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『1001グラム』ベント・ハーメル監督&アーネ・ダール・トルプ インタビュー

『1001グラム』ベント・ハーメル監督&アーネ・ダール・トルプ インタビュー
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benthamer-anedahltorp-interview_00『1001グラム』はスチールや予告編の印象では、ヒロインは表情が固く冷たい印象で、映画自体も凄く硬質で静かな佇まいに思えます。しかし見るとわかりますが、劇中でヒロインの心が解きほぐされていくのと同時に、身構えて見ていた我々もいつしかリラックスさせてくれ、最後には笑って見終わることが出来る映画です。


台詞の使い方、小道具の使い方、シチュエーションの使い分け方が本当に見事。ベント・ハーメル監督のノルウェーの名匠と呼ばれるのにふさわしい演出・脚本で非常に知的で計算されたドラマが展開します。
その映画をアーネ・ダール・トルプ。ノルウェーきっての演技派と言われるだけあって、ほとんど無表情に見えるヒロインを実に繊細な芝居で演じていました。見事です。

そんな2人が東京国際映画祭で来日。揃ってインタビューに応じてくれました。
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ベント・ハーメル

1956年生まれ。ストックホルム大学とストックホルム映画学校で文学を映画論を学ぶ。短編映画やドキュメンタリー映画を経て、1995年『卵の番人』で長編映画監督デビューを果たす。同作品はカンヌ国際映画祭で初上映され、トロント国際映画祭では国際映画批評家連盟賞などを受賞。
2003年公開の『キッチン・ストーリー』と2008年公開の『ホルテンさんのはじめての冒険』、そして本作『1001グラム』はアカデミー外国語映画賞ノルウェー代表作品に選ばれている、ノルウェー映画界の名匠。
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アーネ・ダール・トルプ

1975年生まれ。アカデミックな両親の元で育つ。ノルウェーの舞台やテレビ、映画で活躍する実力派女優。出演作に2006年『微熱 愛と革命の日々』2009年『処刑山 -デッド・スノウ』2013年『パイオニア』など。 [/col_full]

この映画は「国際キログラム学会」という非常に珍しい世界を扱っていますが、この作品の発想はどこから出たのですか?

ベント・ハーメル – たまたまラジオで国際度量衡、キログラム学会の話を聞いて、キログラムという単位に絶対的な数値の決め方というのがあることなどに非常に興味をもちました。
当然私も知らない世界でしたから、そこからかなりリサーチをしていきましたね。
同時にこの映画はそれだけのものではないので、その辺を組み込みつつドラマとして仕上げていった感じです。

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とても繊細で計算された脚本だと思いました。執筆にはどれくらいかかりましたか?

ベント・ハーメル – 私の作業は、実際に脚本を書く前に頭の中でストーリーを発想し、組み立てている時間の方が長いのです。
そこから実際の脚本作業はそんなに時間がかからなくて、1年くらいだったと思う。

アーネ・ダール・トルプさんは、脚本を読んだ最初の印象は?ヒロインをどう考えましたか?

アーネ・ダール・トルプ – とても色んな空気が流れている映画だなと、というのが最初の印象です。
マリエというキャラクターはほとんど無表情なので、冷たい印象があるかもしれないし、映画自体も静かな佇まいだけど、彼女自身はとてもエモーショナルだと思いましたが、それをどうあからさまに見せずに演じるかが難しかったですね。

今、お話をしているあなたはとても陽気で朗らかな人ですね。でもマリエというキャラはおっしゃるとおり、感情が表に出ないキャラクターでした。だけど、映画の中で彼女のとる行動は全て凄く自然体ですよね。変に映画のための誇張した芝居はありません。その辺、普段の生活から何かヒントはあったのですか?

アーネ・ダール・トルプ – 監督の脚本には人物に関して詳しい心情の説明が書かれていないんです。
ポツン、ポツンとト書きがあるだけで、そこから自分で考えていかないといけないの。

ベント・ハーメル – 脚本で人物について詳しい説明をするのは、プロデューサーのためでしかないよ(笑)

アーネ・ダール・トルプ – とにかく、ト書きが最小限だったし、私は彼女のような規則正しく静かなを取る人間ではないけど、彼女の考えていること、感じることは私達の生活と同じだろうから、そこからこのキャラクターがどういう生活をしているかを想像して、監督に確認をとりながらマリエというキャラクターを作っていきました。

あと、実際にノルウェーの研究所を取材した時、私のようなくせっ毛とは違ってストレートのサラサラヘアーで、しゃべり方もしっかりした女子職員達に会いました。彼女たちを参考にしたりしましたね。

でも10年前にこの役をやれと言われたら難しかったかも。
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監督にお聞きしたいのですが、キャラクターの静かな佇まいや画面の硬質な印象から、本来は凄くロマンティックでハートフルな内容なのに、変に難しく考えてしまわれる恐れもあったと思います。そこはどう考えましたか?

ベント・ハーメル – 1人の女性が徐々に優しくなっていく過程をロマンティックな要素を入れてドラマとして撮ったつもりです。決してコメディではないけどね。科学の難しい題材を扱ってはいるが、決して難しい映画を作ったつもりはありません。そこは見てもらえると感じてもらえると思う。

マリエがはじめてフランスの学会に参加するシーン、学会や集会などに行った人ならわかる、何気ない雰囲気や空気感を凄く捕まえていたと思います。あのシーンで使われた場所や物は本物ですか?

ベント・ハーメル – あのシーンに関しては、実際の会議は見てないんだけど、色々とリサーチを重ねたり参加者に聞いたりしたね。
場所自体は、実際のフランスの国際度量衡局で撮影しています。
さすがに本物の原器などは使えなかったけど、小道具で作ったり、フランスのBIPMの別室を借りてセットを作って撮影しました。

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この映画を見る人にメッセージを

アーネ・ダール・トルプ – じゃあまずは私から。
この映画はパッと見はちょっと気難しい感じがするかもしれません。でもそうではなく、とってもハートウォーミングなドラマです。一人でも見れるけど、友達や家族と一緒に、みんなでも見てもらえる映画だと思っています。
何より映画を見て楽しんでもらえたらと思ってるわ。

ベント・ハーメル – この映画は科学的なことを扱っているけれど、決してメインはそこではなく、1人の女性、1人の人間としての映画として見てもらいたいな。
題材のイメージから決して全てがわかりやすく展開する映画ではないけど、自分としてはハートフルで誰もが興味を持てる映画を撮ったと思っているので、たくさんの人に見てもらえたらと思います。

電気自動車のことや、国民性、脚本術、好きな映画のことなど、他にも色々聞きたいことがあったのですが、ここで時間切れ。

ベント・ハーメル監督はちょっと気難しそうに見えて気軽な質問をするのに躊躇してしまいがちですが、実際お話を聞くととても優しい方でした。バスター・キートンのコメディが好きだそうです。

アーネ・ダール・トルプさんは映画のマリエとは違って、とても気さくで闊達な印象のよくしゃべり笑う楽しい人でした。だからこそ規則正しく無表情でいつも背筋をしゃんと伸ばしているマリエという女性を演じている彼女の凄さをヒシヒシと感じました。

レビュー:巧みな演出・脚本で理系女子の日常を描く『1001グラム』

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