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『太陽を失って』ラッキー・クスワンディ監督インタビュー

『太陽を失って』ラッキー・クスワンディ監督インタビュー
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lucky-kuswandi-interview_00『太陽を失って』はインドネシアの大都市、ジャカルタを舞台に「NY帰りの32歳映画監督志望の女性”ジア”とその女友達”ナオミ”」「出会い系サイトで出会いを求めている24歳女性”インドゥリ”」「夫の死後、愛人がいることを知った49歳の女性”スーリヤ夫人”」という、年齢も立場も違う女性たちの1晩の出来事を描いたキューティー映画です。


おしゃれなシーンに、コミカルなシーン、さらに世界中の人たちが共感する、心に響く台詞もあったり…と、とても豊かでサービスたっぷりな良質な作品でした。しかもキューティー映画ファンのツボを抑えた実に興味深いテーマをいくつも持っています。長編2作目にして、ここまでのものを撮ったラッキー・クスワンディ監督にインタビューしました。

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ラッキー・クスワンディ

1980年インドネシア・ジャカルタ出身。2008年、女性の性問題を扱った短編ドキュメント映画『At Stake』が高評価を受ける。2010年には初の長編オリジナル・コメディ『マダムX』(第25回福岡アジア映画祭出品)の監督・脚本。インドネシアでのLGBT活動にも積極的に取り組んでいる。本作は『太陽を失って』は長編2作目となる。 [/col_full]

監督はどういう風に映画制作を勉強したのですか?

18歳から23歳までロサンゼルスで映画の勉強をしていました。その後インドネシアに戻り映画制作をしています。映画のヒロイン、ジアと同じなんですよ(笑)

今回の映画はタイプも年齢も異なる女性たちのエピソードが交差していく構成ですが、それはどういうところで思いついたんですか?

この映画は、1人の女性が経験していく様々な人生の状況を、それぞれのエピソードとして描いているんです。
インドゥリはナオミみたいにセレブになりたいと思っている。そしてナオミはこのままいくとスーリア夫人のように、自分自身がない空っぽな人生を送ることになりそう。そのナオミは本当はジアみたいに生きてみたいと思っている…
という具合です。

それは面白いですね。この3つのエピソードをそれぞれ、こういう設定にしたのは?

ジアはさっき言ったように、僕自身がアメリカからインドネシアに帰ってきた時の気持ちなどを描いています。
スーリア夫人は実は僕の母親の姿を投影しているんです。僕がアメリカからインドネシアに帰国した理由の1つは父が亡くなったからなんですが、自分の人生を捧げてきた父を亡くした時の母は、抜け殻みたいになってしまっていたんです。

インデュリのような、セレブ志向の強い女性というのは見ていて凄いなと感心するんです。だって、本当の意味で頭が良くないと出来ないことですからね。
あと、インドネシアの大きな問題は階層社会であるということです。インデュリのエピソードではそこを意識しています。

この映画では女性たちのドラマと同時に、今のインドネシア、ジャカルタが描かれています。都市の描写から何を訴えようとしたのでしょう?

伝統と近代化のせめぎあいというのは、この映画の大きなテーマでした。他の街や村は何か資源や農産物などをインドネシアのために与えてくれますが、ジャカルタという街は色々なものをただ取り込んでしまうだけなんです。しかもそれを享受しているのはごく一部のセレブな人たちなんです。

逆に質問していいですか?今回の映画、翻訳の関係もあったりするから、ジャカルタ的なところが日本のみなさんには分かりにくいんじゃないかな…と思ったりもしたのですが、どうでしたか?

それは全くなかったですね。逆に日本の都会や人々の様子、ブームなどが似ていたので、日本の人、特に女性は強く共感する内容だと思いますよ。

それは良かった(笑)

ジャカルタの今はあのようにSNSやスマフォに依存している人たちであふれているんですか?

例えば、ジャカルタで友達と会おうとしますよね。するといつもひどい渋滞なので移動するのに最低2時間はかかるんです。で、やっと会ったとしてもみんなスマフォに夢中でお互い話そうとしない…なんていうことはしょっちゅうなんです。
人々がコミュニケーションがとれていません。問題だと思います。今回の映画でのそういった描写はシニカルに描いています。

監督はLGBTや女性問題を多く扱っていますが、それはなぜですか?

僕自身が中華系インドネシア人ということで、インドネシアの中ではマイノリティなんです。ですからマイノリティな人たちや女性に共感する部分があります。

映画の中ではマイケル・ジャクソンの「スリラー」のダンスや「ブラック・オア・ホワイト」の歌詞など、マイケル・ジャクソンの曲がさりげなく使われていましたね?

「ブラック・オア・ホワイト」は、実際、僕にあれを歌ってくれた友人がいたんですよ。その経験を映画に使いました。
そしてマイケルは世界中の誰でも知ってますし、マイケル自体がジャカルタのようですからね。どんどん変身を遂げていきましたしね(笑)

そうそう、音楽といえば、iTunesで劇中歌が購入できるので、ぜひ買って聞いてください。

『太陽を失って』の劇中歌はiTunesで2曲発売されています。「Selamat Pagi, Malam」はオリジナルの劇中歌です。
そしてエンディングで流れた「Pergi Untuk Kembali」は、1974年にインドネシアでミングス・タヒトゥが歌って大ヒットした曲のカヴァです。「愛の出発~タビダチ~」という日本タイトルが付けられています。映画では監督のおじさんが歌っているそうです。

監督のお好きな映画は?

『ビフォア・サンセット』『魔女の宅急便』が大好きです。そしてソフィア・コッポラの作品は全部好きですね。
『セックス・アンド・ザ・シティ』も大好きです。映画版よりTVシリーズの方がいいですね。キャリーが髪を切った以降はキャラクターやエピソードが成熟してきてコメディだけではなく、ドラマが充実していて特に好きです。

「SATC」のテレビシーリーズだとS4の2話が好きです。

あぁ、ランウェイでキャリーが転けるやつですね!僕も好きです。

もし監督が、バリバリのキューティー映画を撮るとしたら、どういう作品を撮りたいですか?

ちょっとお年寄りを召した女性のお話を撮りたいですね。
壮年期を迎えた女性が、どういう風に恋愛を捉えたりするのかな?っていうのに興味があります。

流暢な英語で色々な質問に屈託なく答えてくれたラッキー・クスワンディ監督。
やたらと「歳を取ると」「歳を取ったので」と言うので年齢を聞くとまだ34歳。しかしインドネシアでの平均寿命は比較的短いらしく(2012年で平均寿命が70歳。日本は83歳、アメリカ78歳)、そう考えると監督の気持ちもわかるのですが『太陽を失って』を見れば、今後も期待してしまいます。
これからもたくさんの楽しく興味深いキューティー映画を撮り続けてほしいと思います。
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