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フィリピンのキューティー映画『Must Be…Love』

フィリピンのキューティー映画『Must Be…Love』
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機内上映で見たフィリピン映画『Must Be…Love』が素晴らしくキューティー映画していたので、ちょっと書いておきたいと思います。

Must Be…Love

Must_Be_Love_poster2013年 フィリピン(2013/3/13公開)
監督:ダド・C・ルミバオ
脚本:メリッサ・マエ・チュウ、ルーメラー・モンジ

出演

キャサリン・ベルナルド、ダニエル・パディリア、リーザ・ソベラノ、ジョン・エストラーダ、ジョン・ラプス、エンリケ・ギル(カメオ)

ストーリー

パトリシア、通称パチョットは小さい時に母親が失踪。それを慰めてくれたのが近所に住むアイヴァン。それ以来パチョットはアイヴァンに密かに恋心を抱いていた。パチョットは父親の仕事の肉の燻製屋を手伝いながら、アイヴァンとは親友同士でバスケ仲間…と見た目を気にしない男の子のような生活を送っている。
ある日一緒にバスケの試合中をしている最中、パチョットはボールが当たり失神する中、思わずアイヴァンに恋の告白をしてしまう。しかしアイヴァンはパチョットを恋愛対象に見ていない。
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その頃パチョットのいとこのエンジェルがやってくる。アメリカ暮らしが長い彼女はパチョットと違い、エレガントでファッショナブルな美人。
アイヴァンはエンジェルに一目惚れ。エンジェルもアイヴァンに一目惚れ。あっという間に2人は恋人に。
パチョットはそんな2人を見守るしかなかった。
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そんな時、ヘアカット大会が行われることになり、美容室を経営するアイヴァンの母親は、こどもを失い呆然とした日々を送っていた凄腕のヘアーデザイナで姉妹のベイビーおばちゃん(フィリピンの有名オネエタレント、ジョン・ラプスが好演)を担ぎ出し、エンジェルをモデルにして優勝を目指そうとする。しかしベイビーおばちゃんが選んだのはエンジェルではなくパチョット。
パチョットはベイビーの腕にかかり、それまでの油にまみれキャップをかぶった男の子のような容姿から、黒髪が美しい、誰もが振り向く美しいレディに変身する。
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しかしパチョットは美しい容姿を得て、新しい希望を持ちながらも、今までと同じく仲間とバスケをして燻製屋を手伝う日々を選ぼうとする。そんなパチョットにアイヴァンは改めて恋心を抱くようになる…

感想

美男美女カップルとそれを見守るボーイッシュで親友の女の子、そしてその父親との関係、というところに『恋しくて』、ダンスシーンで『ステップアップ』、音楽の使い方とナレーション、カット割りや全体の構成に『ロイヤル・セブンティーン』を強く感じました。
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「一目惚れ」をテーマに、本当の恋、本当の信頼関係とはなにか?が描かれます。
パチョットは母親が、アイヴァンは父親が、共に片親が家族を捨てた過去があり、それぞれお互いに親がいなくなり泣きそうになった時に、相手の顔を無理やり笑顔にして励まし合うという描写があります。(予告編に出てきます)
パチョットとアイヴァンの恋以上に強い絆があることを示すエピソードとして、これが物語が進むにつれ効いてきます。そういう登場人物たちの行動の積み重ねの描写が実にうまいです。

劇中のBGM、挿入歌がとても素晴らしいです。BGMは爽やかで耳に心地いいアコースティックギターサウンドが中心。挿入歌はアメリカのティーン・ポップっぽくて映画を大いに盛り上げる効果をあげていました。音楽はハリウッドのキューティー映画並のクォリティです。

相手役アイヴァンを演じるダニエル・パディリアは1995年生まれの人気アイドルです。劇中の挿入歌も歌っています。
(最初におっさんの作曲者によるキモいプロモーション映像がありますが我慢しましょう(笑))

ドラマの後半は美しくなったヒロインに対して周囲の反応の戸惑いと変化が描かれていきます。
キューティー映画の物語構造としてここで難しいのが、周囲の変化を描き続けると、結果としてヒロインと周囲の和解や相互理解が繰り返し描かれることになり、ドラマの勢いがなくなるんですね。
そうするとドラマが周囲のキャラクターのエピソードばかりになり、ヒロインが何もしなくなり空気化してドラマが終わってしまう危険性があります。

例えばこの映画ではヒロインの周囲に「ヒロインが好きな男の子」「その恋人の美人いとこ」「ヒロインと友達のように仲のいい父親」などがいます。それぞれヒロインが美しく変身したことで関係が変化します。
男の子はヒロインを恋愛対象として見るようになるし、美人のいとこはそんな恋人を見てヒロインに嫉妬するようになるし、父親はヒロインのコンテスト出場を認めないし…

で、この映画もそれぞれのエピソードを描いていくのでヒロインが空気化しそうになります。しかしそれを回避したのがヒロイン、パチョットを演じたキャサリン・ベルナルドの泣き演技。これまでみんなのために自分を押し殺してきたヒロインが、それぞれに自分らしく生きたいという心情を吐いていくのですが、これがしつこくなく、わざとらしくもなく切なくて健気でとても良かったです。

キャサリン・ベルナルドは1996年生まれ。この映画の撮影時は16歳です。子役出身で人気ドラマの出演から注目されていて、今やフィリピンを代表するティーン・アイドルとなっています。
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ただ、この映画で不思議なのがキャサリン・ベルナルドが美しく変身するシーンで、キューティー映画の定石通りに「髪をとき、眉毛を整え、化粧をして、ドレスを着て…」と過程は描いているのに、最後の「ほら、こんなにきれいになりました」という決めカット(たいていスローモーションで現れ周りが驚いたりする…キューティー映画ならお約束ですね)がありません。なんだかいつの間にかキャサリン・ベルナルドが綺麗になってそのまま物語が進みます(笑)
ここは映画でも重要なポイントだっただけに、ちょっと残念でした。

人気ティーン・アイドルからベテランまで役者の魅力とそれを活かす演出、そしてスタイルだけでなく、キューティー映画の本質を理解した物語…実に爽やかで楽しくて感動する作品でした。フィリピンのキューティー映画、侮りがたし!です。