Home Review ヒース・レジャーの恋のからさわぎ

ヒース・レジャーの恋のからさわぎ

ヒース・レジャーの恋のからさわぎ
0

[cptr]
傑作です。実に巧みなシナリオ構成です。

邦題のタイトルはシェークスピアの『から騒ぎ』からの借用ですが、お話は同じシェークスピアの『じゃじゃ馬ならし』がもとになっています。それとジョセフ・ゴードン=レヴィット演じるキャメロンのキャラ設定は『真夏の夜の夢』に出てくる妖精のパックを連想させます。

転校、学園内の派閥、パーティー、恋愛、友情…と、軽妙な語り口の典型的なキューティー映画なのですが、全ての登場人物の設定がただのテンプレート通りではなくちゃんと血が通っているので、さわやかな印象の中に感動がスパイスとして利いている素晴らしいキューティー映画になっています。

キャットを演じるジュリア・スタイルズの演技が素晴らしいです。最初は大人ぶって冷めてた女の子が、ヒース・レジャー演じるパトリックの熱烈なアプローチで徐々に女の子っぽくなっていく様を丁寧に演じていました。

音楽に関しては劇中での使い方が秀悦です。日常との地続き感のある素晴らしいシーンを、音楽を巧みに使って演出しています。

ヒース・レジャー演じるパトリックが校庭で熱唱する曲はFrankie Valliの「Can’t Take My Eyes Off You」(邦題:君の瞳に恋してる)。この曲の使い方が、実に小粋な演出が施されていてキューティー映画史上、屈指の名シーンになってます。

通常こういう歌のシーンは、観客にだけ聞こえる「プロのオケ(演奏)」で曲を聞かせて盛り上げます。しかしこのシーンでは、そのような「音響演出」をせず、あえて全て現実的に存在する音のみで構成し、とても素敵な演出を施します。

歌は校内放送のスピーカーを通してで、妙にエコーがかかっていて、歌のオケはその場にいた吹奏楽部が担当。ヒース・レジャーの歌も後から技術的に手を加えず若干ヘタッピ(笑)、さらに歌の終わりにはグランドにいる他の生徒の拍手。

これらは全ては映画でなくても観客が日常で聞ける音です。その日常で聞ける音を映画的に組み合わせ演出すると、こんなにロマンティックなシーンになるわけです。観ている人が「もしかしたら、こんなロマンティックな場面に自分も出会えるかも」と思わせる、日常と地続き感があるファンタジーが実に素晴らしい。

また、パーティーでジュリア・スタイルズとヒース・レジャーが70年代のヒット曲、Nick Loweの「Cruel To Be Kind」を聞くシーンがあるのですが、この曲に入るタイミング、演出、そして2人の表情がまたまた素晴らしすぎます。ここも名シーンです。

パーティーで演奏されていた曲が終わり観客の拍手。
カメラはバンドのいる舞台から後ろの方で見ているパトリックとキャットまで引きます。
見つめ合いながら拍手する2人。この間が長い(それがいい!)
そしてそこに「Cruel To Be Kind」のイントロ。
「これ、私の好きな曲だわ!」びっくりし、大喜びするジュリア・スタイルズ。
「君のためにリクエストしておいたんだよ」とヒース・レジャー。
驚きの表情でパトリックを見つめるキャット。
そこにイントロが終わり、前の人山が割れて真ん中からLetters To Cleo1のボーカルが2人の前に現れ「Cruel To Be Kind」を歌い始める…

こちらのシチュエーションも凄く日常的。だけど演技、タイミング、選曲、演出、全てが計算されていて完璧なので、完全にファンタジックでロマンチックな夢のような憧れのシーンとして見事に成立しています。

当初はヒロインと思われていたキャットの妹、ラリサ・オレイニク演じるビアンカが着ているTシャツに「阪急電車 急行は速い」という謎の言葉が書かれていて(笑)、これはフジテレビの「トリビアの泉」でも採用されたくらい、トンデモ日本語シーンでよく登場します。

2006年公開の『モテる男のコロし方』のジョン・タッカーの弟役は、明らかにこの映画のヒースをイメージしています。

モテる男のコロし方 [Blu-ray]

モテる男のコロし方 [Blu-ray]DVD

監督ベティ・トーマス

出演ジェシー・メトカーフ, ブリタニー・スノウ, アシャンティ, アリエル・ケベル

発行20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン

カテゴリーBlu-ray

Supported by amazon Product Advertising API

モテる男のコロし方 (特別編) [DVD]

モテる男のコロし方 (特別編) [DVD]DVD

価格¥ 1,490

監督ベティ・トーマス

出演ジェシー・メトカーフ, ブリタニー・スノウ, アシャンティ, アリエル・ケベル

発行20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン

カテゴリーDVD

Supported by amazon Product Advertising API


髪型がまずこの映画のヒースっぽい。登場シーンも似ています。さらにその登場シーンのときに聞いている音楽がCheap Trickの「I Want You To Want Me」。
この曲はこの映画のエンディング曲です。

2008年、ヒース・レジャーが28歳という若さで亡くなってしまいました。
この映画を最後に、ヒースは青春映画には出演しないと宣言し、確かにこれ以降はキューティー映画に出演していません。
本人はこの映画が嫌だったかもしれませんが、この映画はやはりヒースの代表作であると強く思います。

この映画、’09年にアメリカのABCでTVドラマ化されています。
人物、ドラマの設定は今風にライトでポップなものに変わっていますが、主題歌はKSMがやはり「I Want You To Want Me」をカヴァ。日本でも「恋のからさわぎ」という、ビデオ発売時代のタイトル2で放映されました。

  1. エンディングにも登場し、Cheap Trickの「I Want You To Want Me」のカヴァーを建物のてっぺんで演奏しています。 []
  2. この映画が日本でDVD化されたのはヒース・レジャが亡くなった後で、タイトルもDVD化の際に「ヒース・レジャーの」が頭に付け加わりました。 []