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ウォルト・ディズニー・アニメーション・スタジオがCGアニメ『アナと雪の女王』に至るまで

ウォルト・ディズニー・アニメーション・スタジオがCGアニメ『アナと雪の女王』に至るまで
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『アナと雪の女王』を制作しているウォルト・ディズニー・アニメーション・スタジオは伝統的なアニメ制作スタジオです。でも『アナと雪の女王』に至るまでCGアニメのスタイルについては試行錯誤がありました。そこに至るまでのディズニー・スタジオの流れを追ってみます。


ディズニーのアニメ映画には現在、ピクサーの制作するアニメと、ウォルト・ディズニー・アニメーション・スタジオ(以下ディズニー・スタジオと表記)が制作する2つのライン1があります。

ディズニー・スタジオは1937年初の長編カラーアニメ『白雪姫』から伝統的な手描きアニメを作っていましたが、80年代に低迷。90年代『美女と野獣』『ライオン・キング』などで再び黄金期を迎えたものの、海外ではアニメ映画がCGアニメに移行していた時期に作品が今一つヒットしなかったせいもあり再び低迷。CGアニメも制作しますが、手描きアニメーターが全員解雇になるなど存続が危ぶまれていました。

2006年、CGアニメでは最高峰のアニメスタジオ、ピクサーがディズニーの子会社となります。

当時、なんとなくディズニーのCGアニメに関しては「A級大作作品はエリートスタッフ揃いのピクサー、B級作品は作品単位に契約で集められるディズニー・スタジオ」という風に考えていました。実際、制作体制がそうでした。

その両スタジオの企画全てを監修していたのが、ピクサーの創設者でディズニーアニメ総責任者となったジョン・ラセターでした。ラセターはディズニー制作のアニメ企画にテコ入れを始めます。

『ボルト』ディズニーによるCGアニメ

そうした体制になってから、ディズニー・スタジオで作られたCGアニメが、超能力を持っていると信じているTVタレント犬の冒険物語『ボルト』でした。

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このアニメ、実によく出来ていました。当時トゥイーンに人気絶頂のマイリー・サイラスを犬の飼い主でヒロインの声に、ジョン・トラボルタを主役の犬の声に抜擢。さらに2人にデュエットさせ歌の話題も作りました。

技術テーマは「CGアニメで手描き風の絵を再現出来るか」でした。キャラクターの造形は手描き風にまとめられ、背景では筆の跡が残っている手描き風タッチが再現されていました。

名アニメーターを配した『塔の上のラプンツェル』

次にディズニー・スタジオが制作したCGアニメが『塔の上のラプンツェル』です。これは当初『ターザン』などで有名なディズニーの名アニメーター、グレン・キーンを中心に手描きアニメで作られる予定でしたが、『ボルト』で手描き風のCGアニメの技術が培われたので「グレン・キーンの絵と動きをCGで再現する」という技術テーマを設定し、CGアニメとして挑んだ作品でした。

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ただ、公開前にラセターは『ラプンツェル』をもってディズニーのプリンセス・アニメ終了を宣言します。当時、ピクサー含めてCGアニメは男の子向けでないとヒットしない風潮があったためです。

『ラプンツェル』の企画もフリン・ライダーという男性盗賊キャラを押し出し、アクションシーンを増やし男の子でも見れるアニメとして作られました。

2010年全米で公開された『塔の上のラプンツェル』はディズニー・プリンセスらしい、可愛らしく造形されたキャラクターと、グレン・キーンのアニメーション技術が存分に活かされた「手描きの匂いのする」とても良質なCGアニメとなりました。

アニメのキャラクターで、さりげない動作をさせるというのは至難の技です。上手いアニメーターでも動作がわざとらしくなってしまい、ナチュラルな感じが出にくいものです。それがこの作品では、キャラクターのオーバーアクトな動きに加えて、何気ないナチュラルな芝居の動きが巧みに、そしてふんだんに混ぜられていました。

手で描いて動かす伝統的で高度なアニメ技術の再現を、CGアニメで目指した結果です。キャラクターたちのリアリティある芝居が物語を一層引き立てました。
ラスト近く、ラプンツェルがお城に帰ってきたことを国王に伝える兵士による、表情とうなずきだけで表現した芝居(0:10)は、ほんと素晴らしいの一言。名演技です。

『塔の上のラプンツェル』は結果的に大ヒットを記録。終了宣言が出ていたディズニーのプリンセス・アニメもこの作品で復活。時を同じくして様々な女の子向けアニメが活性化します。

2012年には『塔の上のラプンツェル』の後日談となる短編アニメ『ラプンツェルのウェディング』も制作されました。1:27あたりのラプンツェルの小芝居など、どの動きも一々上手いのですが、アクションシーンで手前から奥にキャラクターが入ってくる時(フレームインしてくる時)のデフォルメ具合が素晴らしいです。このフレームインのタイミングやレイアウトは3Dでより効果を発揮しました。『アナと雪の女王』でもソリのアクションシーンなどに活かされています。

(『Tangled Ever After』はアメリカでは3D版『美女と野獣』上映時に公開。日本では『シンデレラ ダイヤモンド・コレクション』に収録されています)

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『紙ひこうき』での手描きアニメの活かし方

さらにディズニー・スタジオは手描きアニメとCGアニメを融合する試みとして『紙ひこうき』(第85回アカデミー賞短編アニメ賞受賞)を制作します。
これはグレン・キーンの仕事を経験したスタッフたちによる、手描きアニメの「線」をCGアニメに活かす技術開発がテーマの短編アニメでした。『紙ひこうき』ではCGで作られたモデルに、アニメーターがペンタブレットで絵で描くようにCGモデルに線を加えることができる技術が開発されました。
https://youtu.be/1QAI4B_2Mfc

そして『アナと雪の女王』へ

そして手描きアニメのいいところを、手法的にも技術的にも吸収し発展させたCGアニメ技術は『アナと雪の女王』で結実します。

『アナと雪の女王』で最初に公開された予告編は、雪だるまのオラフとトナカイのスヴェンが登場。これ、アニメ的には「氷の上でツルツル滑りながら演技をする」という動きと、キャラが動くことで変化していく足元の雪を表現するための実証実験映像になってます。
でもちゃんとオチが面白く作られているのはさすがです。

完成した本編は、全てのミュージカルシーンでキャラクターが「常に歌っているアクションをし続けている」という、キャラクターCGアニメーションとしては非常に難しく複雑な「演技」に挑戦。手描き風にまとまった親しみやすいアニメキャラたちが、実感のこめて歌い、ミュージカルを演じました。

これまでのアニメなら歌の間に歌とは関係のない芝居が入るのに、常に歌っている芝居をし続けているアナの演技が素晴らしい。特にチョコレートをつまみ食いした後、銅像に語りかける時の手の芝居(1:30〜)はいちいちポーズ含めて上手い!

台詞と歌、そして日常芝居とアクションという、それぞれ異なる動かし方がシームレスに自然に続くという、ミュージカルをアニメで再現した難易度の高いシーン。歌い始める時、スーッと一呼吸入れる微妙な肩の動きに注目。普通の台詞を話すときとはタイミングがちょっと異なって「歌い出す感」が出ています。

  1. 本当は、DVDスルー作品など低予算・中品質の作品を制作するディズニー・トゥーン・スタジオズがあり3つとなりますが、アニメ映画制作スタジオのことについて書くのでここでは省略します。 []