューティー映画として普通に楽しまれるために作られたのに、周囲が色々騒動にしてしまいゲイ映画であることが制作者の意図とは別のところで際立ってしまう」というところが、本作の内容にシンクロしているようです。