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ヘザー・グラハム in おいしいオトコの作り方

ヘザー・グラハム in おいしいオトコの作り方
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まず最初に。
このサイトではキューティー映画をみなさんに出来るだけたくさん観てほしいので、どんな映画でもいいところを見つけ、それを書くことを心がけています。けど、この作品に関しては残念ながらいいところが見つけられませんでした…

でもこの映画を観て面白いと思った人も多くいるはず。そういう人は以下は読まないで、自分の「面白かった」と思う判断を信じて優先してください。それが絶対正しいんです。それは間違いではありません。


でも自分は色々不満だったので書きます(笑)

出てくる人物、誰もが不愉快です。誰一人共感できるキャラクターが出てきません。
一例をあげると、主人公の秘書&ゲイ役のケラム・マリッキ=サンチェス。演技が死ぬほど下手で、キューティー映画お約束の「シニカルだけど実はいい奴」という役割になってません。不愉快以外の何者でもありませんでした。

劇中で、ヒロインのヘザー・グラハムが酒場で辞表をしたため、それをたまたまその場にいたバーテンに聞かせるというシーンがあります。
このバーテン、それまで一切劇中に出てないのに、このシーンで急に含蓄あること言い出すので「つうか、おまえは誰や?」と面食らうのですが(笑)そいつがヘザーの辞表を
「文法はひどいが、創造性はある。」
と評します。

この評、まさにこの映画のことです。

これほどまでに映画の基本的文法を間違ってる作品は、結構有名な役者陣が出ている作品では久々です。
けど、内容のアイディアは面白い。基本的な文法で普通に作っていれば佳作キューティー映画になりえたはずです。それが演出の基本が出来ていないためにキャラクターの魅力は伝わらない大失敗作になっています。
だからどのキャラにも共感が出来なくなってしまいました。もったいないです。
基本演出力のなさはシーン繋がりの不自然さでわかります。人物が場所を移動する描写、移動の意味が提示されないため不自然です。

例えばヘザー・グラハムと恋相手になるデヴィッド・サトクリフの出会いのシーン。
友人の結婚式の2次会で酔っ払って、1人会場の外の池に入っているヘザー。それを見て声をかけるデヴィッド。ヘザー、池から出てデヴィッドといい雰囲気に。
唐突にヘザー1人が台所で酒を物色中。そこに入ってくるデヴィッド。(←池は何だったんだ?台所に行く意味がわからん)
当然いい感じで迫るヘザー、なぜか避けるデヴィッド。(←明らかにデヴィッドのほうがヘザーを狙ってる雰囲気だったのに、避ける意味がわからん)
唐突に結婚式会場の玄関で別の男といちゃつくヘザー。帰ったほうがいいとタクシーを呼ぶデヴィッド。(←台所から唐突に玄関にいる意味が分からん)
めっちゃくちゃです。

こんなのまだいい方で、これ以上に酷い繋ぎが延々と続きます。編集マンの腕が悪いのか?演出した監督がダメなのか?
もし映画制作を目指す人がいるならこの映画は反面教師としていい教科書になります。逆に言えば、映画制作を目指していてこの映画の欠点に気付かない人は映画を作ってはいけません。

あらすじを整理するとこういう筋書きになります。

「旅行ライター」という適当な肩書きで適当に遊んできた出版社会長の放蕩娘が、お父さんが病気で倒れたことで急遽、出版社で売り上げが落ちている結婚雑誌の編集長に抜擢されます。
「結婚なんて何がいいのよ!幻想に過ぎないわ!」と結婚に否定する放蕩娘は、そのコンセプトで結婚雑誌を強行編集。結果は社内スタッフからも読者からも総スカン。会社は売却の危機に。さらに結婚雑誌が亡き母が創刊したこともあって、自信を失った彼女はお目付け役のイケメン副社長に助けを求めます。
気持ちを入れ替えた彼女はイケメン副社長に恋しつつ、スタッフの意見を取り入れたりして「恋することってどういうこと?」と自らにも問いかける彼女…

どうですか?とても面白そうでしょ?

「亡き母の大事にしていた結婚雑誌」という設定は、うまく活かせば、実は雑誌に亡き母から娘へのメッセージがあったとか、感動話に持っていく小道具として使えます。さらに設定を膨らませれば、元々結婚に否定的だったヒロインが、自らの恋愛体験を元に結婚雑誌を編集してそれが読者の共感を呼び成功。それが自分への自信に繋がり、さらに会社売却の危機から救うことになる…という流れで、カタルシスのある物語の中心軸としても使えます。

なのに、この制作者は基本的な構成力がないので、キューティー映画としては、これだけおいしいシチュエーションがありながら全て活かしきれず、さらに『セックス・アンド・ザ・シティ』を真似て、結婚適齢期の女性の気持ちを描写しようとするものの、技量がないから失敗し、感動シーンでもないのに大袈裟なBGMを流したり、点描でもないのに急にロックBGMを前面に出してきたりと、頓珍漢な演出をして全てを台無しにしてしまいました。
と書いても、文章だとわかりづらいでしょうが…
まぁ、見たら分かります。ぜひ見てください(笑)

ヘザーはかわいいし、映画にはプロデューサーとして参加もしてるので、それなりに力を入れた作品なんでしょう。
オープニングとエンディングはとてもいい雰囲気だっただけに、ほんともったいない映画です…