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第30回東京国際映画祭:マウンテン・ミラクル

第30回東京国際映画祭:マウンテン・ミラクル
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13歳のアメリは、喘息のため山間部の療養所に預けられる。しかし反抗期で何でも気に入らないアメリは施設を抜け出し、山で出会った少年と共に、願い事をする祭りが行われる山頂を目指すことになる。

Amelie rennt/Mountain Miracle

(2017年 ドイツ/イタリア)

スタッフ

監督/音楽:トビアス・ウィーマン
脚本:ナーチャ・ブルンクホルスト
撮影監督:マルティン・シュレヒト
音楽:マルクス・ペルナー

キャスト

ミア・カサロ、ザムエル・ジラルディ、ズザンネ・ボルマン、デニス・モシット、ヤスミン・タバタバイ、シェニア・ピッチマン、ジェリー・ホフマン、ダーヴィッド・ブレディン、クリスティアン・レルヒ

トゥイーンの成長物語

13歳のアメリは反抗期。両親は離婚しており、そういう家庭環境もあってか、とにかく何でも気に入らない皮肉屋です。喘息のためこれまで何度も入院しているため、治療で山間部の療養所に預けられることになります。療養所には離婚していた両親と共に車で向かうのですが、この時のアメリの様子がまるで『千と千尋の神隠し』の序盤部の千尋です。

アメリは療養所の近くで牛の世話をする少年バートや、療養所のルームメイトで人懐っこいおしゃべり大好きのシュテフィと出会います。
しかしアメリはとにかく気に入りません。すぐに療養所を脱走、近くのアルプスの森林に逃げ込みます。
ここで、バートと再会。何となく察したバートはアメリと行動を共にします。バートから山頂で行われる奇跡を願う火を焚く祭の話を聞いたアメリは、喘息ながら山頂を目指すことに。

こうして映画はアメリとバートの山頂を目指す過酷な山登りの旅、アメリの喘息がいつ発症するかというサスペンス的要素、アメリを探す大人たちのドラマが同時並行で描かれることになります。特にアメリの喘息(の薬)の設定は、サスペンス要素の他に、実はアメリの心の解放や自分自身の変化を咎める象徴として描かれています。この辺の脚本の組み込み方は見事でした。

仏頂面で不平不満と嫌味だらけのアメリに対して、彼女のガイドでありナイトであるバートの素朴で懐が深くそれでいて頼れるキャラクター造形が、この映画をとても健康的にしていました。
バートを演じるザムエル・ジラルディは新人ですが、田舎育ちで真っ直ぐで優しい心を持つ頼れる青年を演じるにはピッタリでした。

ARRI全面協力による美しい撮影は一見の価値あり

映画の舞台の大半を占めるアルプスではイタリア側の南チロルで24日間撮影が行われています。
本作はドイツの老舗映画カメラメーカーARRI関連のARRI Media Internationalが製作に参加しています。ここは機材提供などを通じて映画製作に参加する会社です。そのことからARRIのデモ映像かのごとく、夜間撮影での草木の色の再現や、早朝撮影された時の光の柔らかさ、森の木漏れ日、山から望む雄大な自然、雨や雷などの合成処理など、とにかくカメラ撮影のお手本となるべき美しいカットが続出します。

そういう意味では大きなスクリーン、しっかり調整されたプロジェクターによる映写で観る価値のある映画です。とにかくどのシーンもどのカットも素晴らしかったです。主人公たちと一緒になってアルプスの素晴らしい風景を堪能する映画です。

東京国際映画祭らしからぬ映画

この映画は、自分や他人への怒りがない混ぜになってしまっている、反抗期の少女の成長物語です。
誰の力も借りず(バートにちょっと助けてもらいますが)、雄大なアルプスの自然と対峙することで、少女は何かを感じ最後はちょっとだけ成長します。作品の精神性はディズニー・チャンネル・ムービーと同じです。心地よい感動を得られます。

クライマックスの山頂の火の祭りからラストまでが実に感動的で、それでいて最後の最後は、ちょっとコミカルにみんなが笑顔になる終わり方となっていて素晴らしかったです。

とても健康的で爽やかで、シネフィル御用達作品ばかりの東京国際映画祭らしくない映画でした(笑)
トゥイーン向けの内容ですから、どちらかというと子ども映画祭(キンダカートン映画祭)向けの作品です。
実際、8月に開催された第23回京都国際子ども映画祭で上映され、グランプリを受賞していますし、その他、世界各地の子ども映画祭で上映され各賞を受賞しています。

今後もアルプスを体感する映画として、大きなスクリーンで上映されていってほしい映画です。

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