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平成最後の!2018年キューティー映画総括

平成最後の!2018年キューティー映画総括
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2018年、cuemovie15選キューティー映画(順不同)

今年公開されたキューティー映画から順不同で15作品を選びました。順位は付けられません。
例年は10作品ですが平成最後!(このフレーズが気に入っている)ということもあり今年は15作品を選びました。本当はディズニー・チャンネル・ムービー『ゾンビーズ』、Netflixムービー『好きだった君へのラブレター』『スイッチング・プリンセス』、米ABCによるリメイク『ダーティ・ダンシング』、『アイ,トーニャ 史上最大のスキャンダル』なども入れたかったのですが…

グレイテスト・ショーマン

これまでもCGを使ったミュージカルシーンというのはありましたが、CGの用途はあくまでも背景を足したりする画面のディテールアップのためでした。この映画は史上初、ダンスシーンにCGのカットを組み込むことでミュージカルシーンを成立させたミュージカル映画です。新時代のミュージカル映画です。
マイケル・グレイシー監督を日本で最初に注目した当サイトとしては、彼がこれまでCMなどで発表してきたスタイルの延長でCGの使用は予想はしていましたが、まさかここまで映画にハマるとは思いませんでした。それはもちろん楽曲のクォリティの高さもあったと思います。なにせ個人的に一番感動したのは、シンプルな歌だけの「Never Enough」でしたし。

マンマ・ミーア! ヒア・ウィー・ゴー

この映画もCGの使い方が巧みでした。映画の構成が現在と過去を行き来するのですが、それがCGによってシームレスに表現されていました。
前作のミュージカルシーンが舞台版の再現であるとすれば、今回のミュージカルシーンは映画向けにカメラワークや動きが計算されていました。前回同様の華やかな「Dancing Queen」のシーンも、セット撮影パートと船の空撮パートを実にリズミカルに巧妙に編集しています。これ、どちらのパートも下手するとすごくチープになってしまうんです。船の上のダンスは豪華に見えますが、ダンサーが動ける範囲がなく空撮を長く映し続けていると間延びしてしまいます。それをダンスで動けるセット撮影を組み合わせることで、全体の躍動感を作っています。双方が合流するシーンもよく見るとダンス自体はお遊戯的なものですが、巧みな編集でそうは見えません。途中途中に挟み込まれる主要キャラクターたちによる芝居が効いています。
大団円のラストの「Super Trouper」の盛り上げ方は気持ちよく、ライブ感があって素晴らしかったです。

しあわせの絵の具 愛を描く人 モード・ルイス

『シェイプ・オブ・ウォーター』と共に、サリー・ホーキンスの名演を堪能できた年でした。彼女は実在したカナダのフォーク・アート画家モード・ルイスを演じていますが、無骨な夫を演じたイーサン・ホークと共に、味わい深い夫婦像を作り上げていました。サリー・ホーキンスは病気と年齢とともに身体が不自由になっていく姿でありながら、絵を描く日常を何気なくコミカルに演じて見せるのが実に見事でした。

パティ・ケイク$

ラップでのし上がっていくデブッチョヒロインという内容の映画なので、音楽はヒップホップだらけの映画と思いきや、なんと音楽の全ジャンルを礼讃し、その中でも80年代ハードロックが重要なカギを握る映画でした。これは意外でした。内容的にも実に素晴らしかったです。
この映画は主要な登場人物たちが、ストーリーが進むに連れて見た目の装飾を削ぎ落とし素の姿になっていくんですね。それは主人公たちが奏でる音楽も同じです。ママドゥ・アティエ演じる牙を生やた奇抜なメイクにノイジーな前衛音楽的なアート・ロックで登場したバスタードの変化は、最もわかりやすかったです。

Love, サイモン 17歳の告白

隠れゲイの高校生の恋、友情、家族を描いた本作はアメリカの若者たちに大きな支持を得ました。日本ではソフトスルーとなりましたが、その支持された理由は映画を見たらわかります。そして年齢性別に関係なく、この映画を気にいると思います。
ゲイのカミングアウトを主題としながらも、そこに至るまで実によくできた青春群集劇が展開されます。それもあって主人公への親近感も反感も含めて、とても身近なものになっていました。登場人物には学園モノの典型的なキャラクターはいません。しかし誰もが実に魅力的で映画的です。個人的に「観覧車の出る青春ものにハズレ無し」と思っていて、この映画も観覧車が登場し映画のラストを盛り上げます。
ただ一つ文句があるのは、主人公のジョシュ・デュアメル演じるお父さんが、思い出の曲として自分が作ったビデオのBGMに使ったウォーレントの「Heaven」を主人公がダサいといって切り捨てるところですかね(笑)

