Home Review 第30回東京国際映画祭:リーナ・ラブ

第30回東京国際映画祭:リーナ・ラブ

第30回東京国際映画祭:リーナ・ラブ
0

高校生のリーナは、隣に住む親友も別の子と仲良くなり、今ではチャットの知り合いにだけ心を許していた。シングルマザーの母親は元親友の父親と浮気している。リーナは同じクラスの男の子と仲良くなるものの、ドラックの売人をしていることをチクったと勘違いされネットを使ったいじめを受けるようになる。やがてそれはエスカレートしていき…

LenaLove

(2016年 ドイツ)

スタッフ

監督/脚本/音楽:フロリアン・ガーグ
撮影監督:クリスティアン・ライン

キャスト

エミリア・シュール、ヤニック・シューマン、シーナ・コッチ

現代的なダーク・キューティー映画

SNSを使ったいじめ、動画投稿、未成年者の出会い系サイト利用、ドラッグ、親が有名カウンセラー、不倫…「ゴシップガール」「プリティ・リトル・ライアーズ」「13の理由」などに見られる、現代的な問題を組み込んだ、実に今風のサスペンスタッチな青春映画です。

ヒロインが好きになるヤニック・シューマン演じるティムの設定が、「クラスでは目立たない一匹狼でいつもノートに絵を描いていて、実はストリートアートをやっていて、生活のためにクラブではドラックの売人をやっているけど、本当は優しくて真面目な性格」という、現代的なキューティー映画のボーイフレンド設定としてはお腹いっぱいのもので完璧でした(笑)その他、映画はシリアスでサスペンス・タッチですが、作りは完全に学園もの・青春ものキューティー映画です。

リーナは隣に住むニコルと幼馴染。でも高校生となってニコルは派手な女の子でリーナがキライなステラとつるんでいます。将来はアーティストになりたいリーナが心を許せるのは、チャットで語りかけてくる見ず知らずの”ノア”だけ。

リーナの母はシングルマザーですが、実はニコルの父親と不倫していました。ニコルの母は本を出している有名な恋愛カウンセラーです。ニコルの父親は地元のダンスチームのコーチをしており、ダンスチームには地元の人達が参加して、大会出場を目指して練習を繰り返しています。

このダンスチーム、映画では唐突に出てきて説明が一切ないので、最初このダンスチームがどういうものか全くわかりませんでした。正直言うと最後までどういう構成メンバーで、何を目指しているのかよくわかりません…(笑)
どうやらドイツではメジャーな、社交ダンスの1つである”フォーメーションダンス”のチームのようです。そして地元の人たちで大会出場を目指しているようです。このダンス大会の設定が映画では色々な部分でとても重要なものとなっています。それはダンスチームの所有するワゴン車だったり、大会がリーナのその後を左右するものであったり、構成的にも転換点となるのです。それにしてはあまりにも不親切すぎました。

リーナはストリートアートをやっているティムと仲良くなり恋心を抱きますが、ステラに勘づかれて邪魔されます。イライラしたリーナはチャット仲間の”ノア”に不満をぶつけ、さらに母親の不倫まで暴露。”ノア”は実は夫の不倫を察してリーナに探りを入れていたニコルの母親が作ったアカウントだったのです。

ステラにうまく騙されたティムは、ステラ&ニコルと一緒に、”ノア”のアカウントを使ってニーナを陥れていきます。やがてその遊びはエスカレートしていき、ステラは勝手にニーナの名前で出会い系サイトに登録してしまうのです。

現代的なネットを使ったいじめが展開されます。ネットのいじめは、実はいじめられる側の(自己紹介の写真でアピールしてみたりする)自意識を上手く利用するところにあるのですが、この映画ではそのあたりの展開がなかなかリアルで面白かったです。

後半の二転三転する展開は見事!

ヒロインのリーナがネットを使って同級生たちに陥れられていく過程を延々見せられるのは、なかなか辛いものがあります。その合間に映画は、リーナの周りの大人たちの世界も時々挟み込むのですが、そこでも夫婦の不和、希薄な親子関係…とこれまた重い描写が続きます。

そうして救いようのない重苦しい展開が続く中、リーナがホラー映画のごとく幻覚を見ながら精神的に追い詰められていき、最悪の結末を迎えようとするところまで映画は行き着くのですが、実はここから二転三転のどんでん返しが用意されていて、俄然面白くなっていくのです。

最終的には青春映画として幸せな結末が待っています。サスペンスタッチの見事なエンタテイメント映画になりました。

監督と主演女優について

監督・脚本のフロリアン・ガーグは本作が10年ぶりの2作目となります。ストリートアートをやっていたこともあり、デビュー作『Wholetrain』では電車にスプレーで絵を描く若者たちを描いています。本作でもストリートアートは主人公のリーナにとって、とても重要な要素となっています。

主演のエミリア・シュールはちょっと「ゴシップガール」のレイトン・ミースターっぽい感じでヒロインとして実に華がありました。日本未公開のドイツ製キューティー映画に多数出演していて、とても人気のある若手女優です。
こちらは彼女の最新主演作、キューティー映画『High Society』

こちらは2010年に主演した音楽映画『Rock It!』。演奏もダンスもこなしています。

若者を現代的なネットを使ったいじめを通じて描くアート系の映画と思いきや(東京国際映画祭はキューティー映画に関して全く無知なので、どんな作品でも紹介がシネフィル風になってしまうのはホント困ったものです…)、サスペンスタッチであちこちに色々な伏線を小さく散りばめておき、後半の怒涛の展開でそれらをきっちり全て回収する、見ごたえのあるエンタテイメント性タップリの青春系キューティー映画で、今回の東京国際映画祭で観た映画の中では一番意外性のある作品でした。

LEAVE YOUR COMMENT

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です