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第29回東京国際映画祭:ダイ・ビューティフル

第29回東京国際映画祭:ダイ・ビューティフル
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Die Beautiful

美女コンテストで優勝したトランスジェンダーのトリシャが突然死してしまう。彼女の望みは、埋葬前に幾夜も行われる儀式で、毎回違うセレブの装いをまとうこと。友人たちは団結してトリシャの願いを叶えようとする。トリシャが生きた、カラフルでちょっと変わった一生を思い起こしながら。息子として、姉として、母として、友として、恋人として、妻として、そして女王としての人生を。(映画祭公式サイトより)
監督/プロデューサー/原案:ジュン・ロブレス・ラナ
脚本:ロディ・ベラ
撮影監督:カルロ・メンドーサ
作曲 : リカルド・ゴンサレス
プロダクション・デザイナー : アンヘル・ディエスタ

キャスト

パオロ・バレステロス
クリスチャン・バブレス
グラディス・レイエス
ジョエル・トーレ



主演のパオロ・バレステロスはフィリピンではTVなどで司会をしている有名なトランスジェンダーで、彼女の売りはメイクで欧米の有名人になりきることです。
本作ではそれを活かして、パオロの七変化が見ることができます。
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映画は、黒澤明の『生きる』のように主人公トリシャのお葬式から始まり、そこからトリシャという1人のトランスジェンダーの人生を描いていきます。
現在とトリシャが生きていたさまざまな過去が突然切り替わりつつ進行していくのですが、最初、今がいつの時代のことを描いているのかわかりにくく「現在と複数の過去が縦横無尽に入れ替わるスタイルの映画なのだ」と認識するまでは混乱しました。
このあたりは演出と編集の不備です。

冒頭、美人コンテストで優勝した直後に倒れてこの世を去ったトリシャの葬式に、養子の女の子がやってくるところからお話が始まります。回想シーンとしてトランスジェンダーのトリシャが女の子の養子をもらい育て、女の子の成長に沿った母親としてのエピソードが描かれるので、その女の子との関係を描くのかと思いきや、今度は高校時代の父親との確執や憧れの男子生徒のことなどが描かれ、さらに出場しては優勝出来ない美人コンテストの話、友達と一緒に整形手術で女体化する話など、過去をシャッフルに行き来しながら色々なエピソードが語られていきます。

最終的にはトランスジェンダー一代記となるわけですが、高校時代のトリシャに降りかかる重く暗いエピソードが映画の核としてあちこちに顔を出すため、重要なキャラクターであるはずの養子の女の子が途中から空気化してしまったのは残念です。

亡くなったトリシャのお葬式はフィリピンのお葬式の慣例で1週間行われます。トリシャの遺言でトランスジェンダーの親友が毎日トリシャの衣替えをします。トリシャ役のパオロのメイク芸がここで披露されています。
この映画を見た後にフィリピンのお葬式について調べたのですが、映画で描かれていること…例えば亡骸を携帯で写真に撮ったり、参列者が亡骸と一緒に写真を撮るなど、その殆どは映画のための誇張した表現ではなく、一般的なお葬式の慣例によるものでした。そういう意味ではこの映画でフィリピンのお葬式を知ることができます。

キューティー映画的な見どころとしては、主人公トリシャはジュリア・ロバーツに憧れているという設定があり、当然お葬式でもジュリア・ロバーツの格好をするのですが、それが『プリンセス・ブライド』。これまたマニアックなチョイスです(笑)
でも確かにジュリア・ロバーツのウェディング姿といえば、この作品でしょう。

さらに過去のシーンでもトリシャはジュリア・ロバーツの格好をしています。『プリティ・ウーマン』冒頭のジュリア・ロバーツがリチャード・ギアと出会う時の売春婦の格好なのですが、内容的にもトリシャにとって運命の王子様となる男性と出会うシーンなので、パロディにも意味を持たせていてうまいなと思いました。

映画全体はコメディ要素が多いわけではありません。そして周囲から差別されバカにされ、整形で死ぬような痛い思いをしてまで、なぜ主人公トリシャはゲイでありトランスジェンダーであり続け、美人コンテストに出場し続けたのか?その答えを映画の中に見つけようとする我々観客は、最終的に性別を超えた、人としての生き方を見せられるのです。