アイ・フィール・プリティ! 人生最高のハプニング

さすがは『25年目のキス』『そんな彼なら捨てちゃえば」『バレンタインデー』など、キューティー映画の名作を作ってきた脚本コンビ初監督作。この作品、とても巧妙な構成になっています。まずヒロインが「魔法の力で美人に変身した」と勘違いして取る行動で典型的なキューティー映画の展開をしていきます。その展開を進めているヒロインを観て笑っている我々観客向けのストーリーもキューティー映画。つまり2つのキューティー映画のプロットが同時進行し絡み合っていきます。
ヒロインが進めるキューティー映画プロットは、様々なキューティー映画のパロディになっているので笑わせてくれるんですが、そこには愛に溢れてて単にバカにして笑いを作ってるわけじゃないのも素晴らしかったです。日本公開は12月28日からで2018年最後に映画館で観たキューティー映画になりましたが、それに値する映画でした。
ヒロインが勘違いしてしまうきっかけが「家で『ビッグ』を見ていたから」というシチュエーションが展開されます。日本公開は本国公開(2018年4月公開)から遅れたので、偶然にも12月に亡くなったペニー・マーシャル監督の追悼映画になってました。そこも個人的にはグッと来ました。

フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法

全編iPhoneで撮影して話題となった『タンジェリン』で来日時にインタビューしたショーン・ベイカー監督から、35mmフィルムで撮影した本作のことは聞いていました。彼から「あなたが観たら、なぜ35mmを選んだかわかってもらえると思う。」と言われました。さらにオフレコで実はiPhoneで撮影したシーンもあることも聞いていました。
ウィレム・デフォーは噂通り素晴らしかったです。35mmフィルムで撮影された風景も実に寂しく美しかったです。そしてラストの展開も映画的な仕掛けとして、それまで漂っていた閉塞感や大人のやるせなさを吹き飛ばす躍動感が良かったです。そしてショーン・ベイカー監督はカメラがどんな機種でも、彼独特の覚めた編集のリズムと人々への優しい眼差しでオリジナリティを獲得していることがわかりました。

ミッドナイト・サン ~タイヨウのうた~

ステータス・アップデート

共にスコット・スピアー監督作品です。当サイトでは彼をさんざん「アシュレイ・ティスデイルの元カレという経歴しかない」とバカにしてきましたが、両作品とも青春映画として、そして音楽シーンがとても素晴らしかったです。
スコット・スピアー監督がこんな場末の、しかも日本語サイトを見ていることは絶対ないと思いますが、とにかく謝ります。本当にごめんなさい。

特に『ミッドナイト・サン ~タイヨウのうた~』はオリジナルの構成や演出の弱点を見事に補完していて完璧でした。ヒロインが男の子への一目惚れの設定を「小さいときから見ていた」と改変したのは上手かったです。オリジナル版はその辺の一目惚れの理由が全くわからず唐突でしたから。
さらに深夜デートでヒロインが路上ライブをするという展開も、まずは男の子がヒロインを、これまで行ったことがないライブハウスに連れていき、ヒロインの気分を高揚させてその興奮状態で歌を歌う、という展開にしていたのも自然な流れができていて見事でした。

エブリデイ

日本ではレンタルも販売もなく、いきなりAmazonビデオ・プライムで配信されました。毎日別の人物に憑依してしまう主人公と彼が恋した女の子のお話です。毎日見た目が変わるけど、主人公の人格は1つで、そこを様々な男女若手俳優が演じていて上手く表現していました。後半は自ら課した縛り設定(毎日入れ替わる)を都合よく改変して(頑張れば同じ人に留まれる)ドラマを進めたので、主人公の同一人物でいられないことと、ヒロインの同じ見た目の人物を愛せないこと、という2つの悲劇性が薄まってしまいましたが、青春映画としてよくできていました。

オーバーボード

こちらもいきなりAmazonビデオ・プライムで配信されました。ゴールディ・ホーンとカート・ラッセルが共演した『潮風のいたずら(原題:Overboard)』(1987)をアンナ・ファリスとエウヘニオ・デルベス共演で男女逆転版にしたリメイク作品です。エウヘニオ・デルベスはメキシコで大人気のコメディ俳優ですが、ここ最近アメリカ進出を図っています。この映画を見て、彼の人気の秘密がわかったような気がしました。コメディアンとして変なことをしたりせず、ごくごく普通にいじめられる情けないキャラクターを演じるのですが、それが可笑しいのです。映画はオリジナル同様やはり子供との関わりでホロリとさせるものになっていました。アンナ・ファリスのコケティッシュな魅力もあって最後まで実に気持ちよく見れます。

