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2020年キューティー映画総括

2020年キューティー映画総括
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魔女見習いをさがして


アニメ映画ですが、今年の10選に選びました。
今年の邦画で上映前から最も期待していた作品でした。そしてその期待は裏切られませんでした。

TVアニメシリーズ「おジャ魔女どれみ」は小学生たちが魔女の見習い生としてがんばるお話です。彼女たちの魔法はあくまでも周りの友人や家族のために使われていて、世界を救ったり悪者と戦ったりしません。そんな作品の20周年記念に作られた本作は「どれみ」の続編とはせず、「どれみ」を見ていた、「同棲しているダメ男を支えている20歳なりたての女の子」「社会人を前に将来が不安な女子大生」「帰国子女で仕事が認められない商社勤務のキャリアウーマン」という世代の異なる3人が「どれみ」を通じて友だちになるという内容のオリジナル作品です。
3人が会って語る多くの場所は居酒屋、3人で旅して泊まるのは普通の旅館、旅行のお金の工面を心配し仕事のこと家族や恋愛のことなど等身大の悩みを3人で分かち合う(決して解決はしない)など、あくまでも観客と同じ立場の視点でお話が進みます。
オリジナルアニメを現実と同様の「テレビで昔やっていたアニメ」に設定し、映画自体は普通の人達による日常の中での出来事で展開するという、オリジナルアニメの本質である「日常性」を主軸に置いたファンタジー性を排したとても挑戦的な企画でした。そしてまごう事なきキューティー映画でした。
監督に若手女性とベテラン男性を配したことで、キューティー映画的描写(男性に頼らないヒロインたち。女性同士のケンカからの友情の築き方など)が適切なものとなり、全体のテンポやバランス、描きべきテーマの整理がちゃんと出来ていて、若手とベテランの持ち味が実にうまく機能していました。この映画は今後邦画でのキューティー映画が目指すべき指標になると思います。
ただ、だからこそあえて今後のために苦言を書きたい部分があります。『SATC』でいうところのサマンサにあたる本作の主人公の1人キャリアウーマンは、仕事では男勝りの姉御肌なのですが恋愛となると奥手で急に処女のように恥じらいアタフタします。こういう「お約束なアニメ的表現(男性の理想像)」の人物設定はこの映画ではやめてほしかった…
キャリアウーマンは男と寝まくっているキャラクターにしてほしかったです。そんなことくらいじゃ恋愛も自分も変わらない女性を描いてほしかった…全てが挑戦的な作品だっただけに、ここだけはとても残念でした。

Work It ~輝けわたし!~


ただの優等生で個性がないと指摘されたヒロインが自分の進学のために、自分は下手くそのくせにダンスチームを結成し全国大会を目指すというお話です。
『チアーズ!』を起点とする、現代的な学園ダンスものキューティー映画によくある「出来損ないの寄せ集めチーム奮闘記と友情物語」なのですが、この作品の特徴は、普通こういう展開だと得意技ができたり上達したりするヒロインのダンスがたいして上手くならないというところ。
主題がそこではないのです。むしろダンスが下手なままのヒロインが、ダンスに情熱をかたむけるようになる成長の過程がとても重要なのです。ヒロインを演じたサブリナ・カーペンターのコミカルな芝居もいいですし、ヒロインと周囲との信頼関係が築き上げられていく過程とその失墜、反省からの再構築をテンポよくコミカルに見せる脚本も見事。何よりライバル役を含めて全てのキャラクターに優しい視点で描かれていたのがとてもよかったです。

エノーラ・ホームズの事件簿


シャーロック・ホームズの妹エノーラの活躍を描く本作は、エノーラを演じるミリー・ボビー・ブラウンが、これまでにも増してヒロイン然とした魅力を発揮していました。兄シャーロック・ホームズ役のヘンリー・カヴィルも頼もしく優しいキャラクター像で良かったです。
エノーラが視聴者に語りかけるスタイルでお話は進行するのですが、このスタイルは失敗するとお話の流れを阻害しますし、シニカルな視点での語り口だと主人公が全てを否定しがちで映画全体がギスギスした感じになってしまいがちなのですが、本作ではこのスタイルが孤独だったエノーラの心情をコミカルに描くのにとても効果的でした。テンポよい語り口調もシニカルな内容でもコミカルに聞こえてよかったです。
ヘレナ・ボナム=カーター演じる母親の目的が、よく考えたら実に恐ろしいものだったりしますし、アクションシーンも何気にかなり暴力的な描写で、お話はシリアスなのですが、本作は元々劇場公開を目指して企画・製作され、シリーズ化も念頭に置いていた作品です。適度な暗さと重さが映画に必要と思われたのでしょう。でもヒロインの語りかけスタイルの効果もあり、さほど重い感じにはなっていません。ヒロインのほのかな恋心も重さの軽減にうまく作用しています。
製作側の狙い通り、続編を期待したいと思います。

クリスマスドロップ作戦 ~南の島に降る奇跡~


米軍の太平洋基地がクリスマスに行っている周囲の島々に物資を投下する「クリスマス・ドロップ作戦」が予算的に適切かどうかを調べることになった議員秘書が、現地でクリスマス・ドロップ作戦を主導する米兵と相対しながら色々なことを知り、やがてクリスマス・ドロップ作戦の本当の意味を知る…というお話です。
この作品、何が感動した…というか驚いたかって、さほど予算が出ているとは思えない作品なのに、アメリカ軍全面協力で実際の軍用機さ機がバンバン出てくることです。
こんなに実機のシーンが多いのは『トランスフォーマー』以来じゃないでしょうか(笑)

「クリスマス・ドロップ作戦」は米グアム基地を中心に1951年から実際に行われている伝統的な人道支援を目的とした物資投下訓練です。現在では日豪米合同訓練の一環として投下作戦が行われています。
そのため低予算な作品ながら、本作ではアメリカの軍用機が大量に登場し、実際の投下シーンを撮影させています。本物だからこそ、本作のクライマックスを飾る投下作戦シーンは俳優の芝居のシーンとの巧みな編集でとても説得力があり感動的なものになっています。
一方ドラマも女性秘書官と軍人の恋を、職業とは別にそれぞれ普通の男女として描いているところにも好感が持てます。

トゥループ・ゼロ~夜空に恋したガールスカウト


70年代のアメリカを舞台に、宇宙を夢見る風変わりな少女が、優勝チームにはボイジャーに自分の声が録音できる権利がもらえるガールスカウトの大会出場を目指して、ポンコツ仲間をかき集めて…というお話です。
ポンコツな子どもたちがチームとして優勝を目指すメインプロットに、個性的な子どもたちの「(70年代当時の)ひと夏の経験」も加味されていて、それがノスタルジックでもあり、どんな子どもたちでも可能性があるというサクセスストーリーにもなっていて、見ていてとても幸福な気持ちになります。
一方でお人好しの弁護士のお父さん(ジム・ガフィガン)、その事務所に務めるやり手の黒人事務員(プロデューサーも兼任したヴィオラ・デイヴィス)、いじわるな女校長(アリソン・ジャネイ)など大人に名優を揃え、当時の世相や世間の世知辛さ、大人たちの事情もドラマに組み込んでいて実に巧みな脚本だと思いました。
クライマックスである、デヴィッド・ボウイの「スペイス・オディティ」が流れる中のポンコツチームの舞台劇シーンは、子供らしい友情がとても愛らしく描かれていて楽しい感動まちがいなしです。過去を舞台に、宇宙に憧れる女の子を描く、素晴らしい未来への人間讃歌のお話です。

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