セットアップ: ウソつきは恋のはじまり

仕事中心の上司に振り回される部下、そのアシスタントである部下が、お互いにいがみ合いながらも自分たちのために上司同士を恋仲にして仕事から離そうと画策。結果的に上司2人は恋に落ち、部下の2人も恋に落ち…と魅力的なプロットを多重に持ったキューティー映画です。難しいのはお話としての収め方です。それを最終的に悪役を1人作ることできれいにまとめて、女性への応援歌ムービーとしました。ゾーイ・ドゥイッチ、グレン・パウエルの部下コンビがキューティー映画のカップルらしく若者感があって魅力的、さらにルーシー・リューとテイ・ディグスの上司コンビも「主人公たちが乗り越えるべき難題」という存在を見せつけながらも、同時に恋する人の魅力や弱さも演じていて素晴らしかったです。

シエラ・バージェスはルーザー

シャノン・パーサーが主演ですが、ダブル・ヒロインともいえる、クリスティン・フローセスが演じたヴェロニカのキャラクター造形が素晴らしくいいです。
彼女の物語としてこの映画を見ると、とても切なくてとても健気なお話になります。ラストのホームカミングも友情で締めたのが良かった。ジョン・ヒューズ作品の影響を強く感じる作りになっていました。

キスから始まるものがたり

16歳の女の子が、過激でファンタジー色が強くなる近年のYA小説に反発して、ごくごく普通の身近な設定のYA小説を投稿したところ大人気となり映像化。Netflix映画として公開されました。
幼馴染の男子、その兄への恋心…と、特別なことはなく学校を中心とした日常の中でドラマチックな初恋物語が展開します。そのベタな内容に批評家は批判。しかし圧倒的な共感を持ってユーザーからの支持を得ました。これぞキューティー映画です。『ティーン・ビーチ・ムービー』の脚本を手がけたTV映画のベテラン、ヴィンス・マルセロが監督・脚本を手がけていますが、ベテラン監督による職人的なさばきで、実に安心して見れるキューティー映画に仕上がっています。そういう点も往年のキューティー映画っぽさが出ています。

若おかみは小学生!

公開当初、興行的にかなりの苦戦となったものの、良質な内容に口コミで動員が増え大ヒットとなった児童向け小説シリーズのアニメ映画です。キューティー映画としてこの映画をどう評価するかなのですが、色々なポイントがあるものの、ここで注目したいのが、最近の海外のYA小説原作映画との共通点です。その共通点とは「死」の前向きな捉え方と残されたものの「死」の乗り越え方です。
近年の海外のYA小説で映画化されるものの多くに「死」が関わっていると記事にしながら感じていました。それは「死んでかわいそう」という単純な悲劇ではなく、ある種前向きとも思える死への向き合い方です。
死んだ友人が生前何を考えていたのかを探る主人公、死ぬことがわかっていて明るく前向きに生きる人物に影響される主人公、死ぬことを繰り返すことで自分自身を見つめ直し周りとの関係を改善していくヒロイン、幽霊やゾンビと友だちになり友情を深めることで自身も成長していくヒロインなどなど…。それをシリアスにせず、全体にコミカルな調子に描いています。
『若おかみは小学生!』は冒頭から死に対する主人公をあえて淡々と描きます。しかしそれはラストにとても効いてくる仕掛けになっています。つまりお話全体に「死への肯定」が埋め込まれています。しかし決してそれを前面に出すのではなく、あえて「小学生が旅館のおかみになってがんばる」一種のコメディ的なストーリーで展開していくところに現代性を感じました。そういう意味で『若おかみは小学生!』は世界に通じるYA小説の今の流れとリンクしていると思います。
そしてキューティー映画お約束の着せかえシーンが、この映画ではとても上手く内容に作用し表現されています。そこもキューティー映画として評価するところです。

さらに今回の15選とは別に…

Dumplin’

苦労して見たかいがありました。字幕なしなので半分以上のセリフは聞き取れず理解できていません。それを差し引いても内容的に取り立てて名作!と呼べる作品ではないかもしれません。だけど、アメリカの田舎町の小さな美人コンテストのリアリティ、その中でがんばる主人公たち、という世界観がとても身近に感じられて見てて気持ちのいい良質なキューティー映画になっています。
親友役のオデイア・ラッシュが好演。ダヴ・キャメロンもちょい役ながらとても印象深いオイシイ役となっています。ジェニファー・アニストンもクライマックスで華やかな衣装と共に登場するのですが、とっても貫禄があってかっこいい!そして何よりドリー・パートンが歌う、劇中とスタッフロールで流れる、全キューティー映画のテーマ曲とも言える主題歌「Girl in the Movies」は心に染みます。

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